やっとの思いで起業にこぎつけたものの、1年後、2年後…には、果たしてどれだけの企業が存続している、逆に言うと廃業しているのでしょうか?
追究していくと、そこには、なかなか厳しい現実が待っていました。
では、そういった厳しい実態を生み出す理由は何なのかを探るとともに、その対策についても考えてみましょう。
そして最後に、一度は廃業(倒産)をした人が、新たなビジネスに再挑戦しようとするとき、それを支援する融資制度についてご紹介します。
目次
個人事業主の廃業率
個人事業主の廃業率は以下のとおりです。
事業経過年数 | 廃業率 |
1年後 | 37.7% |
2年後 | 52.7% |
3年後 | 62.4% |
4年後 | 69.5% |
5年後 | 74.4% |
6年後 | 78.6% |
7年後 | 81.8% |
8年後 | 84.4% |
9年後 | 86.6% |
10年後 | 88.4% |
個人事業主として開業した人の約半数が2年以内に廃業しています。10年後の生存率は、わずか約1割ほどとなっています。
なお、個人事業主の事業継続率は、事業経過年数が増加するにつれ、安定する傾向があります。これは、事業を行うなかで知識やスキルを身につけ、失敗する可能性が低下していくためです。
個人事業は、低資金で起業できるため、小さなビジネスを実験的にはじめるのに適していています。まずは個人事業主として開業し、うまくいけば会社を設立すれば良し、逆にうまくいかなければ廃業を選択しやすい事業形態と言えます。
法人の廃業率との比較
同様に、「法人企業の生存率」を見てみると、以下のとおりです。
事業経過年数 | 法人の廃業率 | 個人事業主の廃業率 |
1年後 | 20.40% | 37.7% |
2年後 | 30.30% | 52.7% |
3年後 | 37.20% | 62.4% |
4年後 | 42.90% | 69.5% |
5年後 | 47.30% | 74.4% |
6年後 | 51.30% | 78.6% |
7年後 | 54.90% | 81.8% |
8年後 | 58.30% | 84.4% |
9年後 | 61.40% | 86.6% |
10年後 | 64.10% | 88.4% |
会社を設立した場合、1年で約2割が、5年後には約半数が廃業しています。10年後まで生き残れる企業は、約36%となっています。
個人事業主に比べ、法人のほうが廃業率が低いです。ただこれは、「法人だからうまく行く」のではなく、資金や人材などのリソースが豊富なことで、結果として廃業率・倒産率が低くなっている側面もあります。
もちろん、法人として起業して廃業に追い込まれれば、それまでに投じた多くのリソースがムダになるリスクもあります。そのため、起業に際して、個人事業・法人企業のどちらを選ぶべきかは、個々の状況や事業の規模、目的などに応じて多方面から検討していくことが大切です。
個人事業主の生存率が低くなってしまう理由
ここでは、法人よりも個人事業主の生存率が低くなる理由を紹介します。
資金不足
一般的に、個人事業主は法人よりも資金不足に陥りやすいです。これにはさまざまな要因がありますが、特に大きいのは、資金調達が難しいためです。
個人事業主は法人よりも社会的信用力が低く、融資では不利に働く傾向があります。融資を受けられても、金利が高かったり、金額が少なかったりします。
事業を行うには、事務所の賃借料や人件費、商品の仕入れ費用など、さまざまなコストが継続的に発生します。仮に資金不足に陥った際、外部から調達できなければ、資金が底をつき廃業・倒産する確率が高まります。
財務の知識不足
個人事業主で起業する方のなかには、十分な財務の知識をつけないまま事業を始める方も一定数存在します。納税と節税、確定申告、売上と経費など、財務の知識が不足していると、必要以上に納税していたり、売上はあっても利益が残らなかったりします。
また、上記の問題は、事業の経過年数が増えるにつれ深刻化するものです。結果、十分な利益を確保できず、廃業に追い込まれます。
営業力の弱さ
営業力の弱さから廃業に追い込まれるケースも多く見られます。営業力が弱いと、仕事を獲得できませんし、なんとか取れても悪条件の仕事が多くなります。
このような状況では、安定した売上を確保しづらく、事業を継続できません。
なお、ここでいう営業力とは、個人のスキルのみならず、営業に充てられる時間や事業の信用力なども含みます。仮に、優れた営業スキルがあっても、ほかの業務との兼任で十分な時間を避けなければ、仕事の獲得は難しいでしょう。また、他社との競争になった場合、事業の信用力が劣れば、案件を獲得できません。
