
創業時には販促費や事務所費など、お金がかかることが多いため「資金調達」が必要です。創業時に十分な資金を準備できていれば、事業に専念でき好スタートを切れるでしょう。
資金調達は金融機関だけでなく、国や自治体などの給付金(補助金・助成金)を活用することで、さまざまなメリットを得られます。本記事では創業時に使える給付金(補助金・助成金)の詳細や、申請時の注意点などを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
給付金・補助金・助成金の違い
給付金・補助金・助成金などの「〇〇金」という言葉の意味は、少しずつ異なります。それぞれの違いは以下のとおりです。
給付金 | 補助金 | 助成金 | |
---|---|---|---|
交付する機関 | 国(経済産業省・自治体) | 国(主に経済産業省・自治体) | 国(主に厚生労働省・自治体) |
交付目的 | 補助金や助成金では補え切れない範囲をサポート | 国の定めた政策に沿った事業の推進 | 雇用や開発研究などの推進 |
交付金額 | 交付金額は低い | 交付金額は高い | 交付金額は低い |
申請の難易度 | 常備行っているものや1年単位で募集している(募集期間は長い) | 公募が決まってから数ヶ月(募集期間が短いことが多い) | 各助成金の制限を満たすまで(募集期間は長いことが多い) |
受給の難易度 | 募集の条件さえ満たせば誰でも受け取れる(易しい) | 予算が限られているため必ず受けられるわけではない(難しい) | 募集の条件さえ満たせば誰でも受け取れる(易しい) |
支給方法 | 先払い | 後払い | 後払い |
返済の有無 | 返済不要 | 返済不要 | 返済不要 |
制度の違いを理解しておくことで創業時に適した制度を利用できるようになるので、覚えておきましょう。以下では、給付金・補助金・助成金について、詳しく解説します。
給付金とは
給付金とは、国・自治体が法人やフリーランスなどの事業主、また個人向けに資金を給付するものです。事業主向けの給付金は事業継続のため、個人向けの給付金は生活を助けるためなど、さまざまな用途に応じた給付金があります。
主に補助金や助成金ではカバーできない、広範囲な用途に対応しています。給付条件を満たせば誰でも受け取ることができ、返済の義務もありません。給付金は補助金や助成金と違い、申請すれば自動的に振り込まれるため先払いとなります。
補助金とは
補助金とは、国や自治体の政策目標に合わせて幅広い分野で募集されており、事業者をサポートするために一部の資金を給付する制度のことです。補助対象となる経費、補助の割合、募集人数、上限額、申請時期など条件が決まっているため、その条件を満たす場合のみ支給されます。
融資とは違い、あとからお金を返済する必要がないものの、「申請すれば必ず支給される」わけではありません。しっかりとした「審査(事前の審査と事後の検査)」のもとで、補助金の有無や金額が決定されます。
また原則として、支払いは「後払い」です。事業を進めてかかった費用や必要書類を申請することで受け取れます。
助成金とは
助成金とは、国や自治体が雇用や研究・開発の目的のために資金を給付するものです。厚生労働省が管理している「雇用(新規雇用・再就職・定年延長・人材開発)」に関する助成金が多くあります。
補助金と同様に一定の条件はありますが、条件を満たせば誰でも等しく受給できます。補助金よりも資金獲得しやすいことが特徴です。また補助金と同様に返済する義務はなく、支払いは後払いとなります。
創業時に使える給付金(補助金・助成金)
それでは、創業時に使える給付金(補助金・助成金)の詳細を紹介していきます。
①創業促進補助金
創業促進補助金は、各自治体ごとに名前は異なりますが、創業する人に向けた補助金制度です。「地域と企業の持続的共生」を促進し、新ビジネスや技術を取り入れながら地域経済の活性化の実現を目的としています。
各自治体で補助金の金額や申請方法が異なります。一例をまとめたので参考にしてください。
都道府県名 | 補助額 |
北海道 (さっぽろ新規創業促進補助金) | 株式会社設立の場合:一律 175,000円 (登録免許税75,000円+定款認証手数料相当分100,000円) 合名会社、合資会社、合同会社設立の場合:一律 80,000円 (登録免許税30,000円+定款認証手数料相当分50,000円) |
東京都(創業助成金) | 助成対象経費の3分の2以内 助成限度額:300万円 |
愛知県 (名古屋市スタートアップ企業支援補助金) | 補助率:補助対象経費の3分の1 補助限度額:100万円 |
京都府(起業支援事業) | 補助率 2分の1 上限 200万円 |
福岡県 (福岡よかとこ起業支援金) | 補助率:起業等に要する対象経費の2分の1以内 補助額:上限200万円 |
上記のように名前や補助額が異なるので、起業する地域の補助金制度を確認してから申請しましょう。
また創業促進補助金で受け取ったお金は、使用目的が限られています。こちらも、各自治体によって異なりますが、一般的には以下の項目のとおりです。
【人件費】
①人件費
【事業費】
②旅費
③機械装置費
④借料及び賃料(リース費)
⑤システム開発費
⑥外注加工費
⑦技術導入費
⑧専門家経費
⑨運搬費
⑩クラウド利用費
⑪委託費(広域展開型のみ補助対象)
引用元:令和5年度 補助事業について – 地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金
このほかにも申請できる対象者、申請期間なども決まっているので、しっかりと確認しておきましょう。
②ものづくり補助金
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者がこの先に直面するであろう制度変更(賃上げ・インボイス導入・働き方改革など)に対応するため、また中小企業・小規模事業者が取り組んでいる試作品開発・サービス開発・生産プロセスの改善などを行うために支援するものです。
つまり、システムや機械などの設備投資を行う事業者に向けた補助金です。活用例としては以下のようなものがあります。
活用例その①
夫婦で経営するカフェで「食べられるコーヒーカップ」を開発し、補助金を利用して「可食容器製造機械」を導入。
