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「用途別に法人口座を使い分けたいが、異なる銀行ではなく同じ銀行がいい」とお考えの方も多いのではないでしょうか?同一銀行で複数作成できれば、管理の負担を減らしたり、資金移動時の振込手数料を削減したりすることが可能です。
本記事の前半では、同じ銀行で複数の法人口座を開設できるか否かを紹介します。なお、後半では、同一銀行で複数の口座を開設できるおすすめの銀行を3行解説します。途中、注意点もまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
同一銀行で法人口座を複数作ることはできる?
ここでは、銀行の形態別に複数の法人口座を作れるかどうかを紹介します。
店舗型銀行:基本的に不可能
基本的に、メガバンク・都市銀行などの店舗型銀行では、特別な事情がない限り、同一銀行で複数の法人口座を開設できません。主な理由は、複数の法人口座を開設することで、犯罪に利用されたり、口座の管理工数が増大したりするリスクが高まるためです。
近年、法人口座を犯罪やマネーロンダリングに利用するケースが増えています。銀行としては、対策を取らざるを得ず、法人口座を開設したあとにも、定期的な本人確認・取引情報のモニタリングを実施しています。
口座開設数が増えると、犯罪への利用を防止するための管理コストが増大するため、特別な事情がない限りは同一銀行での複数口座開設を認めていないのです。
以下では、主要な都市銀行6行を抜粋し、複数口座の開設可否をまとめています。
銀行名 | 複数口座の開設可否 | 開設可能な口座数 |
三菱UFJ銀行 | 記載なし | 記載なし |
みずほ銀行 | ○ | 記載なし |
三井住友銀行 | △ 特別な事情の場合、相談可 | 記載なし |
ゆうちょ銀行 | 記載なし | 記載なし |
りそな銀行 | × | 記載なし |
SBI新生銀行 | 記載なし | 記載なし |
公式サイトにて、同一銀行での複数の法人口座開設を許可しているのは、みずほ銀行だけです。なお、三井住友銀行は、原則1法人につき1口座としつつも、特別な事情がある場合は店舗での相談が可能としています。
しかし、いずれも2口座目の開設申請は店舗でのみ受付としていることから、複数の法人口座の開設には消極的と考えられます。
ネット銀行:可能な銀行がある
ネット銀行の場合、一部で同一銀行での法人口座の複数開設が認められています。もちろんネット銀行も、法人口座の犯罪利用防止に努めています。
しかし、ネット銀行はインターネット上の取引に特化したことで、賃料・人件費などのコスト削減と、システムを活用した効率的な運営を実現しています。これにより、同一銀行で複数の法人口座開設を許可したとしても、各口座の管理にコストを割くことが可能です。
以下では、主要なネット銀行での複数口座の開設可否と口座上限数をまとめています。
複数口座の対応可否 | 開設可能な口座数 | |
GMOあおぞらネット銀行 | ○ | マスター口座+19口座 |
住信SBIネット銀行 | × | マスター口座のみ |
楽天銀行 | ○ | マスター口座+19口座 |
PayPay銀行 | ○ | マスター口座+19口座 |
GMOあおぞらネット銀行・楽天銀行・PayPay銀行は、いずれも運営会社または主要株主がインターネットサービスを提供する大手の企業です。独自のノウハウにより効率的な運営を得意としているため、法人口座の複数開設を許可できているのだと考えられます。
同一銀行で法人口座を複数開設するメリット
同じ銀行で法人口座を複数開設する主なメリットは、以下の2つです。
- 資金管理を効率化できる
- 銀行からの信用を高められる
一番のメリットは、資金管理を効率化できることです。基本的に、同一銀行で複数の法人口座を開設する場合、1つのメイン口座と複数のサブ口座を設けることになります。
