【弁護士監修】バーチャルオフィスでは賃貸借契約書が作成されない!理由と契約の流れを徹底解説

[投稿日]2023年11月26日 / [最終更新日]2024年07月10日

バーチャルオフィスでは賃貸借契約書が作成されない!理由と契約の流れを徹底解説

バーチャルオフィスで賃貸借契約書は作成されますか?

バーチャルオフィスを借りる場合、一部の例外を除いて賃貸借契約書は作成されません。バーチャルオフィスを借りるのは、賃貸借契約ではなく、あくまでサービスの利用契約に過ぎないためです。

実際のところ、住所だけでなく個室に近いブースを定期的に借りていたなど、実態として建物を借りていたと判断されるケースであれば、借地借家法が適用される可能性はあります。しかし単に住所だけを借りていただけなら、借地借家法における賃貸借契約にあたると判断される可能性は極めて低いでしょう。

一般的に、賃貸オフィスを借りる際は賃貸借契約書の取り交わしを行います。しかし、バーチャルオフィスを借りる場合、一部の例外を除いて賃貸借契約書は作成されません。「賃貸借契約書もなくて大丈夫?」と思うかもしれませんが、以下に述べるとおり、心配することはありません。

今回の記事では、バーチャルオフィスで賃貸借契約書が作成されない理由と、契約の流れを詳しく解説します。賃貸借契約書がなくても実務上は問題ない理由にも触れているので、参考にしてくださいね。

バーチャルオフィスは賃貸借契約ではない

バーチャルオフィスは賃貸借契約ではない

最初に、バーチャルオフィスを借りた場合に賃貸借契約書は作成されるのかについて、関連する論点とともに解説します。

そもそも賃貸借契約とは

賃貸借契約とは、当事者の一方があるものの使用・収益を相手方にさせることを約束し、相手方はその対価として賃料を支払うことを定めた契約です。マンションやアパートなど、不動産の貸し借りをする際の契約も、賃貸借契約にあたります。

バーチャルオフィスで賃貸借契約書は作成されない

結論からいうと、ほとんどのケースで賃貸借契約書は作成されません。バーチャルオフィスを借りるのは、賃貸借契約ではなく、あくまでサービスの利用契約に過ぎないためです。

実際のところ、住所だけでなく個室に近いブースを定期的に借りていたなど、実態として建物を借りていたと判断されるケースであれば、借地借家法が適用される可能性はあります。しかし、単に住所だけを借りていただけなら、借地借家法における賃貸借契約にあたると判断される可能性は極めて低いでしょう。

賃貸オフィスとの扱いの違い

賃貸オフィスを利用する際の契約は、賃貸借契約にあたります。貸主(大家)は借主(入居希望者)に部屋を貸し、借主はその対価として貸主に家賃を払うことになるからです。当然、賃貸借契約書も作成されるので、事前に内容を確認し、疑問点があれば解決してから手続きを進めましょう。

賃貸借契約ではない分コストも抑えられる

賃貸借契約書とは直接の関係はありませんが、コストが抑えられるのもバーチャルオフィスならではの強みです。まず、バーチャルオフィスの利用料と、賃貸オフィスの賃料を比較した場合、前者のほうが安いといえます。

またすでに触れたとおり、バーチャルオフィスの契約は一部の例外を除き、賃貸借契約にはあたりません。不動産業者の仲介(借主を探してもらうこと)も不要であり、仲介手数料もかからないことから、結果的に費用も抑えられます。

バーチャルオフィスの利用契約書でも実務上は問題ない

バーチャルオフィスの利用契約書でも実務上は問題ない

すでに触れたように、バーチャルオフィスを借りたとしても賃貸借契約書は作成されず、代わりに利用契約書が作成されるケースがほとんどです。しかし、実務上はさほど問題がないので、さまざまな観点から解説します。

なお、「利用契約書」についてはバーチャルオフィスによって「利用証明書」「利用承諾書」などさまざまな呼び方がありますが、本記事では「利用契約書」で統一します。

法人登記は問題なくできる

まず、バーチャルオフィスの住所であったとしても、法人登記をする際の住所(本店所在地の住所)として利用することは可能です。

ただし、郵便物の受取に使っているなど事業に利用している実態があることが必要になります。確認があった場合にすぐに提出できるよう、バーチャルオフィスの利用契約書とその住所宛に届いた郵便物は用意しておきましょう。

法人口座の開設は問題なくできる

法人口座の開設も、バーチャルオフィスの利用契約書があれば問題なく済ませることが可能です。たとえばりそな銀行の場合、法人口座開設にあたってのQ&Aで「バーチャルオフィスの場合は利用契約書で問題ない」旨がWebサイトに明記されています。

法人口座開設のよくあるご質問|りそな銀行

Q.バーチャルオフィスを利用していますが、本社確認書類で提出する契約書がない場合は、どうすればよいですか?

