NPO法人の事務所のルールとは|設立の手順や注意点を解説

[投稿日]2024年10月21日 / [最終更新日]2024年10月28日

NPO法人の事務所のルールとは|設立の手順や注意点を解説

「被災地支援をしたい」など、社会貢献をはじめとした目的をかなえるため、NPO法人の設立を考えている方はいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、NPO法人は事務所のルールを含め、設立の手順が複雑で、間違えるとトラブルのもとになります。

そこで今回の記事では、NPO法人の設立について、事務所のルールや手順、注意点など基本的なことをまとめました。すでに具体的に検討している方も、そうでない方もぜひ参考にしてください。

NPO法人制度とは

NPO法人とは、ボランティア活動などの特定非営利活動を行う団体に法人格を与え、市民の社会貢献活動を支援し、その健全な発展を促進するための制度

まず、NPO法人(特定非営利活動法人)の基本的な知識について、詳しく解説します。

特定非営利活動を行う団体に法人格を付与するもの

NPO法人とは、ボランティア活動などの特定非営利活動を行う団体に法人格を与え、市民の社会貢献活動を支援し、その健全な発展を促進するための制度です。

なお、NPO=非営利組織であれば、無条件に法人格が付与されるわけではありません。要件を満たす団体が都道府県、または政令市による認証を得て、法務局で登記を行うことで法人格が付与されます。

NPO法はなぜ作られたのか

ここで、NPO法人の根拠法令であるNPO法(特定非営利活動促進法)がなぜ作られたのかについて、解説します。

1995年1月17日に、阪神・淡路大震災が起き、神戸市を中心にした兵庫県南部に甚大な被害をもたらしました。その際、全国から多額の寄付金が集まるとともに、延べ180万人(1997年12月までの推定値)のボランティアが現地入りし、復興活動を行っています。

しかし、現地入りして活動したボランティア団体の大半は法人格がない任意団体で、社会的な認知がほとんどないという問題点が浮かび上がりました。認知がないことで寄付も受けにくく、寄付をした人も税制上の優遇が受けられないという制度的な欠陥が指摘されています。

そこで、ボランティア団体を含めた民間非営利団体の認知を高め、活動をしやすくするために、民間非営利団体の法人化を前提にした法律の整備が始まりました。その後、1998年3月25日に特定非営利活動促進法=NPO法が公布され、12月1日に施行されています。

特定非営利活動の具体例

NPO法によると、特定非営利活動とは、以下の20種類の分野に該当する活動を指します。さまざまな立場にある、幅広い人の利益に寄与する活動が含まれます。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11.      国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

引用元:特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要 | NPOホームページ

わかりやすい例として挙げられるのは、「子ども食堂の運営」や「若者の経済的・精神的支援」、「被災地の復興活動」に従事する団体です。100%NPO法人が行っている活動とは限りませんが、関与していることが多いといえます。

NPOとNGOの違い

NPOと似た言葉に、NGOがあります。両者の違いについても理解しておきましょう。NPOは「非営利組織(Non Profit Organization)」を表す言葉です。対してNGOは、「非政府組織(Non Governmental Organization)」を表す言葉として使われています。

いずれも営利を目的とせず、社会貢献を主な目的とする団体です。厳密な定義ではありませんが、日本では海外に向けた活動を行う団体をNGO、国内に向けた活動を行う団体をNPOということが多くなっています。

なお、NGO法人は法律上存在しません。NGOが法人格の取得を目指すなら、NPO法人もしくは一般社団法人を設立するのが選択肢です。たとえば、世界の紛争・貧困地域で医療活動を行うNGO「国境なき医師団」も、日本では「特定非営利活動法人 国境なき医師団日本」として活動しています。

NPO法人が満たすべき要件

NPO法人が満たすべき要件

NPO法人設立の手順については後述しますが、前提として法的に求められる要件を満たしているかを確認しなくてはいけません。具体的に満たす必要があるのは、以下の12の要件です。

  1. 特定非営利活動を行うことを主たる目的としている
  2. 営利を目的としない
  3. 宗教儀式、布教を目的としていない
  4. 政治団体としての活動を目的としていない
  5. 特定の政党・公職者(候補者)への推薦、支持、反対を目的としていない
  6. 社員が10名以上である
  7. 社員資格の取得・失効について不当な条件がない
  8. 理事3名、監事1名以上の役員を設置する
  9. 所定の欠格事由に該当しない
  10. 役員に一定数以上の親族等が含まれない
  11.      報酬を受ける役員が役員総数の3分の1以下である
  12. 暴力団もしくは暴力団員(構成員でなくなってから5年以内の者も含む)の支配下にある団体ではない