サブ口座を事業や用途ごとに割り振ることで、資金の流れを把握しやすくなり、会計処理を効率化できます。メイン口座ではサブ口座の入出金履歴を確認できるため、万が一不審な取引があれば早期に発見できるでしょう。
また、異なる銀行間で資金移動をする場合、他行宛の振込手数料がかかってしまいます。同一銀行の場合は無料もしくは非常に安価な金額で振込できるので、振込手数料の削減にもつながります。
さらに、同じ銀行で法人口座を複数開設した場合、取引を一元化できます。複数の銀行で法人口座を開設した場合に比べて多くの取引実績を積めるため、銀行からの信用を高めやすいのです。銀行と良好な関係を築けると、好条件な融資の提案や手厚いサポートが期待できます。
同一銀行で法人口座を複数開設するデメリット
一方で、同じ銀行で法人口座を複数開設する場合、以下のデメリットに注意が必要です。
- 口座維持手数料が増えることがある
- 銀行依存のリスクが高まる
主に店舗型銀行では、開設した法人口座に対して口座維持手数料が毎月発生します。そのため、複数保有するとコスト負担が増大する恐れがあります。
ただし、多くのネット銀行は、口座維持手数料を無料にしています。したがって、コストを抑えるにはネット銀行で複数の法人口座を開設するのがおすすめです。
前述のメリットで、同一銀行で法人口座を複数開設すると、銀行からの信用を高められると紹介しました。これは裏を返すと、特定の銀行への依存度が高まるということです。
万が一、システム障害が発生した場合は、取引や資金移動が滞る恐れがあります。また、融資を受ける場合の選択肢が狭まったり、審査落ちになった場合のリスクヘッジが難しかったりします。
同じ銀行で複数の法人口座を開設する際は、ほかの銀行でも開設しておくなどしてリスクを分散するしておくと安心です。
「バーチャル口座(仮想口座)」を作る方法も検討しよう
同じ銀行で法人口座の複数開設をお考えなら、バーチャル口座の利用を検討するのもおすすめです。
バーチャル口座とは、実際に使用する口座とは別に割り当てる、振込入金専用の口座です。口座といっても、システム上で管理を切り分けた仮想の枠組みを指します。
主に、注文や顧客ごとにバーチャル口座を割り当て、入金データから注文や顧客を特定するために使用します。入金データと注文・顧客が紐づくことで、同姓同名または同額の振込入金が発生しても、正しく資金の流れを把握できるようになります。
一般的な口座とバーチャル口座の違い
仮に以下の取引先・金額で振込入金があったとします。
- A社(太郎さん):10,000円
- B社(次郎さん):10,000円
- C社(太郎さん):50,000円
一般的な口座の明細
お取引内容 | 入出金 |
太郎さん | 10,000円 |
B社 | 10,000円 |
太郎さん | 50,000円 |
バーチャル口座を利用した際の明細
お取引内容 | 入出金 |
バーチャル口座A:太郎さん | 10,000円 |
バーチャル口座B:B社 | 10,000円 |
バーチャル口座C:太郎さん | 50,000円 |
バーチャル口座を利用することで、上記のように同姓同名・同額の振込入金があっても、誰からいくらの入金があったのかを瞬時に把握できます。なお、各銀行のバーチャル口座の対応可否を以下にまとめています。
バーチャル口座の対応可否 | 料金 | |
三菱UFJ銀行 | ○ | 有料 |
みずほ銀行 | ○ | 有料 |
三井住友銀行 | ○ | 有料 |
ゆうちょ銀行 | 記載なし | – |
りそな銀行 | ○ | 有料 |
SBI新生銀行 | 記載なし | |
GMOあおぞらネット銀行 | ○ | 無料 |
住信SBIネット銀行 | ○ | 無料 |
楽天銀行 | ○ | 有料 |
PayPay銀行 | ○ | 有料 |
バーチャル口座を無料で利用できるのは「GMOあおぞらネット銀行」と「住信SBIネット銀行」のみです。
同一銀行で複数の法人口座が開設できるネット銀行3選!
