
企業や個人がビジネスを始める際、まず検討するのが「オフィスの開設」です。これまでは賃貸オフィスを契約することが一般的でしたが、近年では働き方やビジネス環境の変化によって、バーチャルオフィスを活用する企業やフリーランスが増えています。
なかでも注目されているのが、バーチャルオフィスを活用することでオフィス開設時の初期費用を大幅に削減できるという点です。資金に余裕のない起業初期だからこそ、不要なコストは抑え、成長に直結する投資に資金を回す判断が重要になります。
本記事では、初期費用を削減することの重要性や、バーチャルオフィスと自社オフィスのコスト比較などについて解説します。これから起業を考えている方や、オフィスの開設を検討しているフリーランスの方にとって役立つ情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
起業時はできるだけコストを抑えることが重要
法人を設立したり、フリーランスとして独立したりする際に特に意識すべきなのが、限られた資金をどう使うかという点です。起業直後は、手元の開業資金を何に優先的に使うかを慎重に見極める必要があります。ここでは、起業時に考えておきたい費用面のポイントについて解説します。
初期費用を抑えられれば生き残る可能性は高まる
起業直後は売上が安定せず、資金繰りに悩むケースが少なくありません。中小企業庁の調査では、小規模事業者が挙げる経営課題の第3位は「資金繰り」(10.6%)です。優れたビジネスアイデアがあっても、資金が尽きれば事業は継続できず、廃業につながってしまいます。
たとえば、毎月10万円の固定費がかかる場合、10ヶ月で100万円の支出です。これは一人社長やフリーランスなど、小規模事業者にとって大きな負担になるでしょう。
裏を返せば、この固定費を削減できれば、その分の資金(100万円)を事業に投下できます。浮いた資金を顧客獲得や商品開発に充てれば、事業を早期に軌道に乗せることも可能です。
つまり、コスト削減と資金配分を両軸で最適化することが、起業後の存続率を高めるカギになります。
売上を生まないものに資金を使わない
起業時の支出には、「売上に直結する支出」と「売上を生まない支出」があります。たとえば、広告費や営業ツールの導入費、Webサイトの制作費、人材への外注費などは、顧客獲得や売上向上に直結する支出です。
一方、オフィスの開設費用や内装費、什器の購入といった費用は、直接的に売上を生むものではありません。もちろん、ビジネスとして登録できる住所や最低限の業務環境は必要ですが、物理的なスペースがそのまま売上につながるわけではない点は押さえておきましょう。
業務が在宅やリモートで完結するのであれば、特に創業初期は高額なオフィスを借りる必要はありません。人気のオフィス街や、スタートアップが集まる都市部に拠点を構えたくなる気持ちもあるかもしれませんが、ここは冷静な判断が求められます。
まずはスモールスタートを心がけ、固定費をできるだけ抑えることが重要です。そうすることで資金の無駄な流出を防ぎ、限られたリソースを有効活用できます。
マーケティングなどに資金は投下すべき
起業直後は、限られた資金をどこに使うかが、事業の明暗を分ける重要な判断になります。なかでも、売上につながる「攻めの投資」には積極的に資金を回すべきです。
具体的には、Webサイトの構築やリスティング広告・SNS広告の出稿、LPの改善・運用、名刺や営業資料の作成などが該当します。これらはすべて、見込み顧客との接点を生み出し、顧客獲得や売上向上に直結する支出です。
また、クラウド型の営業管理ツール(CRM:Customer Relationship Management)や、問い合わせ対応を効率化するチャットボットなどのITツールも、限られた人員で最大限の成果を出すための有効な投資といえるでしょう。
これらの領域に早い段階で予算を確保できれば、少ない労力で営業効率を高め、ビジネスの成長スピードを加速させることが可能です。
一方で、オフィス賃料などの毎月発生する固定費は、一度契約してしまうと解約しにくく、事業の柔軟性を損なう要因にもなり得ます。なるべく不要な固定費は避け、広告費や委託費のような変動費に切り替えることが重要です。それによって、状況に応じた資金配分がしやすくなり、持続可能でフットワークの軽い経営が実現できます。
起業初期こそ、「売上を生まない支出」を減らし、「売上を生む支出」に集中する姿勢が求められるでしょう。
バーチャルオフィスの初期費用は数万円
事業開始後の初期費用を抑える有効な手段として、バーチャルオフィスの活用があります。
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを持たずに、ビジネス用の住所の取得や郵便物の転送サービスを活用できるというもの。多くの場合、法人登記も可能です。
一般的なバーチャルオフィスでは、次のようにシンプルな料金体系となっており、初期費用は1万円〜3万円程度で済みます。
<バーチャルオフィスの初期費用例>
- 入会金:5,000円〜1万円程度
- 保証金:0円〜1万円程度
- 基本料金:月額1,000円〜5,000円程度
このうち、基本料金を年払い(一括払い)にすると、月払いよりも月額料金を抑えられるケースがほとんどです。バーチャルオフィスの契約は基本的に長期利用になるので、年払いを検討しましょう。
また、「入会金・保証金0円」「初月基本料金無料」などのキャンペーンを利用したり、「基本料金後払い」に対応しているバーチャルオフィスを利用したりすることで、初期費用を0円にできる可能性があります。実質的に0円でオフィス利用が可能になる点が、バーチャルオフィスの魅力です。
自社オフィスを構えるとコストは膨大
このように、初期費用を抑えられるバーチャルオフィスは、起業家やフリーランスにとって有力な選択肢となり得ます。一方で、賃貸などで自社オフィスを構える場合には、数十万円〜数百万円の出費が発生します。
