休眠会社のみなし解散|登記を放置すると強制的に解散なので要注意

[投稿日]2024年11月25日

休眠会社のみなし解散|登記を放置すると強制的に解散なので要注意

会社を作った、つまり法人設立の登記をしたものの、特に事業をすることなく放置していた場合、強制的に解散させられる可能性があります。これを「みなし解散」といいますが、適切な対応を取らないとトラブルが起きるため注意が必要です。

本記事では、みなし解散について基本的な意味や具体的な流れ、取るべき対処法について詳しく解説します。

みなし解散とは何か

みなし解散とは何か

最初に、みなし解散の基本的な意味について解説します。

長期間登記がない場合に行われる

みなし解散とは、休眠会社、休眠一般法人(長期間、役員変更などの登記が行われていない会社、法人のこと)に対し行われる措置のことです。具体的には、以下の流れで進めます。

  1. 法務局が対象となる法人に通知する
  2. 一定期間経過後も事業を廃止していない旨の届出が行われなかった場合に、法務局が強制的に解散の登記を行う

解散登記が行われると、登記簿謄本には解散した旨が記載され、取締役、代表取締役が職権により抹消されます。つまり、自動的に退任した状態になってしまうということです。

株式会社や一般法人として存在していたとしても、放置したままだと犯罪に悪用されかねません。みなし解散は、犯罪を防止する意味合いから、2015年度から毎年実施されるようになりました。

みなし解散の対象となる法人

みなし解散の対象となる法人は以下の2つです。

  1. 最後の登記から12年経過している株式会社(会社法第472条)
  2. 最後の登記から5年経過している一般社団法人、一般財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条および203条)

そもそも、株式会社や一般法人は定期的に登記を行う必要があります。たとえば、株式会社の取締役の役員の任期は、「選任した後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで」という決まりです(会社法第332条1項)。引き続き変わらずに事業を営む場合でも、法律上は重任にあたる以上、重任登記をしなくてはいけません。

なお、代表取締役が1人だけの株式会社のような非公開企業であれば、10年以内まで延長できます会社法第332条2項)。ただし、10年を超えて役員を続けるなら、重任登記をしなくてはいけないことに変わりありません。

有限会社にみなし解散はない

株式会社とは違い、有限会社にみなし解散はありません。有限会社の場合は役員の任期が規定されておらず、任期満了に伴う変更登記の必要がないからです。会社の本店所在地や役員の変更がなければ、12年以上登記を行わなくても問題はありません。

ただし、事業を行っていないなら廃業・清算手続きをしない限り、登記上は永遠に存続するので注意しましょう。

みなし解散後も法人税はかかる

仮に、株式会社がみなし解散をしても、法人税は払う必要があります。みなし解散が行われても、清算結了をしない限りは法人格が消滅しないからです。よりわかりやすくするため、みなし解散をしても科される税金と、課されない税金をまとめてみました。

課される税金法人住民税(均等割)、固定資産税(株式会社名義で不動産等を所有している場合)
課されない税金法人所得税・法人事業税・法人住民税(所得割)

10年経過すると登記簿が閉鎖される可能性がある

法人がみなし解散に至ったあと10年経過すると、登記官は職権により登記簿を閉鎖できる決まりになっています(商業登記規則81条1項1号)。仮に登記簿が閉鎖された場合、履歴事項証明書など登記記録が閉鎖されていないことを前提にする証明書は取得できません。ただし、清算結了が終わっていない以上、法人格は消滅しないと解されます。前述したように、法人住民税を払う義務が生じる点に注意が必要です。

なお、登記簿が閉鎖されても、まだ清算結了が終わっていなければ申し出をすることで登記簿を復活させられます。ただし、登記簿を復活させるためには法務局に所定の申出書を提出する必要があるので、なるべく早く済ませましょう。

参考:清算を結了していない旨の申出書|法務局

みなし解散が行われる具体的な流れ

みなし解散が行われる具体的な流れ

みなし解散が行われる具体的な流れは以下の通りです。どのような流れで行われるのか、知っておきましょう。

  1. 法務大臣が公告を行う
  2. 会社の管轄法務局から通知書が届く
  3. みなし解散の登記が行われる

①法務大臣が公告を行う

まず、対象となる株式会社、一般法人に対し、法務大臣から公告が行われます。

事業継続中なら届出・役員変更の登記申請をする

事業継続中なら、以下の2つの手続きをできるだけ早い段階で済ませましょう。

  • 「まだ事業を廃止していない旨の届出書」(後述)を記載し、管轄の登記所へ提出する
  • 役員変更の登記申請を行う


ミスを防ぐという意味では、司法書士に依頼するのが効果的です。「みなし解散の通知が届いたのですが」と相談してみることをおすすめします。

②会社の管轄法務局から通知書が届く

法務大臣による広告が行われるのと同時に、管轄登記所から通知書が発送されます。管轄登記所からの通知の例は以下の通りです。このような書類が送られてきたら、後述する適切な対処をしましょう。

管轄登記所からの通知書の例|法務省

出典:管轄登記所からの通知書の例|法務省

なお、通知書は会社の本店所在地宛てに届きます。本店を移転しているにもかかわらず変更していなかった場合は、通知書が届かないこともあり得るでしょう。しかし、何らかの事情で通知が届かなくても、そのような事情は考慮されることはなく、同様にみなし解散の対象になります。

