「起業したいけど、法律のことがよくわからない」「会社を設立するときに顧問弁護士は雇用したほうが良い?」起業を考えている人なら、誰もが一度はこのような悩みや疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
起業は、ビジネスのアイデアや創造性を発揮して、新たな価値を社会に提供できるという大きな魅力があります。しかしそれと同時に、法律に関する知識や経験が不足していることが、起業家にとって大きなリスクとなることも事実です。
本記事では、起業家が抑えるべきビジネス法律の基本と、弁護士に相談する際のメリットを紹介します。
目次
スタートアップ企業が陥りがちな法的トラブル
スタートアップ企業が陥りがちな法的な問題には、契約不備、知的財産権の管理ミス、労働法規の違反などが挙げられます。これらの問題は、しっかりとした法的知識と対策を講じることで回避が可能です。
ここでは、スタートアップ企業が陥りがちな法的トラブルについて解説します。
創業者同志の株の配分や会社の支配権に関するトラブル
スタートアップ企業では、創業メンバー間で株式を分け合うことが一般的です。しかし、これが後に対立の原因になる可能性があります。たとえば、3人で創業して株式を均等に分けた場合、時間が経つにつれて、仕事の負担が不均等になり不満が生じることがあります。
創業メンバーのひとりが経営から離れても株式を持ち続けると、経営への影響力を持ち続けることになるでしょう。このような問題を防ぐためには、事前に「取締役を辞めたら株式を手放す」といった合意をしておくことが重要です。
第三者から投資を受ける際のトラブル
スタートアップ企業が外部からの投資を受ける際、予期せぬ管理上の問題に直面する可能性があります。たとえば、創業者が十分な検討をせずに投資家の条件を受け入れてしまい、後に自社の経営方針に大きな干渉を受けてしまう問題です。
これにより、創業者が最初に描いていたビジネスプランの実現が困難になるケースがあります。こうした問題を回避するためには、権利を特定する種類の株式を使用することが効果的な解決策のひとつです。
各種契約を結ぶ際のトラブル
スタートアップ企業では、オフィスの賃貸・機材の購入やリース・従業員との雇用契約・金融機関とのローン契約、取引先とのビジネス契約など、さまざまな契約を結ぶ機会があります。これらの契約を行う際は、契約の内容をしっかり理解してから署名することが非常に重要です。
内容を十分に把握せずに署名してしまうと、後で予想外の条件やトラブルに巻き込まれるリスクがあります。契約する前に、各条項を慎重に確認し、必要に応じて弁護士に相談することで、将来的な問題を回避できます。
知らずに法を犯してしまうトラブル
ビジネスを営むうえで、さまざまな法律を守ることが必要です。特定の業種では、適切な許認可が必要であり、他人の特許や著作権などの知的財産を守らなければなりません。従業員を守るための労働法もあり、これを無視すると労働基準監督署の介入や法的なトラブル、ときには刑事事件に発展するリスクもあります。
広告を行う際にも、景品表示法や特定商取引法、不正競争防止法などの規則を守る必要があり、これらの法律を知らずに無視してしまうと、法律違反になる恐れがあります。
弁護士による起業支援の内容
弁護士による起業支援は、法的リスクを最小限に抑え、ビジネスの基盤を強化するために必要です。企業設立から運営、成長に至る各段階で適切な法律のアドバイスを受けることで、起業家はビジネスに専念し、より大きな成功を目指します。
ここでは、弁護士による起業支援の内容について解説します。
①会社設立の際の手続きサポート
会社を起業する際、商号の決定や資本金の設定・取締役会の組織化・株式の譲渡制限の設定など、多くの重要な決断が求められます。これらの決定を後回しにしてしまうと、将来的に経営陣の間で意見の食い違いやトラブルに発展するリスクがあるので注意が必要です。