個人事業主は、リソースや信用力の面で法人に劣るため、仕事を獲得するための戦略が必要です。
急激な事業拡大
当初の計画どおりに、あるいは予想を上回る勢いで業況が拡大していった場合、よくありがちなのが、さらなる増収を狙って従業員を増やしたり、会社の規模を広げたりすることです。
しかし、事業の好不調には波があるもので、順調なときばかりではありません。何らかの理由で業況が下降した場合、先に実施した事業拡大の施策が裏目に出て、資金繰りを圧迫する恐れがあります。
勢いに任せた事業拡大が原因で、廃業に追い込まれるケースもあるので注意が必要です。
個人事業主が生存率・成功率を高めるポイント
生存率が低いとされる個人事業主ですが、やり方次第で事業の成功率を高められます。具体的には、以下5つのポイントを押さえることが大切です。
- 固定費を抑える
- 十分な資金を確保する
- 事業計画がうまくいかなった場合の代替案を準備しておく
- 手堅く堅実に行動し、リスクを回避する
- ライバルの少ない分野を開拓する
ここでは、上記ポイントの重要性と実行するための手段を紹介します。
固定費を抑える
起業したばかりで売上が安定しない時期は、固定費をできるだけ抑えることが重要です。固定費が高いと、売上を確保できても利益が残らなくなる恐れがあるためです。
また、人件費や家賃・水道光熱費などを抑えられれば、浮いた資金を、設備投資や有料セミナーへの参加費、書籍購入費等に充てられます。より重要度の高い部分へ投資できれば、事業の成功率が高まります。そのため、起業後はなるべく固定費をかけないようにしましょう。
なお、事務所の家賃を抑えるには、バーチャルオフィスやレンタルオフィスがおすすめです。一般的な賃貸オフィスは、月額数十万円ほどかかりますが、上記サービスなら月額数千〜数万円で事業用の住所または作業スペースを借りられます。
弊社バーチャルオフィス1では、東京都渋谷区と広島県広島市の2拠点でバーチャルオフィスを提供しています。月額880円~と非常にコスパに優れたサービスなので、興味がある方はホームページをご確認ください。
十分な資金を確保する
起業後の早期廃業を回避するには、十分な資金を確保する必要があります。前述のとおり、起業直後は売上が安定せず、準備資金で事業を運営するケースが多いです。
仮に準備資金が少ないと、軌道に乗るまで事業を継続できず、廃業に追い込まれる恐れがあります。そのため、売上がなくとも半年〜1年は事業を継続できるだけの資金を用意しておきましょう。
なお、自己資金で賄えない場合は、以下の資金調達方法がおすすめです。
- 日本政策金融公庫の創業融資
- 自治体の融資
- 補助金や助成金
- クラウドファンディング
とくに、日本政策金融公庫の「創業融資」は、無担保・低利率で資金を借りられる可能性があります。また、融資限度額も7,200万円(うち運転資金4,800万円)と高額なため、多くの資金を調達したい方はぜひご検討してみてください。
事業計画がうまくいかなった場合の代替案を準備しておく
自分の想定どおりに進まないのが常だと心得て、思いどおりにいかなった時の対応策、改善策をいくつか用意しておきましょう。いざという時に冷静に対処でき、事業の生存率を高められます。
なお、事業計画や代替案を考える際は、第三者の意見も取り入れるのがおすすめです。自分では気付けなかった問題点や、新たな起業アイデアが得られる可能性があります。また、自分の固定観念に気づけるため、より成功率・実現性の高い事業計画を立てられます。
手堅く堅実に行動し、リスクを回避する
リスクを避け、手堅く行動することで生存率を高められます。起業後よくやりがちなのが、売上が安定する前に過度な設備投資を実施したり、従業員を増やしたりすることです。
これらにはメリットもありますが、当然リスクもあります。万が一の事態に陥ると、資金繰りが立ち行かず、廃業に追い込まれる可能性もあるので注意が必要です。
事業を成功させるには、不要なリスクをできるだけ避け、成果を最大化していきましょう。
ライバルの少ない分野を開拓する
個人事業主が成功するには、ライバルの少ない分野を開拓するのが効果的です。起業直後の個人事業主は、法人や先行企業よりも資金力や信用力で劣るため、真っ向から勝負すれば負けます。
ただ、ライバルの少ない分野であれば、過度な競争にさらされず、事業を軌道に乗せやすいです。そのため、起業する際は市場を細かく分析し、ライバルの少ない分野や競争で勝てる分野を見つけましょう。