③みなし解散の登記が行われる

指定された日までに「まだ事業を廃止していない旨の届出書」を提出せず、役員変更等の登記申請も行われていなければ、みなし解散の登記が行われます。みなし解散が行われると、以下のことが起きます。事業を続けていくつもりであれば、特に注意が必要です。

  • 取締役、代表取締役が職権で抹消される
  • 登記簿謄本には解散した旨が記載される
  • 一般の会社としての営業活動を行うことができなくなる

簡単にいうと、法律的には到底事業を続けられる状態ではなくなります。取引先とのやり取りにも大きな支障が出てしまうでしょう。

登記を怠ったペナルティがある

みなし解散に至るほど長期間登記が行われていなかった場合、登記懈怠として100万円以下の過料が科されることがあります。

この過料は法人ではなく、代表者個人に科されます(会社法976条)。会社経費にすることもできませんので、注意しましょう。

 【状況別】みなし解散通知が届いた場合の対処法

 【状況別】みなし解散通知が届いた場合の対処法

みなし解散通知が届いた場合、どのように対処すべきかは状況により異なります。ここでは以下の3つに分けて、どのように対処すべきかを解説します。

状況①みなし解散の期限内かつ事業を継続したい

まず「みなし解散の期限内かつ事業を継続したい」状況であれば、役員変更の登記申請を行わなくてはいけません。みなし解散の通知が届いてから解散されるまでは、約2ヶ月間の猶予があります(会社法472条)。その間に手続きをすれば、間に合います。

ただし、期限が迫っている場合や、自分で完結させる自信がない場合は、早い段階で司法書士に相談しましょう。

状況②みなし解散の期限は過ぎたが事業を復活させたい

みなし解散通知が届いてか2ヶ月間経過すると、みなし解散に至ります。ただし、期日が過ぎてみなし解散に至ったとしても、会社継続登記を行えば事業を続けることは可能です。その場合、以下の書類が必要になるので、必ず用意しましょう。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録
  • 就任承諾書
  • 取締役全員の印鑑証明書
  • 取締役の本人確認証明書
  • 印鑑届書
  • 司法書士への委任状(司法書士に依頼する場合)

会社継続登記を行う場合、以下の内訳にもあるように、9万円もしくは7万円の登録免許税がかかる点に注意して下さい。

会社継続3万円
取締役会設置会社の登記3万円
役員変更(取締役就任)資本金1億円超の場合は3万円資本金1億円以下の場合は1万円

なお、みなし解散から3年以内に登記を済ませないと事業は再開できません。清算を余儀なくされるので、できるだけ早いうちに手続きを進めましょう(会社法473条)。

事業を再開する際は再開届も必要

休眠状態に陥っていた株式会社、一般法人の事業を再開させる際は、税金関連の手続きも忘れずに行いましょう。具体的な手続きは以下の通りです。

  • 再開届(異動届出書)を、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ提出する
  • 青色申告が取り消されていたなら、税務署に「青色申告承認申請書」を提出する

不明な点があれば、適宜税務署や税理士に問い合わせながら進めましょう。

参考:事業を始めたとき・廃止したとき|東京都主税局
参考:C1-8 異動事項に関する届出|国税庁

状況③事業を再開しない

みなし解散通知が届いた時点で事業を行わず、再開するつもりもなければ、会社の清算結了登記を行わなくてはいけません(会社法929条)。清算結了登記の必要書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 決算報告書
  • 株主リスト
  • 委任状

また、清算結了登記を行う際は、法務局に2,000円を登録免許税として納めます。司法書士に依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があるので、事前に見積もりを取りましょう。

参考:株式会社清算結了登記申請書 – 法務局

休眠会社、休眠法人を残すならバーチャルオフィスの活用を

バーチャルオフィス1

現状、事業を行っていない休眠会社・休眠法人を残したい場合は、法律で定められた要件に従い、定期的に登記を行っていかなくてはいけません。また、今すぐ事業を再開する予定がなくても、将来的に再開するつもりであれば、会社や法人を残しておく必要があります。

しかし、休眠会社・休眠法人のために、本店所在地を事務所や自宅にしておくのは好ましくありません。事務所を借りると費用がかかる、自宅にしておくとプライバシーの面で問題があるなど、欠点があるためです。

費用削減とセキュリティ保持という意味で、バーチャルオフィスの住所を休眠会社の本店所在地として利用することを検討しましょう。対外的な連絡先として利用できることに加え、費用も比較的安く抑えられます。

バーチャルオフィス1では、対外的な連絡先として利用でき、郵便物の受け取りができる住所を月額880円+郵送費用(税込)で利用可能です。休眠会社・休眠法人をお持ちで、本店所在地として利用できる住所をお探しの場合は、ぜひご検討ください。

【注意】

バーチャルオフィス1では、解散状態はサービスを利用しているという定義を行っています。よって休眠状態の法人を無料で受け入れたり、既存の法人を休眠させることで料金の支払を停止することはできません。利用中の方は移転登記または閉鎖登記を行うことが解約の条件となります。 

まとめ

株式会社や一般法人は、長年登記をせずそのままにしておくと、みなし解散が行われることがあります。どのように対処すべきかは、株式会社や一般法人を残したいのか、そのまま清算するのかによって異なります。

また、みなし解散通知が届いたものの、どうすべきか不明な場合は、司法書士に相談してみるのがおすすめです。みなし解散に関する通知が行われた場合は、焦らずに適切な対応をしましょう。  

この記事の投稿者

バーチャルオフィス1編集部

東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1

月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。

https://virtualoffice1.jp/

この記事の監修者

株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑

株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役

2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。

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