そのため、弁護士から会社設立に関わる重要事項について法的な視点からアドバイスを受けることは、将来起こりうる問題を未然に防ぐのに役立ちます。会社設立の決定が済んだら、定款を作成し公証人に認証してもらい、設立登記の手続きを行います。
②創業者と株主間の契約サポート
ビジネスを友人やパートナーと共同で始める際、株式の分配は大きな問題です。設立当初は平等に株を分け合うことが一般的ですが、創業者の一部が後に退職する場合、株式の扱いをめぐってトラブルが起こることがあります。特に、創業者間の人間関係が悪化している場合、株式の取得や売却をめぐってトラブルが発生しやすくなります。
このような問題を防ぐためには、ビジネスを始める際に「創業者株主間契約」を作成することが有効です。この契約では、創業者が退職した際にどう株式を扱うかを明確に定めます。契約の内容はビジネスの種類や状況によって異なるため、法律の専門家である弁護士と相談し、自社に合った条件を設定することが重要です。
③資金調達・出資者との契約に関するサポート
スタートアップ企業にとって、資金調達と資本戦略の計画が欠かせません。ベンチャーキャピタルからの投資を受ける際は、出資契約の内容をしっかり把握することが大切です。
契約内容を理解せずに進めると、将来的に自社株を不利な条件で売却することになるかもしれません。そのような状況を避けるために、弁護士と相談して専門的な意見を聞くことが重要です。
④事業の合法性の確認と関連する許可申請サポート
企業が取り組むビジネス活動は法律に則って行われる必要があります。特に、革新的で新しいアイデアに基づくビジネスを展開するスタートアップ企業においては、事業の合法性を事前に確認することが非常に重要です。経営者が個人で法律を調べる場合、時間がかかるだけでなく、専門的な知識がないために正確性に欠けることがあります。現代では法律が頻繁に変わるので、すべてを把握するのは難しいでしょう。
専門家の知識がないまま進めると、間違った方向に進んでしまう恐れがあり、最悪の場合、事業の撤退を余儀なくされるかもしれません。自社の事業分野に詳しい弁護士のアドバイスをもらいながら、計画的に進めましょう。
⑤特許権や商標権の出願登録サポート
商品やサービスを特定し、模倣から守るためには、商標登録の手続きが重要です。この過程では、最初に特許庁で既存の同一、または類似の商標がないかを確認する必要があります。もし他社が先に同様の商品名を登録していた場合、差止請求や損害賠償請求が発生する恐れがあるため、十分に注意が必要です。
会社の商品やサービスの独自性を守り、法的な問題を未然に防ぐためにも、商標登録に関して弁護士のアドバイスを受けましょう。
⑥会社規約やプライバシーポリシーの作成サポート
事業を開始する段階で特に重要となるのが、自社の製品やサービスをオンライン上で紹介することです。これには公式Webサイトやソーシャルメディアを利用し、そのうえで利用規約やプライバシーポリシーを明確に示す必要があります。
現代では個人情報の保護が大きく重視されており、これらの文書は企業の信頼度を高めるうえで重要です。法律は常に更新されているため、弁護士などの法律専門家のアドバイスを受け、最新かつ正確な情報を文書に反映させましょう。
⑦事業計画に基づく契約書作成サポート
ビジネスを行う際、しっかりとした契約書がとても大切です。これにより、取引の内容が明確になり、予期せぬトラブルを防げます。
インターネットには多くの契約書のテンプレートがありますが、法律は常に変わっているため、これらをそのまま使うのはリスクがあります。自社の事業に特化した契約書の必要性が高まっている現状では、インターネットのテンプレートだけに頼ることは避けるべきです。
契約書は、取引に関わる両者の合意内容をはっきりと示すもので、企業が不利な立場にならないように注意深く作成する必要があります。法律の専門家である弁護士にしっかりとチェックしてもらいましょう。
起業するなら知っておくべき法律は?
