起業は9割失敗するという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。多くの起業家たちが夢見る独立への道ですが、失敗を避けるために知っておくべき現実もあります。成功を収める事業がある一方、過大投資や見立ての甘さなど、さまざまな理由により起業の失敗に至るケースは少なくありません。
本記事では、起業が失敗する要因とその対策や、起業が失敗する人の特徴を紹介します。また、起業で失敗しないためのポイントも解説しています。
この記事を最後まで読めば、起業する際に陥りやすい失敗を理解して、起業で失敗するリスクを最小限に減らすことが可能です。起業が失敗する確率を減少させ、起業家が直面する可能性のある課題や失敗の乗り越え方を知りたい人はご覧ください。
目次
起業が失敗する確率
起業が失敗する確率を明らかにする場合、「何をもって失敗とするのか」によってその数値は異なります。本記事では「5年以内に廃業した場合を失敗と定義する」という前提のもと、起業失敗の確率について考察します。
中小企業庁による2017年の中小企業白書によると、日本におけるスタートアップの1年後の生存率は95.3%に達しており、3年後には88.1%、5年後には81.7%です。今回の5年以内に廃業した場合を失敗と定義したうえでは、起業の失敗率は20%といえます。
約8割の企業が成功していると考えると、諦めずに起業に挑む価値はあるでしょう。
起業が失敗する理由とその対策方法
次に、起業が失敗する理由を紹介します。具体的な要因は以下の通りです。
- 過大投資
- 甘い見通し
- 資金不足
- 人手不足
- 経営者としての自覚不足
ひとつずつ解説していきます。
過大投資
過大投資は、起業が失敗する要因のひとつです。過大投資とは、必要以上に多くのお金やリソースを投入することで、財務的な圧力が高まり、ビジネスのリスクが増加することを指します。たとえば、新しい店舗の建設や大幅な改修、高価な機械の購入、新工場の建設など、さまざまな形で過大投資が起こり得ます。
過大投資を避けるためには、実現可能で詳細なビジネスプランの作成が重要です。また、市場の動向や顧客の好みを考慮し、徹底したシミュレーションに基づいて投資を行うことが必要となります。
次に、過大投資による起業の失敗を防ぐための具体的な対策を紹介します。
過大投資への対策1:小規模からのスタート
過剰投資を避けるためには、小規模からのスタートが効果的です。初期投資を抑えてスタートすることで、財務的な負担や長期的な事業維持ができなくなるリスクを軽減できます。
また、小規模・少ない人数で計画を進める場合、意思決定や変更の承認が迅速に行えるため、計画に変更を加えることが比較的容易です。変更に必要な費用や時間も比較的少なくて済み、修正コストが低くなりやすいでしょう。初期投資を抑えてビジネスの基盤を固めた後、段階的に拡大していくことも可能です。
過大投資への対策2:お金の流れの監視
過剰投資を防ぐためには、お金の流れを注意深く監視することが効果的です。お金の出入りをよく監視することで、投資に対する自社の経済的な力とこれからの成長の可能性をチェックできます。
具体的な対策としては、会社の財務状況を定期的に確認して、資産や負債、利益率などをきちんと把握しましょう。また、お金が会社にどのように流れ込み使われているのかを確認して、無駄な出費を抑えるように努めてください。
これらのステップを踏むと、より良い財務判断をしながら必要以上の出費を削減でき、事業を長期的に成長させる基盤を築けます。
過大投資への対策3:専門家からのアドバイスの活用
過剰投資を避けるためには、ビジネスメンターからの専門的なアドバイスを求めることが効果的です。
ビジネスメンターは経験に基づいた意思決定や資源の活用について指導し、過剰投資の落とし穴を避ける手助けをします。ビジネスメンターのアドバイスを受けることで、起業家は失敗や成功から学び、実践的な戦略に変換できます。
甘い見通し
甘い見通しは、起業が失敗する原因のひとつです。
ここでの甘い見通しとは、必要な時間やリソースを過小評価する傾向のことで、起業家が実際よりも短期間で目標を達成できると考えてしまうことが含まれます。起業家は甘い見通しを避けるために、タスクにかかる実際の時間を適切に見積もり、計画を立てることが重要です。
また、甘い見通しによる起業の失敗を防ぐためには、次の戦略が効果的です。これらの戦略を実行することで、起業家は「計算ミス」を避け、より現実的な見通しを持つことができるようになります。
甘い見通しへの対策1:最小または最悪のシナリオを考慮する
甘い見通しを避けるためには、最小または最悪のシナリオを考慮することが効果的です。
起業失敗の主な理由には、事業やプロジェクトを始める際に必要な資金の不足、顧客獲得や販売スキルの欠如、組織上の問題、不注意な経営が含まれます。最小または最悪のシナリオを考慮することで、これらのリスクを把握し、対策ができます。
たとえば、事業計画を立てる際に、最小の売上予測や最悪の財務シナリオを考慮してください。それに基づいて資金調達やリスク管理の計画を立てましょう。このような取り組みは、起業家が甘い見通しを避けてリスクを適切に評価し、成功に向けて現実的な対策を講じるうえで重要なステップです。
甘い見通しへの対策2:自分自身を機械と見なさない
甘い見通しを避けるためには自分自身を機械と見なさず、ゆとりを持った見通しを立てることが大切です。
