
年商は、企業や個人事業主が1年間で得た事業の総収益額のことです。起業や独立を検討している方は、年商を増やす方法と売上高・純利益・年収との違いを確認しておきましょう。
本記事では、年商の概要や、売上高・純利益・年収との違いを詳しく解説します。年商を増やす方法や注意点もあわせて解説するので、最後まで読んで自社の業績を向上させる参考にしてください。
目次
年商とは

年商は、企業や個人事業主が1年間で得た事業の総収益額です。たとえば、年商が2,000万円だった場合は、1年間で2,000万円の収益を得ています。
ただし年商は、原価や経費などを差し引く前の総収益額を表しており、手元に残る金額はさらに少なくなります。たとえば年商が2,000万円だった場合、経費や仕入れ原価で1,200万円の支出があれば、純利益は800万円です。また年商は月収や一定期間の売上高とは異なり、1年間の総収入額を表すもので、1年未満の利益を算出したい場合には向いていません。
年商と売上高・純利益・年収との違い

年商と混合されやすい用語として、次のようなものがあります。
- 売上高
- 純利益
- 年収
それぞれの違いについて、詳しく解説します。
年商と売上高との違い
年商と売上高の違いは、対象の期間です。年商が1年間の売上総額を表すのに対して、売上高は1日や1ヶ月など企業や個人事業主が決めた期間の売上を指します。
売上高は設定した期間内に売り上げた利益を算出するため、企業の経営計画や営業目標に使用されます。対して年商は、1年間の売上高を意味しており、年度ごとの業績を見極める際に使用されることが一般的です。
年商と純利益との違い
年商と純利益の違いは、経費や支出を差し引いている点です。純利益は年商から人件費や仕入れ原価、広告費に税金などの経費を差し引いた金額であり、手元に残る利益の総額を意味します。
年商が1年間の売上額総額を指すのに対して、純利益は「実際にいくらの利益を得られたか」を指します。
年商と年収との違い
年商と年収は似た用語で、どちらも1年間の収益を表します。違いは、年商が企業や個人事業主が稼いだ1年間の収益総額であるのに対して、年収は個人が1年間に稼いだ収益の総額です。
年収は会社員と個人事業主で計算方法が異なります。会社員の場合は、税金や社会保険料などを差し引く前の所得を指し、ボーナスや各種手当を含む1年間の収入です。個人事業主の場合は、年商から仕入れ原価や経費などを差し引いた金額が年収になります。
年商を確認する方法

企業の年商がいくらか確認したい場合は、次の方法が効果的です。
- 損益計算書を調べる
- 1年間の売上高総額を計算する
- 有価証券報告書を調べる
損益計算書を調べる
損益計算書は、企業における一定期間の経営成績をまとめた書類です。損益計算書の最上部に「売上高」の項目が記載されています。年商は1年間の売上高総額と同じです。損益計算書の期間が1年間の場合、「売上高」を確認することで年商がわかります。
1年間の売上高総額を計算する
自社の年商を確認したい場合は、1年間の売上高総額を計算することで算出できます。たとえば、1ヶ月に60万円の売上をあげている場合は、「60万円×12ヶ月=720万円」が年商です。
年商は、経費や税金を差し引く前の利益であり、1年間で稼いだ収入額を足すことで求められます。1年間の売上高を調べることで、自社の年商を算出することが可能です。
有価証券報告書を調べる
上場企業の場合は財務諸表に加えて、企業の概況や事業の状況を開示するために、有価証券報告書を公表しています。有価証券報告書には、年商が記載されており、企業のホームページや金融庁が運営する「EDINET」で閲覧可能です。
年商に関する注意点

