起業といえば、ある程度の社会経験を持った人物が行うイメージですが、近年は学生が事業を始めるケースも決して珍しくありません。一方、就職に代わる選択肢として興味がありつつ、具体的な情報が把握できないことから、今一歩踏み出せない方も多いでしょう。
本記事では、学生起業の概要やメリット・デメリット、成功のポイントについても解説します。将来的なキャリアの幅を広げたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
学生起業とは
学生起業は、大学生などが在学中に事業を始めることを指しており、インターネット需要が拡大し始めた2000年頃から活発になりました。
一見すると学生活動の一環に過ぎないイメージがある一方、実際のところは社会全体に大きなインパクトを与えるケースも多く、これまでさまざまな領域で成功者が誕生しています。
- マーク・ザッカーバーグ氏:在学中にFacebook社(現:META)を設立
- ラリー・ペイジ氏: セルゲイ・ブリン氏:在学中にGoogleを設立
- ビル・ゲイツ氏:在学中にトラフォデータ社を設立
上記の通り、現在世界中で活用されているGoogle、Facebookは、学生の小さなアイデアから生み出されたサービスです。もちろん、巨額の資本力や稀有な才能がなくとも、やり方一つで十分本格的な事業が展開できるため、就職だけがキャリア形成の道ではないといえるでしょう。
学生起業の3つのメリット
学生起業のメリットは、以下の3つが挙げられます。
- コストを抑えやすい
- 将来副業として実施できる
- 失敗も経験として評価される
コストを抑えやすく、失敗も就活のプラス材料として活用できるので、ここで詳しく押さえておきましょう。
◎1 コストを抑えやすい
学生起業は社会人が事業を興すよりもさまざまな面でコストを抑えやすく、利益に対するプレッシャーを感じずにただひたすらアイデアを追求できます。
- 実家住まいなら家賃や生活費がかからない
- 大学の校舎を活動拠点として使える
- パソコンやプリンターなどの設備も大学にある
- 学生仲間をインターンとして雇い人件費を抑えられる
校内で一声かけるだけでインターンを募れる点は、学生起業だからこそ叶う特権といえるでしょう。
もちろん、スモールスタートなら万が一失敗した時もほとんど経済的損失が発生しないため、共同創設者などを誘いやすいメリットもあります。
◎2 将来副業として実施できる
学生起業で確立したビジネスは、就職後に副業としても継続できるため、逆に副業をあらかじめ想定したうえで事業内容を選定するのも良いでしょう。
たとえば、IT関連の職種は業務プロセスごとでアウトソーシングしやすく、自分自身のリソースを圧迫しない体制の構築が可能です。
ただし、すべての企業が副業を認めているわけではないことから、きちんと就業規則を確認しなければなりません。
◎3 失敗も経験として評価される
事業の失敗は「カッコ悪い」「評判が下がりそう」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、少なくとも学生起業の場合はポジティブに作用する可能性が高いといえます。とくに、企業の面接ではプラス評価につながりやすく、次のような印象を与えられるでしょう。
- 主体性を持った人物
- 法人登記など一般社員が知らない知識も備えている
また、企業との親和性が見込めるビジネスにチャレンジしていたのなら、即戦力とまではいかずとも、有望視される期待が持てます。加えて、学生のうちから起業するだけでも希少な人材といえるため、その事実だけでもライバルとの差別化が可能です。
学生起業の3つのデメリット
学生起業のデメリットとしては、以下の3つです。
- 経験や専門知識が少ない
- 資金調達がしづらい
- 学業が疎かになる
先ほど触れたメリットを最大限活かせるように、しっかり押さえておきましょう。
▲1 経験や専門知識が少ない
起業自体は学生でも行える一方、実際にお金をやり取りする相手は自身よりも年長の社会人ばかりであり、経験値や専門知識の少なさが不利に働くケースがあります。
- 業界用語や慣習がわからない
- 社会人マナーが身についておらず反感を買う
- 相場がわからず安く買い叩かれる