活用例その②
地域特産品のキンカンを栽培している農家が補助金を利用して「急速冷凍機」を導入。
活用例その③
売上に伸び悩んでいる寝具店が店舗販売強化のために、補助金を利用して寝心地計測装置を導入。
ものづくり補助金の対象者、経費、補助金額などを表にまとめたので順番に見ていきましょう。
補助金の対象者
中小企業者(組合関連以外) | 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人以下 | |
卸売業 | 1億円 | 100人以下 | |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、 旅館業を除く) |
5,000万円 | 100人以下 | |
小売業 | 5,000万円 | 50人以下 | |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 | 900人以下 | |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人以下 | |
旅館業 | 5,000万円 | 200人以下 | |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人以下 | |
中小企業者(組合・法人関連) |
企業組合、協業組合、事業協同組合、商工組合、商店街振興組合連合会、水産加工業協同組合、生活衛生同業組合、酒造組合、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合 など |
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小規模企業者 小規模事業者 |
製造業その他 (20人以下の会社及び個人事業主) 商業・サービス業 (5人以下の会社及び個人事業主) サービス業のうち宿泊業・娯楽業(20人以下の会社及び個人事業主) |
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特定事業者の一部 |
製造業、建設業、運輸業(常勤従業員数500人以下) 卸売業(常勤従業員数400人以下) サービス業又は小売業(常勤従業員数300人以下) 上記以外のその他の業種(常勤従業員数500人以下) |
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特定非営利活動法人 |
従業員数が300人以下 |
||
社会福祉法人 |
従業員数が300人以下 |
引用元:公募要領について|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト(17次締切分)
中小企業や小規模企業だけでなく、上記の条件さえ満たせば特定非営利活動法人や社会福祉法人も申請可能です。資本金や常勤従業員の数によっても細かく設定されているので、自分が対象であるかは上記を参考にしてください。
経費
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
ものづくり補助金の対象経費は、システム構築や技術導入など設備投資にかかわるものが多くあります。また、設備投資を行うかを専門家・コンサルタントなどに相談した費用(クラウドサービス利用費・専門家経費)も経費として使用することが可能です。
補助金の対象経費だけでなく「補助対象外経費」も17次公募要領に記載されているため、申請するときは「補助対象外経費」も確認しておきましょう。
補助金額
枠・類型 | 補助上限額(カッコ内は大幅賃上げを行う場合) | 補助率 | |
省力化 (オーダーメイド枠) |
【従業員数:補助上限額】 5人以下:750万円(1,000万円) 6~20人:1,500万円(2,000万円) 21~50人:3,000万円(4,000万円) 51~99人:5,000万円(6,500万円) 100人以上:8,000万円(1億円) |
中小企業1/2 小規・再生2/3 ※1,500万円を超える部分は1/3 |
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製品・サービス高付加価値化枠 | 【通常類型】 | 【従業員数:補助上限額】 5人以下 :750万円(850万円) 6~20人 :1,000万円(1,250万円) 21人以上:1,250万円(2,250万円) |
中小企業1/2 小規・再生2/3 新型コロナ回復加速化特定2/3 |
【成長分野進出類型】 | 【従業員数:補助上限額】 5人以下 :1,000万円(1,100万円) 6~20人 :1,500万円(1,750万円) 21人以上:2,500万円(3,500万円) |
すべて2/3 | |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 中小企業1/2 小規2/3 |
引用元:公募要領について|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト(17次締切分)
公募要領(17次締切分)は、省力化(オーダーメイド枠)のみ対象です。製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠は17次締切分では募集していません。
③事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの影響が長引き回復が期待しづらいなか、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、日本経済の構造転換を目的とした補助金制度です。新分野展開、事業転換、業種転換などの事業再構築を行う中小企業などを支援します。
事業再構築補助金を申請するためには「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靭化枠」「最低賃金枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」の条件のどれかに当てはまらなければなりません。