人間は時間やリソースを過小評価する傾向があり、機械のようにいつも同じスピードで業務をこなせるわけではありません。限りある時間や自分のリソースを適切に考えて、リアルな計画を立てましょう。
資金不足
起業が失敗する一因として、資金不足が挙げられます。起業には初期投資が必要であり、資金不足は事業の成長や生存に大きな影響を及ぼします。たとえば、機器、在庫、広告などへの投資が必要です。資金不足によりこれらに投資できないと、起業が失敗してしまうリスクが高まります。
資金不足を克服するためには、キャッシュフローの管理が不可欠です。キャッシュフローとは、企業における現金(キャッシュ)の流れ(フロー)のこと。将来のキャッシュフローを予測し、効果的な資金調達の戦略を立てましょう。
資金不足による起業の失敗を防ぐためには以下のような戦略が効果的です。
資金不足への対策1:予算計画と計画の最適化
資金の流れを管理し、将来の財政的なニーズに対応するためには、予算計画が不可欠です。
資金不足への対策2:債権と債務の最適化
請求書の回収を早めることや、支払い条件の交渉を通じて、キャッシュフローを改善しましょう。
資金不足への対策3:在庫管理の合理化
不要な在庫を減らし、必要な在庫を適切に保持することで、資金を有効に活用できます。
資金不足への対策4:外部資金の活用
クラウドファンディングや助成金など、さまざまな資金調達オプションを探ることで、資金不足を克服できます。
資金不足への対策5:コスト削減と収益増加
コストの削減と収益の増加により、キャッシュフローを積極的に改善します。
資金不足への対策6:財務指標の監視と改善
財務指標の監視と改善を行うことで、将来の現金の流れをシミュレートすることが可能です。時間の経過とともにキャッシュリソースがどのように変化するかを理解できます。
人手不足
起業が直面する問題のなかで、人手不足は特に深刻な課題となっています。
2023年4月に帝国データバンクが行った調査によると、日本の企業の過半数(51.4%)が正社員の人材不足に悩まされており、人材不足は起業の失敗リスクを高める要因のひとつです。
参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)| 株式会社 帝国データバンク
人手不足は、業務の遅延、顧客サービスの質の低下、そして従業員の過重労働につながる可能性があります。これらはすべて企業のブランドイメージや収益性に影響を与えかねません。
人手不足による起業の失敗を防ぐためには、具体的に以下のような戦略が効果的です。
人手不足への対策1:人材確保への取り組み
代表的な人材確保への取り組みとして、インターンシッププログラムの導入や柔軟な労働条件の設定などが挙げられます。また、外国人労働者の雇用やリモートワークの促進など、多様な労働力を取り入れることも有効です。
人手不足への対策2:技術と自動化の活用
業務の自動化やAI技術の導入により、労働集約的な作業を削減し、従業員をより戦略的な業務に配置することが可能となります。たとえば、顧客サービスにおけるチャットボットの使用や、生産ラインのロボット化などが挙げられます。
人手不足への対策3:社内教育とスキルアップ
従業員のスキル向上は、起業失敗のリスクを減らすためにも重要です。たとえば、従業員の技術や業務スキルを向上させるための、専門的なトレーニングプログラムを実施することが効果的です。
経営者としての自覚不足
経営者としての自覚が不足していると、企業のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがあります。経営者が目的意識、ビジョン、戦略、顧客志向、管理スキル、知識、そして人間性を欠いている場合はなおさらです。これらの不足は、組織全体のパフォーマンス低下につながる可能性があります。
経営者の行動や特質は、従業員の士気やモチベーションに大きく影響を与えます。以下は、経営者が避けるべき6つの悪い習慣です。
- 特別な地位を無視する: 経営者は自身の影響力を認識し、それに見合った責任を果たすべきです。
- 直感に頼る意思決定: 論理的な思考とデータに基づいた意思決定が重要です。
- すべてを理解しようとする: すべてを把握することは不可能であり、チームメンバーのスキルを活用することが効果的です。
- 失敗の責任を従業員に押し付ける: リーダーとしての責任を受け入れ、チーム全体の成長に貢献する姿勢が求められます。
- 正しい決定をすることに焦点を当てる: 時には迅速な意思決定が必要であり、完璧を求めることは避けるべきです。
- 現実を無視して理想に焦点を当てる: 現実を直視し、適応することが成功への鍵です。
経営者としての自覚を高めるためには、リーダーの資質についての理解と自己認識の向上が必要です。
起業に失敗する人の特徴
次に、起業に失敗する人の特徴を紹介します。
- 適切な目標設定能力が不足している人
- 計画と実行スキルが不足している人
- コミュニケーションスキルが欠如している人
- 論理的思考能力が不足している人
- 顧客志向が欠如している人
- 資金計画が入念でない人
- 起業すること自体をゴールと考えている人
次では、それぞれについて解説していきます。
①適切な目標設定能力が不足している人
適切な目標設定ができないと、起業に失敗する確率が高まります。起業家にとって、明確で現実的な目標設定は欠かせません。明確なビジョンと方向性がなければ、長期的に前進し成功を収めることは難しいでしょう。