さらに、メンバー全員がアルバイトの経験しかなく、適切な運営体制が構築できずに内部から頓挫してしまう可能性もゼロではありません。そのため、学生起業では一定以上の社会経験と実績を持つ人物を見つけて、主体性を失わない程度にアドバイスを受けるのがおすすめです。
▲2 資金調達がしづらい
事業を拡大する時は銀行・公庫から融資を受けるのが一般的ですが、社会経験や運営実績が少ない学生は審査に通りにくいというデメリットがあります。また、融資を受けるには一定以上の自己資金を求められるケースも多く、お金を貯めやすい社会人に比べれば不利と言わざるを得ないでしょう。
一方、「学生だからこそ」プラス評価されやすい方法もあるため、もし資金を調達したいのなら最初に以下を検討してみてください。
- クラウドファンディング:学生起業のアイデアが斬新なほど話題になりやすい
- ベンチャーキャピタル:若年層や実績が浅い企業にも前向きに出資を検討する傾向
参考までに、クラウドファンディングは事業の認知度向上にも役立つことから、出資の見込みが薄くても掲載しておいて損はありません。
▲3 学業が疎かになる
学生起業では、つい事業運営に熱中してしまいがちですが、あくまでも自身のミッションは学業であることを忘れてはいけません。
きちんと単位を取って卒業することが、事業に失敗したときのリスクヘッジにもつながります。あまり授業を休む必要がないように、事業のスケジュールや運用を調整するようにしましょう。
学生起業を成功させる3つのポイント
ここからは、学生起業を成功させるポイントを3つ解説します。自身のキャリアにプラスの効果をもたらすために、ぜひ参考にしてください。
①インターンに参加して経験やスキルを積む
学生起業では社会人経験の少なさが不利に働くケースがあるため、長期インターンに参加して事業運営の流れやコツを習得するのがおすすめです。正社員よりも安いとはいえ給与が発生するだけでなく、意欲的な学生に対しては快くノウハウを教えてくれるでしょう。
また、自身が取り組んでいるビジネスと同業、あるいは親和性が高い領域なら、インターンで身につけた知識をそのまま活かすことができます。もちろん、就活する上でもアピールするネタになることから、学業さえ疎かにならなければ利点の方が多い手法です。
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②スモールスタートで行う
学生起業を行う場合は、極力スモールスタートを心掛けるのがおすすめです。
- 改装費や初期費用がかかる店舗は持たない
- プリンターやパソコン、備品はできる限り学校のものを使う
- コミュニケーションはLINEなどの無料ツールを活用する
投じた資金が少ないほど失敗した時のダメージが軽減されるだけでなく、事業を立ち上げるハードルも格段に低くなります。もし追加投資を検討するのなら、ある程度売上が安定してから費用対効果を計算したうえで検討しましょう。
③分野選定は慎重に行う
学生起業を成功させるには、取り組みやすく売上が見込める事業を選定することも重要です。
- IT関連分野
- 学生や若者をターゲットにできる分野
- 専門知識不要の分野
上記はいずれも学生におすすめの分野となるため、ぜひ参考にしてください。
IT関連分野
IT関連は、学生起業で最も事例が多い分野のひとつであり、プログラミングの知識などが求められる一方、本格的な事業が行えるでしょう。
- Webサイトの構築
- アプリケーション開発
- プログラムの制作
加えて、メディア運営やビジネスマーケティングといった分野にも横展開できるため、理想とするキャリアに合わせて事業を構築していけるメリットもあります。
学生や若者をターゲットにできる分野
学生や若者は情報の拡散スピードが早く、需要が高いサービスを提供すれば最低限のマーケティングコストで事業を軌道に乗せられるでしょう。
具体的なビジネスモデルとしては、以下が挙げられます。
- 人気のある分野の講師を読んでセミナーを開催
- 課題の制作サポート
(完全代行は依頼者の学業の妨げになることからサポートに留めるのがおすすめ) - 大学生家庭教師を求める人とのマッチング
同年代に刺さるサービス内容なら、大学内で活動するだけでも一定の売上が期待できるため、柔軟な発想でチャレンジしてみてください。
専門知識不要の分野
