「訂正印ってどう押せば良いの?」と、正しい使い方を知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、以下の内容について詳しく解説します。
- 訂正印の正しい押し方や使用方法
- 訂正印に関する注意点
- 訂正印の選び方
最後まで読んで正しいビジネスマナーを身につけましょう。
目次
訂正印とは?
訂正印とは、契約書などの重要書面を一部修正する際に押すハンコのことです。訂正印は、契約書の他に履歴書や伝票など、ビジネスシーンで活用する書類に使用します。訂正印を押して修正箇所を訂正することで、「文書を訂正した人物」を明確にし、他社による文書改ざんのリスクを防止します。
訂正印は、誰がどの文言を削除・訂正・追加したかを可視化するため、一定のルールを遵守しなければなりません。ビジネスシーンで活用できる訂正印の押し方を知っておきましょう。
訂正印と認印の違い
訂正印と混合されやすいハンコの種類として認印がありますが、訂正印と認印に大きな違いはありません。
訂正印が文書を訂正する際に押すハンコであるのに対して、認印は「確認しました」と承認した旨を伝えるために押すハンコです。どちらも役所や銀行に届け出る必要はなく、同一のハンコを訂正印と認印として使えます。
明確に定められているわけではありませんが、訂正印と認印では推奨されているサイズが異なります。訂正印は6mm程度が標準サイズ、認印は10mm程度を標準サイズとしているケースが一般的です。訂正印が大きいと文書が読みにくくなってしまうため、訂正印のほうが認印より一回り小さくなっています。
とはいえ、先述の通り訂正印と認印の違いは明確に定められていません。実印や銀行印を頻繁に使用したくない方や、シャチハタではなく訂正印として使用しやすいハンコをひとつ持っておきたい方は、訂正印を作っておくと便利です。ただし、必ず作らなければならないハンコではないので、業務上の必要性を考えて新たに訂正印を作るべきか検討しましょう。
訂正印の注意点
訂正印を作っておけば、帳簿や履歴書など社内で使用する文書を訂正する際に便利です。しかし契約書や公的文書など法的効力がある文書を訂正する際には、書類に押印したハンコと同じものを訂正印として使用しなければなりません。
社内で使用する文書であれば、押印したハンコと訂正印が違うハンコでも問題ありませんが、公的文書などの重要文書の場合は同一のハンコを使用する必要があります。なぜなら訂正印は「自分が訂正しました」と意思表示をする意味があり、押印したハンコと異なるものを訂正印として使用した場合、改ざんの疑惑が生まれるからです。
訂正印を作っても重要文書には使用できないので、書類の種類によって使用するハンコを使い分けましょう。
訂正印で文字や数字を訂正する方法
訂正印を使用するタイミングとして、次のような場面が挙げられます。
- 文字を修正したいとき
- 文字を追加したいとき
- 文字を削除したいとき
- 数字を訂正したいとき
- スペースが足りないとき
- 2名以上の捺印がある書類のとき
訂正印を使用する場面によって、正しい押し方が変わります。ビジネスマナーを守るために、場面ごとの訂正印の押し方を確認しておきましょう。
①文字を修正したいとき
訂正印を押すタイミングとして、文字を修正したいときが一般的です。住所や会社名・名前などを重要書面に記載する際に、誤って書いてしまった文字を修正するときに訂正印を使用します。
文字を修正する際には、文書が横書きか縦書きのどちらかで、訂正印の押し方が変わります。それぞれの押し方は以下のとおりです。
横書きの場合
横書きの文章が誤っている場合には、誤った文字に二重線を引きます。二重線で削除した文字の上部に正しい文字を書き、二重線に重ねるように訂正印を押すか、訂正箇所の周辺に訂正印を押してください。
さらに訂正した文字数と追加した文字数を、訂正印の近くに記入します。たとえば、「削除3文字 追加3文字」のように、訂正した文字数を明記します。