初期費用としてかかる項目の例は、次の通りです。
<自社オフィスの場合の初期費用の例>
- 保証金/敷金
- 礼金
- 前家賃
- 前共益費
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 保証会社利用料
- 鍵交換費用
- 内装工事費
- オフィス什器
- 消耗品購入費
近年は、原材料価格の高騰や職人不足による人件費の上昇で、内装工事の費用が全体的に高くなっています。賃貸物件をそのまま使えるわけではなく、自社オフィスとして整えるには、以前よりも多くのコストがかかってしまうでしょう。
さらに、内装工事が完了するまでには数ヶ月かかることも多く、スピーディーに事業を始めたい起業初期にとっては大きな負担となる可能性があります。
コストをかけても実際にオフィスは使わない
コロナ禍以降、リモートワークの普及により、オフィスでの対面打ち合わせや出社の必要性は大きく変化しました。現在では商談や社内ミーティングの多くがZoomやGoogle Meetなどのオンラインツールで行われ、郵便物のやり取りも電子化が進んでいます。こうした背景から、広い執務スペースを維持する必要性は年々薄れつつあります。
実際に、大企業をはじめとする多くの企業が、従来の固定席を廃止してフリーアドレス化を進めたり、オフィスを縮小したりする動きが活発化しています。固定費の見直しや働き方の多様化を目的に、シェアオフィスやバーチャルオフィスの利用に切り替える企業も増えているでしょう。
それにもかかわらず、創業間もないスタートアップやフリーランスが、自社オフィスを構えるだけで毎月の固定費や高額な初期費用を背負ってしまうのは、非常に大きな負担です。現代の働き方に合った合理的な選択をして、限られた資金をより効果的に使える環境を整えましょう。
バーチャルオフィスと自社オフィス|初期費用比較
ここでは、バーチャルオフィスと自社オフィスにおける、初期費用を比較します。自社オフィスは、東京都渋谷区の物件を想定したものです。
<自社オフィスの例>
・住所:東京都渋谷区(JR恵比寿駅から徒歩約5分)
・家賃:月額25万円
・広さ:10坪
各項目と合計費用の比較表は下記の通りです。
<自社オフィスとバーチャルオフィスの比較>
費用項目 | 自社オフィス(賃貸) | バーチャルオフィス(※2) |
保証金/敷金 | 150万円〜300万円 (賃料の6~12ヶ月分) | 0円 |
礼金 | 25万円〜50万円 (賃料の1〜2ヶ月分) | 不要 |
前家賃 | 25万円〜37.5万円 (賃料の1〜1.5ヶ月分) | 不要 |
前共益費 | 3万円 (共益費の1ヶ月分) | 不要 |
仲介手数料 | 25万円 (賃料の1ヶ月分) | 不要 |
火災保険料 | 約3万円 | 不要 |
保証会社利用料 | 12.5万円〜25万円 (賃料の50%〜100%) | 不要 |
鍵交換 | 約2万円 | 不要 |
内装工事費(坪単価) | 150万円/坪〜 (物件により変動) | 不要 |
オフィス什器・備品 | 数万円〜数十万 (机・椅子・文具など) | 不要 |
消耗品購入 | 数万円 (コピー用紙・衛生用品など) | 不要 |
入会金(バーチャルオフィス) | – | 5,500円 |
年間基本料金(バーチャルオフィス) | – | 1万560円(月額880円×1年分) |
合計 | 428.5万円〜(※1) | 1万6,060円 |
※1:オフィス什器・備品は30万円、消耗品購入は3万円として試算
※2:「バーチャルオフィス1」の料金で試算
このように、両者の初期費用には400万円以上の差があることも珍しくありません。限られた予算で最大の効果を上げるには、費用対効果を冷静に見極めることが求められます。
特に初期段階では、見た目や立地よりも、事業を前に進める実質的な価値を優先すべきでしょう。
初期費用だけでなく月額固定費にも大きな差がある
バーチャルオフィスと自社オフィスの差は、初期費用だけにとどまりません。月々にかかる固定費にも大きな開きがあります。
たとえば、スタートアップやフリーランスが都内の賃貸オフィスを利用する場合、月額賃料として20〜30万円が相場です。そこに共益費、水道光熱費、通信費、清掃費、人を雇う場合の交通費などを加えると、月あたり30万円以上の支出になるケースも珍しくありません。
一方、バーチャルオフィスであれば、月額1,000〜5,000円程度が一般的です。つまり、月額で見ても約50〜100倍のコスト差があります。バーチャルオフィスを選べば、固定費に縛られることなく、事業フェーズや環境の変化に応じて柔軟に資金を使えるでしょう。
オフィス開設にあたっては、初期費用はもちろんのこと、毎月のランニングコストに対する意識を持つことが重要です。
まとめ
バーチャルオフィスを活用することで、オフィス開設にかかる初期費用を大幅に削減できることがわかりました。賃貸オフィスでは初期費用として数十万〜数百万円の支出が避けられませんが、バーチャルオフィスなら数万円程度、場合によっては初期費用0円でスタートが可能です。
起業初期はキャッシュフローを安定させることが何よりも大切です。売上に直結しない支出を減らし、マーケティングや商品開発、営業活動といった「売上を生む支出」に資金を回すことで、事業の成功確率を高められます。
バーチャルオフィスは「安かろう悪かろう」ではなく、現代の働き方に合った賢い選択肢です。自分に合ったプランを選び、ビジネスの土台を無理なく築いていきましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
東商 社長ネット 株式会社バーチャルオフィス1 牧野 傑
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