経験不足を補いたいのなら、専門知識が必要ない以下の分野で事業を行うのもおすすめです。
- 先行学科を教える家庭教師
(バイトではなく事業として取り組む) - 物販事業など
スモールスタートできるだけでなく、スピーディーに始められるメリットがありますが、その分ライバルが多い点には注意しなければなりません。
競合と差別化しなければ、どれだけ時間をかけても売上は伸びないため、宣伝手法や料金形態などを工夫しましょう。
学生起業の5つの成功例
ここからは、学生起業の成功例を5つ確認していきましょう。具体的なモデルを知っておけば、より効果的な事業の方向性を見出せるため、ぜひ参考にしてください。
①株式会社ドリコム
株式会社ドリコムは、内藤裕紀氏が京都大学在学中に有限会社として設立した企業であり、当初は「マイプロフィール」という自己プロフィールの紹介プラットフォームでした。
その後、ブログ関連の事業で順調に実績を重ね、2006年にマザーズ上場を果たし、2022年時点ではゲーム分野にメディア事業と幅広い領域で活躍しています。
参考までに、ドリコムは「みんゴル」や「ダービースタリオン」といった国内屈指の有名コンテンツにも携わっており、学生起業がどれだけ可能性に満ちているかが分かる成功モデルといえるでしょう。
②クックパッド株式会社
慶応義塾大学に在籍していた佐野陽光氏は、1997年に有限会社コインを設立し、クックパッドの前身サービスとなる「kitchen@coin」をリリースしました。
そして、課金形態の変更や組織改革を行った後に「クックパッド株式会社」へ社名を改め、2011年には東証一部に上場しています。
今や膨大なユーザーを抱える料理レシピのプラットフォームですが、実は学生起業が起源であることはあまり知られていません。
③株式会社リブセンス
株式会社リブセンスは、村山太一氏が早稲田大学1年生の時期に設立した企業であり、求人情報を扱う「ジョブサイト」を運営しています。
現在は市場有数のマッチングプラットフォームとして認知されていますが、サービス開始当初は「応募のたびに料金が発生する」形態を採用したことで、業績が伸び悩んでいました。
しかしながら、その後に採用ベースの料金形態へ切り替えると瞬く間に成績は上昇し、年商10億円を超えるマザーズ上場企業へ大躍進を遂げたのです。
④dely株式会社
堀江裕介氏が慶応義塾大学在学中に立ち上げたdely株式会社は、フードデリバリーからメディア分野へ方針転換して成功を収めました。
同社が運営する「クラシル」という動画プラットフォームは、配信者へ気軽に質問できるインタラクティブな環境が好評を博し、リリースから短期間で月間1億回再生を達成しています。
加えて、動画配信の代表格であるYouTubeとも親和性が高く、2022年時点におけるクラシルのアカウント登録者数は100万人以上、動画再生数も数十万を超える人気ぶりです。
⑤株式会社タイミー
株式会社タイミーは、小川領氏が立教大学在学中に設立した企業であり、創業当初はアパレル分野を主体としていました。
しかし、翌年には短期アルバイトのマッチングアプリ「Timee(タイミー)」を開発し、ユーザー数200万人を超える空前のヒットを成し遂げています。
ちょっとしたスキマ時間で手軽にバイトができる仕組みは、事業者はもちろん多忙な若者にも需要が高く、学生特有の奇抜なアイデアで成功を勝ち取ったモデルといえるでしょう。
まとめ
本記事では、学生起業の概要やメリット・デメリット、成功させるためのポイントについても解説してきました。起業は必ずしも社会人だけの選択肢ではなく、学生がチャレンジすることでキャリア形成や就活にも好影響をもたらします。
一方、社会経験が少ないことに加えて、資金調達が行いづらいデメリットもあるため、インターン制度やクラウドファンディングなどを活用しつつ、学生向きの事業分野にチャレンジしてみてください。
参考:3C分析とは?必要性や手順、フレームワーク、具体例などを解説
ICTオフィス相談室の「開業・起業時の固定電話はだんぜんNTTよりクラウドPBXがいい理由7個」もおすすめです。ぜひご参考ください。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
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