また文書を訂正する際には、語句のまとまりごとに修正しましょう。たとえば、「東区」から「西区」へ修正する場合、「東」を「西」に書き変えるだけで訂正ができますが、「東区」の二文字を削除して「西区」の二文字を追加したほうが見やすくなります。
縦書きの場合
縦書きの文書で文字を修正したい場合も、横書きのときと方法はほとんど変わりません。修正したい文字に二重線を引き、その右側に正しい文字を記載します。そして二重線に重ねるように訂正印を、もしくは訂正箇所の周辺に訂正印を押せば修正完了です。
最後に修正した文字数と追加した文字数を「削除3文字 追加3文字」のように、修正箇所の近くに記載しましょう。文字を修正したいときには、修正したい文字に二重線を引いて正しい文字を追加しますが、文字を追加する場所には優先順位があります。
優先順位 | 横書きの場合 | 縦書きの場合 |
---|---|---|
1 | 上 | 右 |
2 | 下 | 左 |
3 | 右 | 上 |
4 | 左 | 下 |
文書が縦書きか横書きどちらの形式かで、文字を追加する場所の優先順位が変わるので、正しい訂正方法を把握しておきましょう。
②文字を追加したいとき
文字を追加したいときには、文字を加えたい場所に「∨」を書き足します。「∨」の上部に追加したい文字を書き足して、文書に文字を追加する旨を示します。追加した文字の横に訂正印を押して、追加した文字数を「1文字追加」のように記載しましょう。
なお文書が縦書きの場合は、横書きのときと同様に「<」を記載して文書を追加します。追加した文字の上部に訂正印を押して、追加した文字数を記載すれば、文字の追加が完了です。
③文字を削除したいとき
文書が誤っていて文字を削除したいときは、文字を修正するときと同じように、削除したい文字を二重線で消します。二重線の上部に訂正印を押して、「2文字削除」と削除した文字数を書けば、文字の削除完了です。
④数字を訂正したいとき
数字を訂正したいときには、修正する数字を二重線で消します。「¥40,000‐」を「¥400,000‐」に修正したい場合は、「0」を書き加えるのではなく、まず「¥40,000‐」を二重線で消しましょう。二重線で消した数字の上部に、正しく書き加えたい数字を追加して、近くに訂正印を押してください。
なお数字を訂正したいときにも、削除した文字数と追加した文字数を記載する必要があります。この際に、金額で使用される「¥」や「,」「‐」なども一文字として扱います。つまり「¥40,000‐」を「¥400,000‐」に訂正した場合は、「削除8文字 追加9文字」と記載して、数字の訂正完了です。
⑤訂正印を押すスペースが足りないとき
文字や数字を修正したいときに、訂正箇所周辺に訂正印を押すスペースが足りないケースがあります。訂正印や「削除◯文字 追加◯文字」と記載するスペースが足りない場合は、書類のなかで空いているスペースに記載しましょう。
修正箇所から離れた場所に訂正印や訂正した文字数を記載しても、法律上は問題ありません。
⑥2名以上の捺印がある書類のとき
契約書など2名以上が捺印して、契約を進めている書類を訂正する場合には、署名や捺印をした人物分の訂正印を押さなければなりません。2名以上の捺印がある書類では、訂正印を押す際に、全員分の訂正印を用意して訂正箇所に押してください。
訂正印は書類に関わる人物が訂正したことを示す証なので、書類に署名・捺印している全員が訂正を了承している旨を示す必要があります。複数人の署名・捺印がある書類を訂正する場合は、捺印した人数分の訂正印を押しましょう。
訂正印でハンコの押し間違えを訂正する方法
訂正印は文字や数字の書き間違えを修正する場合が多いですが、ハンコを押し間違えたケースにも使用できます。ハンコの押し間違えが起きるパターンとして、次のケースが考えられます。
- 押す場所を間違えたとき
- 押すハンコを間違えたとき
- 押す向きを間違えたとき
- 綺麗に押せなかったとき
パターンごとの訂正方法を確認して、ハンコを押し間違えた際の対処法を把握しておきましょう。
①押す場所を間違えたとき