起業する際には、民法・会社法・労働基準法・下請法・著作権法などの基本的な法律を理解しておくことが重要です。これらの法律は、ビジネス運営の基礎となり、法的トラブルを避けるために必要不可欠です。
ここでは起業するなら知っておくべき法律について解説します。
民法の基礎知識
民法は、私たちの日常生活やビジネス活動における権利と義務に関する基本ルールを定めていて、物の所有権・お金の貸し借り・家族関係・相続など、さまざまな場面で適用されます。たとえば、家族や友人との小さなトラブルから、ビジネス上の大きな問題まで、民法が解決のカギを握っていることがよくあります。
ビジネスを運営する人にとって、民法の知識は特に重要です。商取引や金融取引、契約の成立や財産管理に関する基本的なガイドラインを示しているためです。たとえば、契約に関するトラブルがあった場合、民法の原則に基づいてその契約が有効かどうかを判断できます。
日常生活での利益が相反する場面では、どの利益を優先すべきかを考えるのにも役立ちます。民法は学ぶのが難しい法律ですが、特に契約については、忙しい方でも基本を理解しておくと良いでしょう。
参考:民法|条文|法令リード
会社法の要点
会社法は、企業の創設、運営、および管理に関連する法的枠組みを提供する重要な法律です。この法律の知識は、特に会社経営者や起業家にとって、大変重要です。
会社法は、会社の設立から、その運営方法やお金を集める方法まで、幅広い内容をカバーしています。これには、会社の名前を決めることや、どのようにお金を管理するかなども含まれます。会社がお金を借りたり、株を売ったりするときも、会社法のルールに従わなければなりません。
労働基準法の概要
労働基準法は、労働者の保護を目的とした重要な法律です。この法律は、働く時間や休み・給料・有給休暇など、働く人々の権利に関わることを幅広く規定しています。合意がない状態での残業や休日出勤をすることは、労働基準法に違反する可能性があります。刑事責任や民事責任、さらには社会的な評価の低下を招くリスクがあるため、注意が必要です。
従業員を雇う事業者は、労働基準法の適切な理解と適用を行うことが、経営上の重要な責務です。
参考:労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)
下請法のポイント
外注や下請けを活用する際には、下請法という法律が大切です。この法律は、主に発注者と下請業者間の取引を公正に保つためのもので、下請業者の権利を保護する役割を果たしています。発注側の強い地位を不当に利用した行為、たとえば不当な価格引き下げや、納品後の無理な返品要求などを規制し、下請業者の取引の安全を守っています。
下請法は、フリーランスや小規模事業者にとっても非常に重要です。事前に合意された価格よりも低い金額での支払い要求、納品後に不当な理由での支払いの遅延や減額、約束された支払日を過ぎても代金が支払われないなどの場合は、下請法に基づき対応できます。
このような違反行為があった場合、発注者は遅延損害金や未払い金の支払いを命じられる可能性があるので注意しましょう。下請業者に公平な扱いを保証し、ビジネス関係の健全な発展を促進するために、下請法の内容を把握し、それに従って行動することが求められます。
参考:下請法の概要 | 公正取引委員会
著作権法の理解
著作権法は、創作者の作品を保護するための法律です。著作権法により、誰もが自分の創造した作品(文学作品・音楽・映画・美術作品・写真・プログラムなど)に対する独占的な権利を持つことが保証されます。現代ビジネス、特にWeb関連の業務において著作権法が重要です。
オリジナルのコンテンツを制作する際はもちろんのこと、他人の内容や素材を引用する際も、著作権法を遵守する必要があります。インターネットの普及により、著作権に関する問題はより複雑になっており、注意しなければなりません。著作権侵害は、法的措置を取られるリスクだけでなく、企業の信頼性を損なう要因にもなります。
参考:著作権法|総務省
その他重要な事業関連法律
ビジネスにおいては、特定の分野に特化した法律も重要です。医療や美容業界で事業を行う場合、薬機法に基づいて適切なサービスを提供することが求められます。不動産関連のビジネスでは、宅地建物取引業法や建築基準法に従った適正な業務遂行が重要です。