参考:NPO法人の設立/京都府ホームページ

NPO法人を設立するメリット

NPO法人を設立するメリット

NPO法人を設立するメリットとして、以下の3点が考えられるので、詳しく解説します。

  • 信用性・信頼性が上がる
  • 税制上の優遇が受けられる
  • 設立費用が安い

①信用性・信頼性が上がる

NPO法人を設立することで、法人格を取得することが可能です。そして、法人格を取得すると、株式会社や合同会社などと同様、法人としての契約行為や取引ができるようになります。

社会的な信用性や信頼性が上がっていき、その後の活動においてもプラスになるのが大きなメリットです。

②税制上の優遇が受けられる

NPO法人を設立すると、税制上の優遇が受けられます。代表的なものが「みなし寄附金制度」です。課税対象である収益事業による収益を課税対象でない特定非営利活動に使用する場合、非課税になります。

また、寄付をする側にとっても、寄附金控除や寄附金特別控除、個人住民税の控除を受けられるなど、一定のメリットが見込めます。

③設立費用が安い

設立費用が安いことも、NPO法人を設立するひとつのメリットといえます。

NPO法人を設立する場合、株式会社や合同会社とは違い、定款認証代・収入印紙代・登録免許税等は必要ありません。現実的にかかる費用は以下の通りで、数千円~数万円程度で済むと考えられます。

  • 印鑑作成費用
  • 住民票請求費用
  • 手続きに関する交通費や通信費、その他各種書類

NPO法人を設立するデメリット

NPO法人を設立するデメリット

一方、NPO法人を設立することにはデメリットもあるため注意が必要です。具体的なデメリットとして、以下の4点について解説します。

  1. 社員を10名以上集めないといけない
  2. 事務処理と情報処理が厳密
  3. 法人税を納めなくてはいけないこともある
  4. トラブルで罰金・過料・法人格取消もある

①社員を10名以上集めないといけない

まず、NPO法人を設立するためには、社員を10名以上集める必要があると法律で決まっています(特定非営利活動促進法第12条1項4号)。

自分1人だけでNPO法人を設立することは事実上できません。活動内容や趣旨に賛同してくれる協力者を集めることが最初の課題になるはずです。

②事務処理と情報処理が厳密

NPO法人を設立した場合、書類の作成や届出が義務付けられています。事務処理と情報処理を厳密に行わないといけません。具体的には以下のことを行う必要があり、期限内に問題なく済ませられるよう配慮が求められます。

  • 毎事業年度の事業報告書や決算書類の作成
  • 事業報告書や決算書類の所轄庁への提出・公開
  • 定期的な役員の変更(最低でも2年に1回)および所轄庁への届出・法務局への変更登記

③法人税を納めなくてはいけないこともある

NPO法人が行う事業が、法人税法における収益事業に該当する場合は、法人税を納めなくてはいけません(法人税法施行令第5条)。

また、NPO法人も法人の一種である以上、法人市民税を納める必要があります。ただし、収益事業を行っていない場合は、申請により免除・減免されることもあります。主たる事務所がある自治体に確認しましょう。

④トラブルで罰金・過料・法人格取消もある

NPO法人がトラブルを起こした場合、罰金・過料・法人格取消などのペナルティを受ける可能性があります。

たとえば、所轄庁から改善命令が出されていたのに、正当な理由なく改善措置を取らなかった場合です。このような場合は、役員(理事、監事)に50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、法人設立の認証を行ったのに6ヶ月過ぎても未登記だった場合、NPO法人の認証自体を取り消されることがあるので注意してください。

具体的な罰則については、NPO法の第6章(第77条~第81条)に定められています。事前に確認しておきましょう。

NPO法人設立の手順

NPO法人設立の手順

NPO法人設立の手順は以下の通りです。それぞれのステップで具体的にやるべきことについて解説します。

  1. 設立認証の申請
  2. 縦覧・審査・認証
  3. 法人設立登記手続き

①設立認証の申請

最初に、設立認証の申請として、所轄庁に以下の書類を添付した申請書を提出しなくてはいけません。

  • 定款
  • 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
  • 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
  • 役員の住所又は居所を証する書面
  • 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
  • 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
  • 設立趣旨書
  • 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  • 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

引用元:認証制度について | NPOホームページ

なお、ここでいう「所轄庁」とは、原則として地方自治体の担当部署になります。事務所の数と設置場所によって以下のように異なります。

2以上の都道府県に事務所を置くNPO法人「主たる事務所」の都道府県
1の都道府県内に事務所を置くNPO法人1の政令指定都市内のみに事務所を置くNPO法人当該政令指定都市
上記以外のNPO法人当該都道府県
引用元:所轄庁一覧 | NPOホームページ

