本店移転登記とは?必要書類から書き方、申請方法まで徹底解説

[投稿日]2025年03月17日

本店移転登記とは?必要書類から書き方、申請方法まで徹底解説

本店移転登記は、法人が本店所在地を移転する際に必要な手続きのことです。本店所在地の移転に伴い、具体的にどのような手続きをすれば良いか疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、本店移転登記の概要と必要書類・手続きのやり方を紹介します。後半では、本店移転登記申請書類の書き方もまとめているので、ぜひご参考ください。

本店移転登記とは?

本店移転登記とは?

本店移転登記とは、会社が本店所在地を変更した際に、法務局へ登記申請を行う手続きのことです。会社法により、本店移転日を起算日とし、2週間以内に登記申請を行わなければならないと定められています。

土日祝日など、本店移転日の2週間後が法務局の休業日にあたる場合は、翌営業日が期限日です。期限を過ぎてからでも登記申請は認められますが、ペナルティとして過料に処せられる可能性があります。

なお、本店移転には、同じ法務局の管轄内で移転する管轄内移転と、異なる法務局の管轄地へ移転する管轄外移転の2種類があります。それぞれ、手続きの方法や必要書類が異なるため、移転先を管轄する法務局を確認しておくことが重要です。

本店移転登記の費用

本店移転登記は大きく、自分で申請する方法と司法書士へ依頼する方法の2種類に分かれます。司法書士へ依頼する場合には費用こそ発生するものの、必要書類の作成〜登記申請の代行までを依頼でき、少ない労力で手続きを完結できます。

これを踏まえ、以下に本店移転登記でかかる費用の目安をまとめています。

登録免許税管轄内移転:3万円
管轄外移転:6万円
印鑑証明書の取得費用410〜450円/通
登記簿謄本取得費用450〜600円/通
司法書士への依頼報酬1万〜3万円
※定款の変更登記費用3万円
※本店所在地以外の変更による定款変更が必要な場合

本店移転登記の費用を大きく左右するのは、登録免許税と司法書士への依頼報酬です管轄内移転では、登録免許税が3万円なのに対し、管轄外移転では2倍の6万円です。

司法書士へ依頼する場合には、追加で1〜3万円の費用が発生します。なお、商号変更・事業目的変更など本店所在地以外の変更による定款変更も伴う場合には、別途で3万円がかかります。

本店移転登記の必要書類と提出先

本店移転登記の必要書類は、移転先や登記の変更有無によって異なります。以下では、管轄内移転・管轄外移転に分け、本店移転登記の必要書類をまとめています。

必要書類名管轄内移転管轄外移転提出先
本店移転登記申請書(旧法務局用)旧法務局
本店移転登記申請書(新法務局用)×旧法務局
株主総会議事録
※定款の変更がある場合
旧法務局
株主リスト
※定款の変更がある場合
旧法務局
取締役会議事録または取締役決定書旧法務局
委任状(旧法務局用)
※代理人に依頼する場合

※代理人に依頼する場合
旧法務局
委任状(新法務局用)×
※代理人に依頼する場合
旧法務局
印鑑届書×旧法務局

法務局の管轄内で本店移転をする場合

法務局の管轄内で本店移転をする場合の必要書類は、以下の通りです。

必要書類名管轄内移転提出先
本店移転登記申請書(旧法務局用)旧法務局
株主総会議事録
※定款の変更がある場合
旧法務局
株主リスト
※定款の変更がある場合
旧法務局
取締役会議事録または取締役決定書旧法務局
委任状(旧法務局用)
※代理人に依頼する場合
旧法務局

必ず提出を求められるのは、「本店移転登記申請書」と「取締役会議事録または取締役決定書」です。本店移転登記申請書は、移転前後の本店所在地を法務局へ報告するための書類です。

所定の項目を記載し、移転前の本店所在地を管轄する法務局へ提出します。また、取締役会議事録または取締役決定書も必ず提出しなければなりません。取締役会設置会社の場合は取締役会議事録を、取締役会非設置会社は取締役決定書を提出します。

なお、本店移転に伴い定款の変更がある場合には、株主総会議事録と株主リストを提出します。たとえば、定款に本店所在地の番地まで記載していた場合には、移転に伴い定款を変更する必要があります。

このほか、司法書士などへ本店移転登記を依頼する場合には、委任状の提出も求められます。

法務局の管轄外で本店移転をする場合

法務局の管轄外へ本店移転をする場合には、以下の必要書類が求められます。

必要書類名管轄外移転提出先
本店移転登記申請書(旧法務局用)旧法務局
本店移転登記申請書(新法務局用)旧法務局
株主総会議事録旧法務局
株主リスト旧法務局
取締役会議事録または取締役決定書旧法務局
委任状(旧法務局用)
※代理人に依頼する場合
旧法務局
委任状(新法務局用)
※代理人に依頼する場合
旧法務局
印鑑届書旧法務局