運送業のように公共性が高いビジネスを営む場合は、道路交通法や道路運送車両法といった法律が直接的に関わってきます。飲食業の場合は、食品衛生法に基づいて顧客の安全を確保することが絶対条件です。
これらの法律は、その業界特有のリスクを管理し、顧客や公共の安全を保つためにあります。事業を行ううえでこれらの法律を無視すると、法的な罰則のリスクだけでなく、社会的な信用を失う可能性が高まります。
起業して間もない会社が知っておくべき法務の基本
起業して間もない会社が知っておくべき法務の基本には、社会保険や労働保険への加入・税務署への届け出・就業規則の作成・必要な許認可の取得・契約書類の作成と管理が含まれます。これらは、企業が法律を守りながらスムーズにビジネスを進めるために大切です。
ここでは、起業して間もない会社が知っておくべき法務の基本について解説します。
基本①:社会保険への加入について
会社を起業した際、厚生年金と健康保険への加入が義務付けられています。従業員がいない一人社長の場合でも例外ではありません。社会保険制度は、働く個人の福祉を保障する国の制度で、加入することにより、将来の年金や医療費のサポートを受けられます。
加入手続きは、地域の年金事務所で行うことができ、必要書類を提出し手続きを進めます。新しく起業した際、このような社会保険の手続きも早めに済ませることで、事業運営に専念できる環境を整えられるでしょう。
基本②:労働保険への加入について
起業時において従業員を採用する場合は、それに伴い労働保険への加入が義務付けられています。雇用保険と労災保険は従業員の安全と安心を保証するためのもので、これらに加入しないと法律違反となります。
このような手続きは、各地の労働基準監督署で行われ、必要な書類の提出と手続きの説明を受けることが可能です。加入することで、従業員が職場で怪我をした場合の保険給付や、雇用の安定に関する保険給付が受けられるようになります。
基本③:税務署への届け出について
会社を起業した際、税務手続きが必要です。税務署に法人設立届出書を提出し、法人として正式に認知される必要があります。従業員から源泉所得税を徴収する場合には関連する届出をしなければなりません。
これらの手続きは企業の正式な運営を始めるための基本であり、税務上の義務を遵守するためにも大切です。
参考:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁
基本④:就業規則作成について
労働基準法により、従業員10名以上の企業では就業規則の作成が必要とされていますが、従業員が10名未満の企業でも、就業規則は作成すべきだと厚生労働省で推奨されています。
就業規則は単なる形式的な文書ではなく、従業員の権利と義務を明確にし、企業内のルールを確立するものです。これにより労働関連の問題を防ぎ、職場の健全な環境を維持します。ビジネスの安定した運営を支える大切な基盤となるため、企業規模に関わらず、就業規則の作成は経営上の重要なステップです。
参考:就業規則作成・見直しのポイント
基本⑤:許認可について
起業をする際、許認可や登録など、法律上の要件を遵守することが重要です。一部の業界や業種によっては、事業を始める前に関連する政府機関への適切な申請が必要です。
これらの手続きを怠ると法律に触れる可能性があり、最悪の場合は事業運営が困難になる場合があります。特定の業種では、法的に定められた登録や届出が必要です。これは、事業の透明性を高め、消費者や取引先への信頼を築くうえで重要な役割を果たします。
基本⑥:各種契約の締結と契約書の作成する
起業時においては、オフィスや機材のリース・取引先との基本契約、そして従業員の採用に際しての雇用契約など、各種契約関係が発生します。これらの契約を適切に締結し、正確な契約書の作成を行うことは、企業の運営にとって重要です。
弁護士以外で無料で起業相談ができる窓口
起業家が弁護士以外で無料で起業相談ができる窓口には、税務署、商工会・商工会議所、中小企業基盤整備機構、よろず支援拠点、日本政策金融公庫などがあります。これらの機関は、起業に関するさまざまなアドバイスを提案し、初期段階でのビジネスの成功をサポートします。