年商に関する注意点は、次のとおりです。
- 年商額は業種によって差がある
- 年商だけで企業の業績を判断できない
年商について誤った認識をしないために、各注意点を確認しておきましょう。
年商額は業種によって差がある
年商額は業種によって差があるため、目標を決める際は注意が必要です。利益率の高い業種では、年商が低くても十分な純利益を得られます。たとえば、不動産業や技術サービス業など利益率が高い業種では、1件あたりの取引で大きな利益を得られるので、年商目標が少なくても問題ありません。
対して、小売業や卸売業など利益率が低い業種は、1件あたりの利益が少なく、大きな年商目標が必要です。自社の業種に適した利益率を算出して、目標となる年商額を決めましょう。
年商だけで企業の業績を判断できない
純利益など実際に企業が儲けた金額は、年商だけで判断できません。年商は経費を差し引く前の、売上高総額を表しており、実際に手元に残る純利益とは異なります。たとえば年商が2億あった場合、「今年の業績は良い」と勘違いしやすいですが、人件費や材料費が高額な場合は、純利益が低くなります。
そのため企業の業績を判断するなら、年商より純利益を確認しましょう。年商と純利益の双方を確認することで、売上額と手元に残る資金額を把握できます。
年商を増やす方法

年商を増やす方法は、次のとおりです。
- 新規顧客を獲得する
- リピート率を向上させる
- 商品やサービスの販売計画を最適化する
年商を増やすために、上記の施策を実施して業績の向上につなげましょう。
新規顧客を獲得する
年商を増やすためには、新規顧客の獲得が重要です。SNSマーケティングやオウンドメディアを活用したSEO、Web広告の出稿など、新規顧客を獲得するための施策は豊富にあります。
新規顧客を獲得して、ひとりあたりの利益(LTV)を高めれば、企業の年商を向上できます。LTV(顧客生涯価値)を高めるために、新規顧客獲得につながる次の施策を実行してみましょう。
- SEO
- MEO
- Web広告
- テレアポ
- DM配信
- SNSマーケティング
- プレスリリース
- クーポンやサンプルの配布
- インフルエンサーの活用
リピート率を向上させる
新規顧客を獲得するだけでなく、リピート率を向上させることが年商アップにつながります。クーポンの配布やキャンペーンの実施など、顧客が「また利用したい」と思うような施策を実施しましょう。
たとえば初回購入者に、次回の買い物で使える10%オフクーポンを配布すれば、2回目の購入を促進できます。他にも次のような施策を実施すれば、顧客のリピート率を向上し年商アップにつなげられます。
- カスタマーサポートの充実化
- カスタマーサクセスによる購買促進
- 顧客ニーズ調査
- メルマガやDMでの来店誘導
- ポイントカードの配布
- ファンサイトの設立
商品やサービスの販売計画を最適化する
年商を増やすためには、商品やサービスの販売計画を最適化することが重要です。商品価格を見直したり機能や性能を改良したりと、顧客ニーズに沿った販売計画を立案しましょう。
年商アップにつながる販売計画を立案するには、アンケートや口コミを収集して、顧客ニーズの把握を行うことが大切です。顧客ニーズを満たす販売計画を立案できれば、新規顧客の獲得とリピート率の向上を行えます。
まとめ
年商は、企業や個人事業主が1年間に得た総収益を指します。売上高や純利益、年収と混同されやすいですが、売上高は任意の期間の収益、純利益は年商から経費を差し引いた実際の利益、年収は個人の収益です。
また年商を確認する方法として、損益計算書や有価証券報告書の調査が有効です。年商の増加には新規顧客の獲得、リピート率の向上が重要で、各種施策を実施して売上を伸ばすことが求められます。ただし、年商の高低だけで企業の業績を判断せず、純利益もあわせて確認しましょう。
参考
事業経営においては、年商や収益の管理だけでなく、中長期的な財務計画の策定も重要です。
経営の様々な局面で専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な経営判断が可能になります。
経営相談や財務計画について専門家に相談したい方は、以下の記事で紹介しているファイナンシャルプランナー相談サービスもご検討ください。
参考:【ファイナンシャルプランナー相談】経験者へ独自調査‐おすすめ
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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