ハンコの押す場所を間違えたときは、間違えて押してしまったハンコを二重線で削除します。ハンコの押す場所を間違えた旨を示すために、二重線で消したハンコに被せて訂正印を押しましょう。また、訂正印を押す際には、もともと押してある間違いのハンコも見えるよう、少しずらして押してください。
押し間違えたハンコを訂正した後は、本来押すべきだった正しい場所に新しくハンコを押しましょう。これにより、「ハンコを押し間違えましたが、正しい場所に押し直しました」と訂正した旨を示せます。
②押すハンコを間違えたとき
「実印と間違えて認印を使用してしまった」など、押すハンコを間違えるケースがあります。使用するハンコを間違えたときには、押し間違えたハンコを二重線で消してください。その後、削除したハンコと少しずらして訂正印を押します。
訂正印を押した横に正しいハンコを捺印して「ハンコを間違えましたが、こちらが正しいハンコです」と、訂正した旨を印しましょう。
③押す向きを間違えたとき
ハンコの押し間違えとして多いケースが、押す向きを間違えることです。逆さまや角度が歪んだことにより、真正面で捺印できなかった場合は、正しい向きで新しく捺印する必要があります。
押す向きを間違えたハンコに二重線を引いて、訂正印を押すことで既存のハンコを削除しましょう。その後、訂正印の横に正しい向きでハンコを捺印して、訂正完了です。
④綺麗に押せなかったとき
「ハンコに朱肉がしっかりついていなかった」「力加減を誤った」など、ハンコを綺麗に押せなかった場合も、ハンコを訂正して押しなおす必要があります。インクがかすれたりにじんでしまったりと、綺麗に捺印できなかったハンコを二重線で消しましょう。
二重線で消した後は、隣に新しくハンコを捺印して訂正完了です。ハンコを綺麗に押せなかった場合は、訂正印を使用せず二重線で既存のハンコを消して、新しく押し直せば訂正が完了します。
訂正印の選び方
訂正印の選ぶ際には「シャチハタでも良いの?」「実印は使わないほうが良い?」と、ハンコの種類に悩む方も多いのではないでしょうか。訂正印には明確な規定がないので、シャチハタや実印を訂正印として使用しても問題ありません。ただし、重要文書・公的文書には押印したハンコと別のハンコを使用できないので注意しましょう。
以下では、訂正印にふさわしいとされるハンコの種類について紹介します。訂正印として使えるハンコをひとつ準備しておけば便利です。訂正印を選ぶ際には、次のポイントを押さえて、訂正印として使えるハンコを用意しておきましょう。
- サイズ
- 刻印内容
- 書体
- ハンコの種類
サイズ
訂正印は、どのような大きさのハンコを使用しても、特に問題はありません。しかし訂正印は、書類のスペースが空いている箇所に押すことが多いため、できるだけ限られたスペースにも押せる小さいサイズが向いています。
おすすめのサイズは、6mm程度の丸形ハンコです。6.5mmの楕円形ハンコなど、形やサイズは自由に選んでも問題ありませんが、悩んだ際には6mmの丸形ハンコを訂正印として選びましょう。
刻印内容
訂正印に刻印する内容は、苗字(姓)を記載しましょう。フルネームのハンコを訂正印として使用するケースもありますが、6mmの小さな面積では文字数が多いフルネームだと読みにくくなります。
苗字のみを刻印しておけば、6mm程度のハンコでも可読性が高く、綺麗に押せます。ハンコの種類によっては、サイズごとに刻印できる文字数が制限されているので、刻印内容は苗字のみにしておきましょう。
書体
訂正印として使用するハンコは、できるだけ読みやすい書体を採用するべきです。実印に使用するような書体ではなく、「古印体」や「隷書体」などの読みやすい書体を選びましょう。
訂正印は「誰がハンコを押したものか」をスムーズに判断できる書体が望ましいため、読みやすさを重視してハンコを選ぶことが大切です。
ハンコの種類
一般的にハンコの種類は、インクを染み込ませたシャチハタ式である「浸透印」と、朱肉をつけて使用する「朱肉式」の2種類があります。どちらの種類を訂正印として使用しても問題はありませんが、それぞれにメリット・デメリットが異なります。訂正印として使用するハンコの種類で悩んだ方は、浸透印・朱肉式それぞれのメリット・デメリットを比較して、どちらを採用するべきか検討しましょう。