ここでは、弁護士以外で無料で起業相談ができる窓口について解説します。
税務署
起業するにあたり、税務署で法人設立届出書や青色申告の承認申請書の届け出は必須です。
税務署では、これら手続きに関する相談のほか、税金に関する疑問や問題についても相談に応じています。ただし、確定申告の繁忙期である2〜3月は混雑が予想されるため、相談する時期は調整しましょう。電話での相談もできるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
商工会・商工会議所
商工会・商工会議所は、起業家や中小企業の相談窓口です。ビジネスのアイデアを具体的な形にしたり、事業計画や資金を集めるためのアドバイスをしたりなど、ビジネスを始める際に必要なサポートを提供しています。
また起業家向けのセミナーや交流会を定期的に開催し、実践的な知識や業界の最新情報を得る機会を作っています。融資に関するアドバイスや専門家の紹介制度も充実しているので、ぜひ利用してみましょう。サポートは、事業が軌道に乗った後も引き続き利用することが可能です。
中小企業基盤整備機構
中小企業基盤整備機構(中小機構)は、創業支援から事業再生・人材育成・販路開拓など、中小企業やベンチャー企業の成長段階に合わせた経営支援サービスを提供する、経済産業省管轄の独立行政法人です。起業家や中小企業経営者が無料で経営相談できます。中小機構は、全国に地域本部や中小企業大学を設置し、29ヶ所のインキュベーション施設を運営しています。
中小企業や起業家に対して、地域特有のニーズに応じた支援が可能です。助成金や補助金の提供・無料の経営相談・新事業創出のサポートなど、多岐にわたるサービスを提供しており、これらは中小企業の経営基盤強化に大きく貢献しています。中小機構は、中期契約戦略の策定支援や創業支援の体制づくりなど、具体的な事例を通じて中小企業や起業家を支援しています。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、中小企業や小規模事業者が経営上のさまざまな課題について無料相談できる、国が設置した経営相談所です。経営者が直面する多様な問題に対して、専門的なアドバイスと実践的な解決策を提案してもらえます。よろず支援拠点は、国が全国に設置していることから、信頼性が高く、専門家による質の高いサポートが期待できるでしょう。
相談者の満足度は創設から常に80%を超えており、さまざまな分野の専門家が在籍しています。よろず支援拠点は、令和4年度に525,564件の相談に対応し、その内容は商品開発、海外展開など多岐にわたる、大規模な経営相談所です。
参考:よろず支援拠点とは | よろず支援拠点全国本部
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、民間の金融機関の補完として中小企業や小規模事業者を支援する政策金融機関です。無料で起業相談ができ、信頼性の高い国の支援を受けられるというメリットがあります。日本政策金融公庫は、国が株式を100%保有する株式会社で、政府公認の金融機関です。
日本政策金融公庫は、農林水産事業・国民生活事業・中小企業事業という3つの事業を通じて、融資・支援・情報提供などのサービスを行っています。
起業時に弁護士を雇うメリット
起業する際に弁護士を雇うことには大きなメリットがあります。これには、法的リスクの軽減・契約書作成の正確性・法的トラブルの未然防止、そして専門的なビジネスアドバイスが含まれます。
ここでは起業するときに弁護士を雇うメリットについて解説しましょう。
①トラブルを事前に防げる可能性が高い
起業家にとって、ビジネス運営は予期せぬトラブルに見舞われることがあります。そんなとき、顧問弁護士の存在が大きな安心感を与えるでしょう。不測の事態が起こったとしても、顧問弁護士は企業の事情をすでに理解しているため、迅速に対応が可能です。この即応性は、新たに弁護士を探し、事情を説明する手間と時間を省けます。
顧問弁護士は日頃から企業のさまざまなアドバイスを行い、リスク管理の面でも大きな役割を果たすことが可能です。契約書の作成や交渉の段階での法的アドバイスは、事前のトラブルの防止に役立ち、争いごとが生じた場合、客観的かつ専門的な観点から最適な解決策を導いてくれます。