②計画と実行スキルが不足している人
起業に失敗する人の特徴として、計画性と実行力の欠如が挙げられます。起業には綿密な計画と綿密な実行が必要です。
このようなスキルがない場合、起業家は整理整頓、タスクの優先順位付け、期限の厳守に苦労することになるでしょう。これは非効率につながり、最終的には事業の成長を妨げることになります。
③コミュニケーションスキルが欠如している人
コミュニケーションスキルが欠如しているのもまた、多くの成功しない起業家に欠けている重要な特徴です。
顧客、従業員、ビジネスパートナーと明確かつ効果的なコミュニケーションができることは重要です。コミュニケーションスキルは人間関係を築き、市場での存在感を確立するために欠かせません。
コミュニケーションが上手くいかないと、誤解や衝突を招き、チャンスを逃すことになります。
④論理的思考能力が不足している人
論理的思考力も起業には欠かせません。状況を分析し、問題を特定し、論理的な解決策を導き出せることは、正確な意思決定を行うために不可欠です。このようなスキルが欠けている人は、ビジネス運営に困難を感じるかもしれません。
⑤顧客志向が欠如している人
成功するビジネスは、顧客を理解し、そのニーズに合った製品やサービスを提供しています。顧客志向が欠如している場合、この視点が足りていません。
顧客を重視していない人は、顧客を引きつけ、維持するのに苦労するでしょう。常に顧客からのフィードバックに耳を傾け、ニーズに基づいて改善を行うことが重要です。
⑥財務計画が入念でない人
入念でない財務計画も、起業で失敗する多くの人に欠けている重要な特徴です。適切な財務計画を立てなければ、ビジネスは負債や現金不足、全体的な財務の不安定さに悩まされるかもしれません。
起業家は、情報に基づいた財務上の決定を下すために、経費、収入、キャッシュフローを明確に理解する必要があります。
経費削減には互換インクもおすすめです。
参考:エプソンEW-052A互換インク|インク革命.COM
⑦起業すること自体をゴールと考えている人
起業家になることを単なるゴールと捉える人は、市場調査やビジネスプランの重要性を軽視し、失敗の可能性を高めてしまいます。起業をゴールと考えている人は、準備や市場理解なしに急いで起業し、成功するためのプロセスや努力を理解していないからです。
起業後に成功するためには、市場のニーズを理解して独自のサービスを開発し、顧客に価値を提供できることが大切です。
起業が失敗しないためのポイント
最後に、起業が失敗しないためのポイントを紹介します。
- リスクが低い業種で始める
- 事前準備を徹底する
- 副業から始める
それぞれの内容について見ていきましょう。
リスクが低い業種で始める
1つ目は、リスクが低い業種で始めることです。リスクの低い業界で起業するということは、成功確率の高い事業を選ぶことを意味します。つまり、すでに確立され、安定した顧客基盤を持つ業種を選ぶことが重要です。
たとえば、まったく新しい商品・サービスを開発して販売するより、超高齢社会に突入している日本社会において需要が高い、訪問介護事業を始めるほうが安全だといえます。リスクの低い業界に参入することで、不必要な競争を避けることができ、顧客を引き付けるチャンスも増えます。
事前準備を徹底する
2つ目は、事前準備を徹底することです。
起業の成功には、徹底した事前準備が欠かせません。これは事業を立ち上げる前に、時間をかけて事業のあらゆる側面を調査・計画することを意味します。そのためには、ターゲット市場の理解、潜在的な競争相手の特定、しっかりとしたビジネスプランの作成などが必要です。こうすることで、起業家は課題を予測し、成功に向けて十分な情報に基づいた決断を下すことが可能です。
副業から始める
3つ目は、副業から始めることです。フルタイムの仕事を続けながら、あるいは教育を受けながら、小さなビジネスを始めるということです。
副業を始めることは、起業家志望者にとって賢明な選択となります。小さく始めて徐々にビジネスを大きくしていけば、金銭的なリスクを最小限に抑えつつ、安定した収入源を確保できます。また、事業へ完全に専念することなく、自分のアイデアを試すことが可能です。万が一起業に失敗したとしてもそれほど大きな負債にならず、貴重な経験を積めるでしょう。
まとめ
「5年以内に廃業した場合を失敗と定義する」という前提のもと、起業失敗の確率について考察すると、日本の起業失敗率は約20%です。起業が失敗に至る要因は、過大投資や人手不足など、多岐に渡ります。効果的なビジネスプランを策定し、資金・人材管理を適切に行いましょう。
また、リスクの少ない業界に参入したり副業から始めたりすることによって、起業に失敗する確率を下げられます。ぜひ本記事を参考にして、起業成功への確率を高めましょう。
参考
「oneplus」は、経営者や役員、合理的にビジネスを推進したいと模索するビジネスパーソン向けの経営情報メディアです。 著名人や著名経営者をはじめとした経営をリードする“識者”たちから、皆様のビジネスにひとつプラスになるコンテンツをお届けしています。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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