それぞれ、対象者や補助金額が異なるので自分がどれに当てはまるか見ていきましょう。
成長枠
成長枠は、成長分野に向けて事業再構築に取り組む事業者を支援する枠です。
対象者 | ① 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること ② 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること |
補助金額 | 【従業員規模:補助上限額】 20人以下:2,000万円 21~50人:4,000万円 51~100人:5,000万円 101人以上:7,000万円 |
補助率 | 【中小企業】 1/2(大規模な賃上げ※を行う場合2/3) 【中堅企業】 1/3(大規模な賃上げ※を行う場合1/2) ※事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること。 ただし、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還を求めます。 |
グリーン成長枠
グリーン成長枠は、グリーン分野で事業再構築を行い、高い成長を目指している事業者を支援する枠です。
対象者 |
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと ②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること |
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補助金額 | 中小企業の場合 | |
従業員規模 | 補助上限額 | |
20人以下 | 4,000万円 | |
21~50人 | 6,000万円 | |
51以上 | 8,000万円 | |
中堅企業の場合 | ||
従業員規模に関係なく補助上限額が1億円 | ||
補助率 | 【中小企業】 1/2(大規模な賃上げ※を行う場合2/3) 【中堅企業】 1/3(大規模な賃上げ※を行う場合1/2) ※事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること。 ただし、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還を求めます。 |
グリーン成長枠は「スタンダード」と「エントリー」の2つのコースがあります。少し内容が異なるので、詳しく知りたい人は「事業再構築補助金の概要」を参照してください。
卒業促進枠
卒業促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助を受け、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対して補助金額を上乗せして支援する枠です。(大規模賃金引上促進枠との併用はできません。)
対象者 | ①成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること ②成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること |
補助金額 | 成長枠・グリーン成長枠に準じる |
補助率 | 【中小企業】 1/2 【中堅企業】 1/3 |
大規模賃金引上促進枠
大規模賃金引上促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助を受け、大規模な賃上げに取り組む事業者に対して補助金額を上乗せして支援する枠です。(卒業促進枠との併用はできません。)
対象者 | ①成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること ②成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること ③成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年率平均1.5%以上(最低事業計画期間×1人の増員が必要)増員させること |
補助金額 | 従業員規模に関係なく補助上限額が3,000万円 |
補助率 | 【中小企業】 1/2 【中堅企業】 1/3 |
産業構造転換枠
産業構造転換枠は、産業構造の変化によって事業再構築が必要となった業種・業態の事業者に対して、補助率の引き上げや補助上限額の上乗せなどの支援をする枠です。
対象者 |
①現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること ②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること |
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補助金額 | 従業員規模 | 補助上限額 |
20人以下 | 2,000万円 | |
21~50人 | 4,000万円 | |
51~100人 | 5,000万円 | |
101人以上 | 7,000万円 | |
補助率 | 【中小企業】 2/3 【中堅企業】 1/2 |
サプライチェーン強靭化枠
サプライチェーン強靭化枠は、国内サプライチェーンの強靭化や地域産業の活性化に取り組む事業者に対し、補助上限額を最大5億円まで引き上げて支援する枠です。
対象者 | ①取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの) ②取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること ③経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること ④IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っていること ⑤交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと ⑥事業終了後、事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年率平均2%以上増加させる取組であること ⑦「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること |
補助金額 | 5億円※建物費を含まない場合は3億円 |
補助率 | 【中小企業】 1/2 【中堅企業】 1/3 |
最低賃金枠
最低賃金枠は、最低賃金の引上げの影響により、原資の確保が難しい中小企業に対し、補助率を引き上げる支援を行う枠です。
対象者 |
① 2022年1月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること ② 2022年10月から2023年8月までの間で、3ヶ月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること |
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補助金額 | 従業員規模 | 補助上限額 |
5人以下 | 500万円 | |
6~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,500万円 | |
補助率 | 【中小企業】 3/4 【中堅企業】 2/3 |
物価高騰対策・回復再生応援枠
物価高騰対策・回復再生応援枠は、新型コロナや物価高騰などの影響により、業況が厳しいままの事業者に対して支援を行う枠です。
対象者 |
① 2022年1月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること ②中小企業活性化協議会から支援を受け、再生計画等を策定していること |
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補助金額 | 従業員規模 | 補助上限額 |
5人以下 | 1,000万円 | |
6~20人 | 1,500万円 | |
21~50人 | 2,000万円 | |
51人以上 | 3,000万円 | |
補助率 |
【中小企業】 2/3(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4) 【中堅企業】 1/2(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3) |
④IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が労働生産性の向上を目指し、自社に合ったITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金制度です。IT導入補助金は「通常枠」「インボイス枠」「複数社連携IT導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の4つの枠に分かれています。
それぞれで補助対象者や補助金額が異なるので、自分に合ったものを見ていきましょう。
通常枠
通常枠は、自社に合ったITツールを導入する際にかかるコストの一部を補助する枠です。
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
補助金額 | 【A類型】 補助金額:5万円以上150万円未満 【B類型】 補助金額:150万円以上450万円以下 |
補助率 | 補助率:1/2 |
補助対象 | ソフトウェア、導入関連費(オプション)、導入関連費(役務の提供) |
引用元:通常枠(A・B類型) | IT導入補助金2023(後期事務局)
インボイス枠
インボイス枠は、会計・受発注・決済ソフト・ハードウェア導入費用など、インボイス制度に対応した支援枠です。インボイス枠は「電子取引類型」と「インボイス対応類型」の2つがあり、それぞれで補助金額などが異なります。
【電子取引類型】
対象者 | 大企業等・中小企業・小規模事業者等 |
補助金額 | インボイス制度に対応した受発注ソフト:~350万円 |
補助率 | 大企業等:1/2 中小企業・小規模事業者等:2/3 |
補助対象 | クラウド利用料(最大2年分) |
【インボイス対応類型】
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
補助金額 | インボイス制度に対応した受発注ソフト・決済ソフト:~350万円 PC・タブレットなど:~10万円 レジ・販売機など:~20万円 |
補助率 | 【インボイス制度に対応した受発注ソフト・決済ソフト】 50万円以下:小規模事業者等4/5、中小企業3/4 50万円超~350万円以下:2/3 |
補助対象 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費、ハードウェア購入費 |
複数社連携IT導入類型
複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入し、生産性の向上や地域DXの実現を図る取り組みに対して支援を行う枠です。
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
補助金額 | (1)インボイスに関しての経費は「インボイス枠のインボイス対応類型」と同様 (2)消費動向等分析経費は50万円×参画事業者数 補助上限:(1)+(2)で3,000万円 (3)事務費・専門家費は補助上限200万円 |
補助率 | (1)インボイス枠のインボイス対応類型と同様 (2)・(3)2/3 |
補助対象 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費、ハードウェア購入費 |
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバーインシデントにより事業継続が困難になる事態を避けるための支援枠です。
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
補助金額 | 5~100万円 |
補助率 | 1/2 |
補助対象 | セキュリティサービス利用料(最大2年分) |