顧問弁護士を早期に雇用すると、問題が小さいうちに法的なアドバイスを受けることで、大きなトラブルに発展することを防ぐことが可能です。法的な側面に精通した顧問弁護士の存在は会社経営において、重要性は計り知れないものがあります。
②経営上のアドバイスが受けられる
経営するうえで、顧問弁護士の存在は大きな安心材料です。日常のちょっとした疑問から、大きな問題に至るまで、気軽に相談できます。
経営上で問題が起きたとき、顧問弁護士は企業の状況を熟知しているので、的確で迅速なアドバイスを受けられるでしょう。法律の変更や最新情報にも精通し、ビジネスにおけるリスクを最小限に抑えられます。特に労働問題は、どの企業にも起こりうる問題です。近年では、残業代の請求などが注目されており、顧問弁護士からはこれらの問題を未然に防ぐためのアドバイスが得られます。
③会社の信用度が向上する
顧問弁護士を雇用することで、企業の法的な安全性と信頼性が向上します。企業が法的な問題に迅速かつ適切に対応できる環境を整えておけば、取引先や顧客は安心感を覚えるでしょう。企業の公式文書や名刺に顧問弁護士の情報を記載することにより、企業が法的なコンプライアンスに真剣に取り組んでいることが示され、取引先や金融機関からの信用度が高まります。
従業員に対しても、法的な問題が適切に扱われているという安心感を与え、モチベーションや職場の安定性を高める効果があります。顧問弁護士を雇用することは、単に法的な問題を解決するだけでなく、企業の全体的な信頼性と品質を高めるための大切な手段です。
④経営者の負荷が軽減する
顧問弁護士を雇用することにより、法的書類の確認や契約書のチェックなど、時間を要する作業を弁護士に任せられ、経営者の負担は軽減されます。法律は頻繁に変更され、常に最新の情報を把握する必要がありますが、経営者がすべてを把握するのは非現実的です。顧問弁護士が最新の法改正を把握し、適切に対応策を提案することで、企業は法的リスクを低減できます。
また中小企業にとっては、法律専門部署の設立や専任の法務担当者を雇用することはコスト面で負担が大きいです。しかし、顧問弁護士と契約することで、これらの問題を効果的かつ経済的に解決できます。顧問料は経費として処理できるので、節税効果も期待できるでしょう。
弁護士と顧問契約を結ぶ費用の相場は?
日本弁護士連合会の調査によると、顧問契約の費用相場は多様で、地域や弁護士の経験、提供するサービスの範囲によって変動します。しかし、一般的な中小企業向けの基本的な契約では月額5万円前後が多いです。
ここでは弁護士と顧問契約を結ぶ費用の相場について解説します。
書類作成の費用の相場
取引先への、契約書や法的文書の作成は頻繁に発生します。これらの文書は、後に生じるかもしれない法的問題を未然に防ぐために重要です。
日本弁護士連合会が行った調査によれば、顧問契約を結んでいる弁護士に契約書作成を依頼する場合、その費用は平均して5万円から10万円程度になります。しかし、顧問契約を結んでいない場合の費用は、5万円から15万円程度となることが多いです。
弁護士費用 | 雇用契約あり | 雇用契約なし |
---|---|---|
5万円前後 | 49.0% | 25.0% |
10万円前後 | 21.4% | 43.8% |
15万円前後 | 2.3% | 10.9% |
20万円前後 | 3.9% | 8.9% |
30万円前後 | 0% | 5.9% |
0円 | 11.2% | – |
その他 | 7.2% | 3.9% |
参考:中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版]
労働事件の費用の相場
不当解雇や長時間労働による従業員からの訴訟は、企業にとって深刻な影響を及ぼします。日本弁護士連合会のデータによると、これらの労働事件を顧問弁護士に依頼する際の費用相場は、着手金が約10万円から約30万円、成功報酬が約20万円から約50万円です。しかし、顧問契約を結んでいない場合の費用は、着手金が約20万円から約50万円、成功報酬が同じく約20万円から約50万円の範囲内に収まることが多くなっています。
【着手金】
雇用契約あり | 雇用契約なし | |