浸透印のメリット・デメリット
【浸透印のメリット】
- 朱肉を持ち運ばなくてもハンコを押せるため、楽に使用できる
- 朱肉を拭き取ったり紛失したりする管理の手間がかからない
- ハンコ本体と朱肉が連帯しているため、衣服や書類を汚しにくい
【浸透印のデメリット】
- 朱肉式と比較して印面の劣化が早い
- インクが切れた後、補充しなければならない
- 公的文書などの重要書面によっては使用できないケースがある
朱肉式のメリット・デメリット
【朱肉式のメリット】
- 浸透印より劣化しにくく、耐久性が高い
- 綺麗に捺印しやすい
- 公的文書を含むすべての書類に使用できる
【朱肉式のデメリット】
- 押印する度に朱肉を使用しなければならない
- 朱肉を持ち運ぶ手間がかかる
- 使用後にインクを拭き取らなければ汚れてしまう
訂正印について知っておくべきポイント
訂正印の押し方やハンコを押し間違えたときの対処法を把握しておけば、ビジネスシーンでハンコを使用する際に適切な対応ができます。
- 重要文書や公的文書は押印に使用したハンコを訂正印として使用する
- 電子契約では訂正印を使用できない
訂正印について知っておくべき上記のポイントを確認して、正しいビジネスマナーを身につけましょう。
重要文書や公的文書は押印に使用したハンコを訂正印として使用する
訂正印は、伝票や帳簿・履歴書など社内で使用する文書を訂正する際に活用できます。従来のハンコより小さいサイズなので、空いたスペースに押しやすく訂正しやすいです。
しかし冒頭でも解説した通り、契約書などの重要文書や公的文書を訂正する際には、押印に使用したハンコと同じものを使用する必要があります。なぜなら、署名・捺印の欄に使用したハンコと同じものを使用しなければ、訂正印として認められないからです。
訂正印はあくまで「書類の関係者が文書を誤った旨を示すハンコ」なので、押印に使用したハンコと同じものでなければ、別人が改ざんした疑いが生まれます。そのため、起訴などに発展した際に、押印と異なるハンコで訂正印を押していた場合は、法的効力が認められない可能性があります。
そのため、契約書などの重要文書を訂正する際には、捺印に使用した実印や銀行印を訂正印として使用しなければなりません。
電子契約では訂正印を使用できない
近年は紙の書類による契約ではなく、システム上で契約を締結する電子契約が普及しています。電子契約の場合は、訂正印による訂正はできません。
電子契約での捺印は電子ハンコなので、誰でも簡単に押印ができてしまいます。そのため、電子契約で訂正印を認めてしまうと、容易に文書を改ざんできてしまうため、訂正印の使用が認められていません。
さらに電子契約では、一度合意された契約書を訂正・破棄できない仕組みです。一度締結した契約を破棄・訂正したい場合は、取引相手と相談して一旦契約を解除しなければなりません。双方の合意のうえで契約を解除し、修正した電子契約で新たに契約を再締結すれば、電子契約を訂正できます。
まとめ
訂正印は、文書の内容を訂正したい場合に押すハンコです。文字を修正・追加・削除する場合に使用するケースが多く、二重線で文言を削除してから訂正印を押す、という押し方が一般的です。
また訂正印はシャチハタ式の浸透印と、朱肉を使用する朱肉式のどちらを使用しても問題ありません。ただし浸透印と朱肉式には、それぞれメリットとデメリットが異なるので、どちらを使用するべきか特徴を比較検討しましょう。
なお、訂正印は帳簿や伝票を訂正する際に便利ですが、契約書などの重要文書を訂正する際には押印に使用したハンコを訂正印として使用しなければなりません。文書を正しく訂正できるように、正しいビジネスマナーを身につけておきましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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