なお、開拓する分野を見つける際は、以下のポイントを分析するのがおすすめです。
- 登場したばかりの新しい分野
- 大手が手を出さないニッチな分野
- 自分の経験が活かせる分野
- フリーランス・小規模事業者が多い分野
さまざまな角度から分析し、参入する分野を検討してください。
廃業してもやり直せる「再挑戦支援資金・保証」とは
過去に倒産歴のある経営者などが新たなビジネスに挑むとき、金融機関は融資になかなか応じない傾向にありました。
しかし近年では、こうした慣習は是正され、過去に倒産や廃業を経験した経営者に対し、ハードルは低くはありませんが、国や自治体、民間金融機関では、再チャレンジを支援する融資制度を用意しています。
そのうちの、ごく一部の制度をご紹介します。
日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」
再挑戦支援資金は、過去に廃業歴のある人を対象にした融資制度です。本制度の概要は、以下のとおりです。
制度名 | 再挑戦支援資金 |
対象者 | 新たに開業する方または開業後おおむね7年以内の方で、次のすべてに該当する方 ・廃業歴等を有する個人または廃業歴などを有する経営者が営む法人であること ・廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みなどであること ・廃業の理由・事情がやむを得ないものなどであること |
融資限度額 | 7億2千万円 |
返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) ・運転資金:15年以内(うち据置期間2年以内) |
本制度では、旧債務返済の見込みが立っていること、また経営者自身が過去の失敗とどう向き合っているかなどが、重要なポイントです。それゆえ、事業計画や資金計画などは入念に検討を加え、準備しておくことが大事です。
参考:日本政策金融公庫「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」
信用保証協会による「再挑戦支援保証」
再挑戦支援保証は、過去に廃業経験のある創業者が融資を受ける際に、信用保証協会という公的機関が債務保証を行うことによって、再チャレンジしたい人が借入をしやすくするために支援する制度です。
制度名 | 再挑戦支援保証 |
対象者 | 事業を廃止または会社を解散してから5年以内であり、かつ以下いずれかに該当する人 ・事業を営んでいない個人で、1ヶ月以内に新たに事業を開始する人 ・事業を営んでいない個人で、2ヶ月以内に法人を設立し、新たに事業を開始する人 ・事業を営んでいない個人が事業を開始してから5年未満 ・事業を営んでいない個人が設立した法人で、設立後5年未満 ・事業を営んでいない個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満 |
保証限度額 | 3,500万円 |
本制度は、5年以内に事業を廃止した人や会社の解散を経験した人で、これから事業を始める人を対象にしています。したがって、一度事業に失敗したあと、個人事業主として事業を始めてしまった人は、利用することができません。
参考:一般社団法人 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」
まとめ
本記事では、個人事業主の廃業率を紹介しました。起業2年後には約半数が廃業し、10年存続できるのは、約1割ほどです。
割合のみを見ると、非常に成功するのが難しく思いますが、実際に個人事業主・フリーランスとして長年活躍する方もいます。これから起業する予定の方は、本記事で紹介した5つのポイントを押さえ、事業の生存率・成功率を高めましょう。
当メディアを運営するバーチャルオフィス1では、東京都渋谷区と広島県広島市の2拠点で、バーチャルオフィスを運営しております。月4回の郵便物転送込みで、880円/月~の料金です。
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この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
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この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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