---|---|---|
10万円前後 | 15.1% | 3.6% |
20万円前後 | 31.3% | 11.2% |
30万円前後 | 31.9% | 46.1% |
40万円前後 | 3.3% | 9.5% |
50万円前後 | 5.3% | 18.8% |
その他 | 1.0% | 1.0% |
【報酬金】
雇用契約あり | 雇用契約なし | |
---|---|---|
10万円前後 | 31.9% | 18.1% |
20万円前後 | 28.6% | 25.0% |
30万円前後 | 19.1% | 33.2% |
40万円前後 | 2.6% | 6.9% |
50万円前後 | 1.0% | 3.3% |
その他 | 3.0% | 0.7% |
参考:中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版]
売掛金回収における着手金・報酬金の相場
中小企業が2,000万円の売掛金回収を弁護士に委託する際の費用について見ていきます。日本弁護士連合会が提供するデータによれば、顧問弁護士を利用する場合、売掛金回収にかかる費用は着手金がおおよそ50万円から70万円、成功報酬が100万円から150万円の範囲です。これに対し、顧問契約を結んでいない弁護士に依頼した場合、着手金は50万円から100万円、成功報酬は100万円から200万円となります。
【着手金】
雇用契約あり | 雇用契約なし | |
---|---|---|
50万円前後 | 53.3% | 30.9% |
70万円前後 | 20.7% | 19.1% |
100万円前後 | 12.2% | 44.4% |
120万円前後 | 0.3% | 1.0% |
150万円前後 | 0% | 1.3% |
その他 | 10.2% | 1.6% |
【報酬金】
雇用契約あり | 雇用契約なし | |
---|---|---|
100万円前後 | 35.2% | 17.4% |
150万円前後 | 29.6% | 17.1% |
200万円前後 | 26.0% | 58.2% |
250万円前後 | 1.0% | 3.6% |
300万円前後 | 0% | 0.7% |
その他 | 5.3% | 1.3% |
参考:中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版]
弁護士と顧問契約を結ぶタイミングは?
企業が顧問弁護士を雇用する最適なタイミングは、トラブルが起きる前です。法的な問題を未然に防ぐためには、事前に顧問弁護士と契約しておくことがカギです。顧問弁護士は企業の事業構造や過去の取引履歴を熟知していることで、迅速かつ効果的な問題解決ができます。トラブルが発生してから弁護士を探し始めると、貴重な時間が無駄になり、さらに問題解決が遅れるリスクがあります。
またトラブルが起きてから顧問契約を考えた場合も、トラブル解決後すぐに契約を終了させるのではなく、リスク管理のためにも契約を続けましょう。顧問弁護士は単にトラブル解決のためだけでなく、将来的にも問題を防ぐための重要な役割を果たします。
顧問契約の費用は、月に3〜5万円程度とされていますが、必要性や企業の規模に応じて変動します。企業にとって適切な顧問契約を締結するためには、企業法務に精通している弁護士を選ぶことが重要です。企業が新たな大規模な取引を始めるときや、海外企業との取引を考えているときなども、顧問弁護士との契約を検討してみましょう。
まとめ
起業家にとってビジネス法律の知識は大変重要です。顧問弁護士を雇うことで、起業の際に立ちはだかる多くの法的課題を、迅速かつ効果的に対処してもらえるでしょう。弁護士は契約書作成や法律相談が可能なほか、法的トラブルが発生した際にも正確かつ専門的なサポートを提供します。
顧問契約の費用は、月に3〜5万円程度とされていますが、必要性や企業の規模に応じて変動します。トラブルが起きる前の起業時に、一度雇用するか検討してみましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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