⑤事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&A等を支援する補助金制度です。事業承継・引継ぎ補助金は、「①経営革新事業」、「②専門家活用事業」、「③廃業・再チャレンジ事業」の3つの事業に分かれているので、自分に合った事業を選択しましょう。
経営革新事業
経営革新事業は、事業承継やM&Aなどで事業を引き継いだ中小企業の生産性を向上させることを目的とした枠です。
経営革新事業には、創業支援型・経営者交代型・M&A型の3つのタイプがあります。そのなかのひとつである「創業支援型」は、他の事業者の経営資源を引き継ぎ、創業する場合に補助金を利用できます。
対象条件 | 賃上げ | 補助上限額 | 補助率 |
①小規模企業者 ②営業利益率低下 ③赤字 ④再生事業者等 のいずれかに該当 |
実施あり | 800万円 | 600万円超~800万円相当部分 1/2以内 |
実施なし | 600万円 | ~600万円相当部分 2/3以内 | |
上記①~④該当なし | 実施あり | 800万円 | 1/2以内 |
実施なし | 600万円 |
専門家活用事業
専門家活用事業は、経営資源の引継ぎの際にかかるコストの一部を補助し、経済の活性化を図ることを目的とした枠です。
対象条件 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業 | 2/3以内 | 50万円 | 600万円以内 |
株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業 | 1/2又は 2/3以内 |
廃業・再チャレンジ事業
廃業・再チャレンジ事業は、M&Aに失敗した中小企業者等の株主や、個人事業主が再チャレンジする際にかかるコストの一部を補助する枠です。
対象条件 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
M&Aで事業を譲り渡せなかった事業者 | 2/3以内 | 50万円 | 150万円以内 |
事業承継に伴う廃業や事業の譲り受け渡しに伴う廃業 | 1/2又は 2/3以内 |
⑥小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、持続的な経営に向けて、販路開拓や業務の効率化などに取り組む際にかかるコストの一部を補助する補助金制度です。補助対象者や補助金額などを見ていきましょう。
【補助対象者】
①小規模事業者であること
②資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと
③確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
④商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
⑤下記3つの事業において、採択を受けて、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める様式を原則本補助金の申請までに受領された者であること
1.「小規模事業者持続化補助金<一般型>」
2.「小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>」
3.「小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>」
⑥小規模事業者持続化補助金<一般型>において、「卒業枠」で採択を受けて、補助事業を実施した事業者ではないこと
【補助率と補助金額】
類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
補助率 | 2/3 | 2/3 (赤字事業者は3/4) |
2/3 | 2/3 | 2/3 |
補助上限 | 50万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 |
インボイス特例 | 50万円 |
⑦人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金とは、充実した職場環境をつくるために事業主や事業協同組合等に対して助成する制度です。人材確保支援助成金は、以下の7つのコースに分かれています。
- 介護福祉機器助成コース
- 中小企業団体助成コース
- 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
- テレワークコース
引用元:人材確保等支援助成金
各コースにおいて助成対象者や助成金額などが異なるので、詳しくは各コースの詳細を参考にしてください。
給付金(補助金・助成金)の申請時の注意点
給付金(補助金・助成金)の申請には、準備しておく資料が多いので、ギリギリになってから準備しないように注意しましょう。何度も行政機関に出向くことになり、準備不足だと多大な時間を要してしまいます。特に申請期限に近づいてから足りない資料が不足していると間に合わないこともあるので注意してください。
基本的に補助金や助成金は後払いです。創業時に必要なものは一度自身で払う必要があります。給付金(補助金・助成金)で後から返ってくると思い、高いコストをかけていると、審査に落ちたときのリスクが大きいので気を付けましょう。
まとめ
創業時に使える給付金(補助金・助成金)は以下の7つです。
- 創業促進補助金
- ものづくり補助金
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 人材確保等支援助成金
創業するときの状況などに応じて使える給付金(補助金・助成金)が異なるので、各給付金(補助金・助成金)について学んでおくことが大切です。給付金(補助金・助成金)を活用することで、他のことに資金を充てやすくなります。
給付金(補助金・助成金)は使って損はありません。ぜひ本記事を参考に、活用してください。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
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