ここでは、同じ銀行で複数の法人口座を開設できるネット銀行の、サービス内容や特徴を紹介します。今回取り上げる銀行は以下の3行です。
口座上限数 | 振込手数料(他行宛) | ネットバンキングのアカウント上限数 | |
GMOあおぞらネット銀行 | マスター口座+19口座 | 145円 ※129円 ※振込料金とくとく会員 | 100アカウント |
楽天銀行 | マスター口座+19口座 | 3万円未満:150円 3万円以上:229円 | 200アカウント |
PayPay銀行 | マスター口座+19口座 | 通常:160円 ※月5回まで0円 | 20アカウント |
GMOあおぞらネット銀行:20口座まで
振込手数料 | 同行同一支店宛 | 無料 | 海外送金 | 契約金 | 無料 |
同行本支店宛 | 無料 | 月額料金 | 無料 | ||
他行宛 | 145円 ※129円 ※振込料金とくとく会員 | 送金手数料 | 265円〜 送金金額に応じて変動 | ||
為替手数料(米ドル) | 0円 | ||||
初期費用・維持費 | 初期契約料 | 無料 | 当日振込・リアルタイム振込 | 当日振込対応時間 | 当行:24時間 他行:平日15時まで |
口座維持手数料 | 無料 | リアルタイム振込 | ◯ | ||
総合振込 | 初期契約料 | 無料 | その他機能・サービス | ネットバンキングのアカウント上限数 | 100アカウント |
月額料金 | 無料 | 複数口座の開設上限数 | マスター口座+19口座 | ||
上限処理件数 | 9,999件 | 融資商品の有無 | ◯ | ||
口座振替・定額自動振 | 口座振替手数料 | 無料 | Pay-easyの対応 | ◯ | |
定額自動振込手数料 | 同行宛:無料 他行宛:145円 ※129円 ※振込料金とくとく会員 | 日本政策金融公庫の対応 | ◯ | ||
審査期間 | 最短即日~平均2営業日 |
GMOあおぞらネット銀行は、振込手数料の安さが魅力の銀行です。同行宛の振込手数料が無料のため、複数の法人口座を開設した場合に口座間の資金移動を無料で行えます。
また、他行宛は取引金額にかかわらず1件あたり145円と安価です。月額500円の「振込料金とくとく会員」に加入すると、他行宛の振込手数料が1件あたり129円へ割引されるため、手数料を抑えたい方に適しています。
そのほかのサービス内容として、ビジネスデビットカードのサブカードを最大9,998枚発行できる点がメリットです。発行時に1,100円の手数料がかかりますが、年会費は無料で利用できます。
したがって、事業やプロジェクトごとにビジネスデビットカードを発行し、取引内容や資金の流れを把握するといった使い方が低コストで実現できます。GMOあおぞらネット銀行のサービス内容を詳しく知りたい方は、以下より公式サイトを確認してみてください。
楽天銀行:20口座まで
振込手数料 | 同行同一支店宛 | 52円 | 海外送金 | 契約金 | 無料 |
同行本支店宛 | 52円 | 月額料金 | 無料 | ||
他行宛 | 3万円未満:150円 3万円以上:229円 | 送金手数料 | 1,000円 | ||
初期費用・維持費 | 初期契約料 | 無料 | 当日振込・リアルタイム振込 | 当日振込対応時間 | 当行:24時間 他行:24時間(土日祝日の一部深夜帯を除く) |
口座維持手数料 | 無料 | リアルタイム振込 | ◯ | ||
総合振込 | 初期契約料 | 無料 | その他機能・サービス | ネットバンキングのアカウント上限数 | 200アカウント |
月額料金 | 無料 | 複数口座の開設上限数 | マスター口座+19口座 | ||
上限処理件数 | 3,000件 | 融資商品の有無 | ◯ | ||
口座振替・定額自動振 | 口座振替手数料 | 無料 | Pay-easyの対応 | ◯ | |
定額自動振込手数料 | 同行宛:52円 他行宛: 3万円未満150円 3万円以上229円 | 日本政策金融公庫の対応 | ◯ | ||