②縦覧・審査・認証

設立認証の申請が行われると、縦覧・審査・認証に移っていきます。縦覧とは、自由に見る、または見てまわることです。以下の項目について公開し、申請書類を受理した日から2週間、市民に自由に見てもらいます。

  • 申請年月日
  • 法人・団体の名称
  • 代表者の氏名
  • 主たる事務所の所在地
  • 定款に記載された目的
  • 活動分野

その後、申請から3ヶ月以内に所轄庁による審査が行われ、結果が申請者に通知されます。

③法人設立登記手続き

審査の結果、認証されれば2週間以内に法務局で設立登記手続きを行う必要があります。登記する事項および登記の申請書の記載事項、添付書類は、以下のとおりです。

登記する事項・目的及び業務
・名称
・事務所の所在場所
・代表権を有する者の氏名、住所及び資格
・存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
・代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め
登記申請書の記載事項・申請人の氏名及び住所
・代理人によって申請するときは、その氏名及び住所
・登記の事由
・登記すべき事項(別紙として添付することも可能)
・所轄庁の許可(認証)書の到達した年月日
・申請年月日・登記所の表示(○○法務局等)
添付書類・定款
・代表権を有する者の資格を証する書面
・設立許可(認証)書又はその謄本
引用元: 設立の認証・手続き等 | NPOホームページ

NPO法人の事務所に求められる要件は?

NPO法人の事務所に求められる要件は?

現実的には、NPO法人を設立する場合、事務所も必要です。ここではNPO法人の事務所に求められる要件について、詳しく解説します。

書類の据え置き義務はある

まず、NPO法人を設立したら、一定の書類を事務所に保管しなければなりません特定非営利活動促進法第28条第1項及び第2項)。また、社員(正会員)や利害関係者から閲覧の申し出があった場合、正当な理由がある場合を除き、閲覧させる決まりになっています(特定非営利活動促進法第28条第3項)。

具体的には以下の書類を据え置く必要がありますので、忘れずに準備しましょう。

常時据え置く必要があるもの・定款
・役員名簿
・認証に関する書類の写し
・登記に関する書類の写し
5年間据え置く必要があるもの・事業報告書
・計算書類
・財産目録
・年間役員名簿
・社員のうち10人以上の者の名簿
引用元:ご確認ください! NPO法人の事務所に備え置かなければならない書類(PDF)

独立したオフィスに関する要件はない

不動産会社(宅建業)や派遣会社(人材紹介・派遣業)など、一部の業種は業務の性質上、法律で独立した事務所の設置が義務付けられています。

しかし、NPO法人にはそのような規制はありません。少なくとも、認証基準には事務所やオフィス、拠点に関する言及はないためです。

コスト抑制のためバーチャルオフィスの活用を

バーチャルオフィス1

NPO法人がコストを抑制するためには、バーチャルオフィスの活用も視野に入れましょう。そもそも、NPO法人は非営利組織であり、必要以上に利潤を追求することはできません。そのため、コスト削減の観点から、代表者・役員の自宅を事務所としているNPO法人があります。法律的には自宅を事務所とする方法も可能ですが、信頼性や安全性の面では、対外的なやり取りに使うビジネス用の住所があるほうが望ましいでしょう。

しかし、地域によっては物理的なオフィスを借りると莫大な費用がかかります。そのため、最初のうちはバーチャルオフィスに事務所を設置し、ある程度見通しが立ったあとに物理的なオフィスにシフトするのもひとつの方法です。

また、バーチャルオフィスを選ぶ際は、料金体系のわかりやすさもチェックしましょう。当社バーチャルオフィス1では、月額880円+郵送費用(税込)で、NPO法人のオフィスとして使える住所を借りられます。さらに東京都渋谷区、または広島県広島市中区の、都心一等地の住所をお使いいただくことが可能です(契約店舗により利用できる住所は異なります)。また、法人口座の開設実績も多数ございますので、NPO法人名義での口座開設をお考えの際も、安心してご利用いただけます。

NPO法人を設立したものの、代表者様のご自宅を事務所としている場合は、ぜひ一度バーチャルオフィス1の利用をご検討ください。

まとめ

NPO法人を設立する際は、事務所、オフィス、拠点に据え置かなければいけない書類のルールがあります。しかし、NPO法人の事務所に物理的なオフィスは必ずしも必要ではありません。

活動が軌道に乗り、スタッフが集まれる場所が必要になってきたら、物理的なオフィスを借りることを検討しましょう。それまではコスト削減のために、バーチャルオフィスを使うことも選択肢のひとつと考えてください。 

この記事の投稿者

バーチャルオフィス1編集部

東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1

月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。

https://virtualoffice1.jp/

この記事の監修者

株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑

株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役

2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。

東商 社長ネット 株式会社バーチャルオフィス1 牧野 傑
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