A.書面で利用承諾書や契約プラン(契約期間や賃料等)、契約名義が記載されている書面をご提出ください。書面が存在しない場合は、会員サイト等における該当箇所の画面キャプチャをご提出ください。

参考:バーチャルオフィスを利用していますが、本社確認書類で提出する契約書がない場合は、どうすればよいですか?|法人口座開設のよくあるご質問|りそな銀行

金融機関によっても具体的な扱いは異なるため事前確認が必要ですが、何らかの形で「実際に契約し、事業に使っている(使う予定である)実態がある」ことが確認できれば問題ないでしょう。

補助金・助成金も申請できる

バーチャルオフィスの利用契約書は、補助金・助成金を申請する際にも利用できます。法人口座の場合と同様、「実際に契約し、事業に使っている(使う予定である)実態がある」ことが立証できれば問題ないからです。

ただし「●●県に在住していること」「●●県に本社を構えていること」というように、居住地や本社所在地の要件が定められている補助金・助成金の場合は注意が必要です。都道府県単位で運営されている補助金・助成金の場合、応募の対象から外れてしまうことがあります。利用契約書の話とは直接の関係はありませんが、注意すべき点として意識しておきましょう。

バーチャルオフィスの契約までの一般的な流れ

バーチャルオフィスの契約までの一般的な流れ

バーチャルオフィスを初めて契約する際は、事前に手続きの基本的な流れを押さえておきましょう。細かい部分はバーチャルオフィスの運営会社によっても異なりますが、以下のように進められます。

  1. 事前に住所を確認し必要に応じて下見する
  2. 必要書類を提出する
  3. 入居審査を受ける
  4. 契約締結後入金する

手順①事前に住所を確認し必要に応じて下見する

バーチャルオフィスを利用する際は、運営会社の住所と自分が使うことになる住所が実在するものか確認しましょう。本来、バーチャルオフィスは犯罪収益移転防止法により規制を受ける業種であるため、実在しない住所が使われる可能性は低いです。

ただし、詐欺目的で架空の住所を使って申し込みを募るなど、違法業者がたまに紛れ込むこともあります。また、住所自体は実在するものだったとしても、犯罪に使われた形跡がある(もしくは、そのような噂がある)かもしれません。「本当にこの住所を使って大丈夫か」は確認しましょう。

なお、住所を借りるだけでなく、作業スペースや会議室を時間単位で借りる予定があるなら、なるべく現地に足を運んでみましょう。自分や取引先関係者、顧客などが問題なくたどり着けるかを調べるためにも重要です。夕方以降に行く予定があるなら、なるべく2人以上で行動するのをおすすめします。

手順②必要書類を提出する

バーチャルオフィスの住所や詳細を確認し、問題がなければ手続きを始めます。運営会社が指定する必要書類をそろえ、期限通りに提出しましょう。

なお、必要な書類は運営会社によって異なります。事前に確認し、抜け・漏れがないようにそろえてください。

手順③入居審査を受ける

書類を提出したら、運営会社が審査を始めます。特に何かする必要はありませんが、電話やメールで連絡があった場合は、できるだけ早めに返答しましょう。

なお、審査が終了するまでには数日~2週間程度かかります。あまりに長期間連絡がない場合は、連絡先を間違って書いているなどのミスが考えられるので、一度運営会社に連絡してみるのをおすすめします。

手順④契約締結後入金する

審査に通過した場合、契約手続きについて案内が届きます。案内に従い書類を準備し、入会金や数か月分の利用料などを支払いましょう。

昨今では、料金の支払いにクレジットカードが使われるケースが多くなっています。ただし、銀行口座からの引き落としや振込にも対応している場合もあるので、希望する場合は確認してください。

バーチャルオフィスの契約に必要な書類

バーチャルオフィスの契約に必要な書類

前述したように、バーチャルオフィスの契約に必要な書類は、運営会社によっても異なるので事前に確認しましょう。ここでは例として、バーチャルオフィス1で契約する場合に必要な書類を、個人事業主の場合と法人の場合に分けて詳しく解説します。

個人事業主の場合

まず、個人事業主(新規で法人設立予定のケースも含む)の場合、用意する書類は以下のとおりです。

  • 住民票(発行から3ヶ月以内)
  • 印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 顔写真付き身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • 事業概要説明書類
  • クレジットカード

身分証明書とクレジットカード以外はPDFでの準備が必要になります。また、事業概要説明書類として利用できるものの例は以下のとおりです。

  • 事業計画書、創業計画書のコピー
  • 入会希望者本人の経歴がわかるWebページ等のコピー
  • 資格証明書(士業など資格をもとに活動する場合)

法人の場合

次に法人の場合、用意すべき書類は以下のとおりです。

  • 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 代表権を持つ方の顔写真付き身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • 実質的支配者の顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • 事業概要説明書類
  • クレジットカード

また、事業概況説明書類として利用できるのは、以下の書類が考えられます。

  • クライアントとの契約書のコピー
  • Webページ(HP)のURLおよび事業内容が分かる箇所のコピー
  • 対外的な会社案内のコピー

まとめ

バーチャルオフィスを借りる場合、ほとんどのケースで賃貸借契約にはあたらないため、賃貸借契約書は作成されません。しかし、法人口座の開設や補助金・助成金の申請などの手続きを行う際は、利用契約書で問題なく手続きが進められます。実務的に「賃貸借契約書がなくて困る」ことはほとんどないでしょう。

「いずれはオフィスを借りるかもしれないけど、まだ自分だけでやっていることだから費用を抑えたい」という場合は、前向きにバーチャルオフィスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の投稿者

バーチャルオフィス1編集部

東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1

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この記事の監修者

弁護士 北村 尚弘

2013年登録 東京弁護士会所属

東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。一般企業法務、人事労務、紛争処理(訴訟・保全・執行)、M&A・事業承継、宇宙ビジネスなど多角的な分野に取り組んでいる。

弁護士法人IGT法律事務所

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