融資期間 | 1週間程度 |
楽天銀行は、ネット銀行でありながら法人口座のサービス内容に力を入れている銀行です。
各種手数料はやや高めの設定ですが、ネットバンキングのアカウントを最大200アカウント開設できたり、融資の借入限度額が1億円と高く設定されていたりします。また、ネット銀行としては珍しく、給与・賞与振込にも対応しています。
楽天銀行も口座の開設上限数は20口座ですが、一般的なネット銀行と比較すると、より用途に合わせた複数口座の運用が可能です。たとえば、事業やプロジェクトごと法人口座を開設し、なおかつ担当者の立場に合わせてネットバンキングのアカウントと権限を付与するなどです。
また、給与・賞与の振込用口座を開設すれば、仕入れ費や賃料などの出費と区別して経費を管理できます。より細かく資金の流れを管理したい会社は、楽天銀行の法人口座を検討してみてはいかがでしょうか。
PayPay銀行:20口座まで
振込手数料 | 同行同一支店宛 | 通常:55円 ※月5回まで0円 ※預金平均残高3,000万円以上 | 海外送金 | 契約金 | 無料 |
同行本支店宛 | 通常:55円 ※月5回まで0円 | 月額料金 | 無料 | ||
他行宛 | 通常:160円 ※月5回まで0円 | 送金手数料 | 送金金額に応じて変動 | ||
初期費用・維持費 | 初期契約料 | 無料 | 当日振込・リアルタイム振込 | 当日振込対応時間 | 当行:24時間 他行:24時間 |
口座維持手数料 | 無料 | リアルタイム振込 | ◯ | ||
総合振込 | 初期契約料 | 無料 | その他機能・サービス | ネットバンキングのアカウント上限数 | 20アカウント |
月額料金 | 1,100円 | 複数口座の開設上限数 | マスター口座+19口座 | ||
上限処理件数 | 3,000件 | 融資商品の有無 | ◯ | ||
口座振替・定額自動振 | 口座振替手数料 | 無料 | Pay-easyの対応 | ◯ | |
定額自動振込手数料 | 同行宛:55円 他行宛:160円 | 日本政策金融公庫の対応 | ◯ | ||
最短3日~10日程度 |
PayPay銀行は、インターネットバンキングの操作性・利便性に定評がある銀行です。運営会社のPayPay銀行株式会社は、LINEヤフー株式会社のグループ会社です。
Yahoo! JAPANやLINEなどの名だたるインターネットサービスを提供しているだけに、インターネットバンキングに無駄がなく、なおかつ利用者の操作性に配慮したデザインになっています。一見、前述の2つの銀行に見劣りしそうですが、実はインターネットバンキングの操作性・利便性は非常に重要です。
たとえば、操作ミスによる誤った取引を防止できたり、従業員への教育を簡素化できたりといったメリットがあります。なお、PayPay銀行のビジネスデビットカードは、まるでクレジットカードのような翌月払いに対応しています。
特に、創業期の企業はキャッシュフローが追いつかない場合もあるため、翌月払いにすれば1ヶ月の猶予を設けられます。もちろん、デビットカードの発行に審査はないため、比較的容易に発行が可能です。
PayPay銀行の詳しいサービス内容が気になる方は、ぜひ以下から公式サイトを確認してみてください。
まとめ
本記事では、同じ銀行で複数の法人口座を開設できるか否かを紹介しました。基本的に可能なのは、一部のネット銀行のみです。
同一銀行で複数の法人口座を開設する際は、メリット・デメリットを意識することが重要です。法人口座選びでは、ぜひ本記事で紹介した3つの銀行を比較・検討してみてください。
なお、デメリットを考慮し、バーチャル口座の利用を検討する方には以下の記事がおすすめです。主要なネット銀行・店舗型銀行のサービス内容や各種手数料を細かく比較しています。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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