注意すべきは、本店移転登記申請書と委任状が2部必要なことです。1部は移転前の本店所在地を管轄する法務局用であり、2部目は移転後の住所を管轄する法務局用として利用されます。

管轄外移転では、定款の最小行政区画である市区町村も変更となるため、株主総会議事録と株主リストの提出が必須です。また、管轄する法務局が変更されることで、仮に同じ印鑑を使用する場合でも、新たに印鑑届出書を提出しなければなりません。

なお、上記表の必要書類の提出先は、すべて移転前の住所を管轄する法務局です。これは、移転前の住所を管轄する法務局が本店移転登記申請書と添付書類を受理し、移転後の住所を管轄する法務局へ共有する仕組みをとっているためです。必要書類の提出先を間違えないよう注意しましょう。

本店移転登記の申請方法4つ

本店移転登記の申請方法

ここでは、本店移転登記の申請方法を4つ紹介します。一般的に、以下4つの方法から自由に選択できます。

  • オンライン申請
  • QRコード付き書面申請
  • 郵送申請
  • 窓口申請

1.オンライン申請

オンライン申請とは、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して申請する方法です。法務局へ出向く必要がなく、申請システムの利用時間内であればいつでも登記申請できます。

郵送申請や窓口申請の場合には、登録免許税や登記手数料を領収証書又は収入印紙で納付しなければなりません。一方、オンライン申請は電子納付にも対応しているため、インターネットバンキングやATMから納付できます。

比較的利便性の高い方法ですが、初回利用時には申請ソフト等のダウンロードや初期設定などが必要です。また、慣れないうちは操作に時間がかかることが予測できるため、本店移転登記の期限に余裕を持って準備しておくと良いでしょう。

2.QRコード付き書面申請

QRコード付き書面申請は、オンライン申請と書面申請の中間に位置する方法です。「申請用総合ソフト」で作成した申請書のデータをオンライン上で提出し、その後印刷した登記申請書を法務局へ提出する流れです。

オンライン申請とは異なり、電子証明書がなくても利用できる点が特徴です。また、申請書類の作成や処理状況の確認をソフト内で完結できるため、書面申請よりもミスを軽減でき、より効率良く手続きを完結できます。

なお、申請後に補正が必要な場合には、法務局からメールで通知される仕組みです。書類の不備等をいち早く把握できるため、比較的短期間で補正申請ができます。

しかし、QRコード付き書面申請では、登記申請書等を郵送・窓口で提出しなければならない点に注意が必要です。申請書のデータを送信した時点では、登記の受付がされず、紙面の登記申請書を法務局へ提出した段階で受付が開始されます。

オンライン上でできるのは、あくまでも申請書類の作成と提出後の処理状況の確認のみです。オンライン申請や窓口申請が可能な場合はほとんどメリットが薄いため、自社の状況にあわせて利用を検討してください。

3.郵送申請

郵送申請は、管轄の法務局へ必要書類を郵送する方法です。送付方法の指定はないため、普通郵便で送ることも可能です。

しかし、登記申請書は重要度の高い書類のため、郵便物の送達過程を追跡できる書留等の利用が推奨されています。郵送申請では窓口を訪問する必要がないため、自身の都合に合わせやすい点がメリットです。

また、オンライン申請のような初期設定も不要であり、必要書類を用意できればすぐに送付できます。ただし、ポストへの投函から法務局へ届くまでに時間がかかる点がデメリットです。

書類に不備があると、補正書の提出でさらに時間がかかるため、本店移転登記の期限に注意が必要です。

4.窓口申請

窓口申請は、管轄の法務局を訪れて必要書類を提出する方法です。窓口まで出向く手間がかかりますが、不明点を直接確認できる点はメリットです。

また、書類の不備を指摘してもらえる可能性があるため、本店移転登記を自分で行うことに不安を感じている方におすすめです。ただし、窓口申請をするには、事前予約が必要な点に注意が必要です。

電話又は窓口で予約を受け付けているため、管轄の法務局へ問い合わせてください。なお、窓口申請では1回の対応につき20分までと時間制限が設けられています。

不明点が多数ある場合には、質問する内容をまとめておくと安心です。

本店移転登記申請書の書き方

本店移転登記申請書は、主に管轄内移転と管轄外移転とで書き方が異なります。ここでは、記入例を用いながら、各ケースの具体的な書き方を紹介します。

管轄内移転の場合

本店移転登記申請書 管轄内移転の場合

管轄内移転の場合には、現在の住所地を管轄する法務局用の本店移転登記申請書1部を作成します。本店移転登記申請書の書き方で注意すべきは、以下の記載項目です。

  • 本店:移転前の本店所在地
  • 登記すべき事項:移転先の本店所在地
  • 申請人:移転先の本店所在地
  • 代表取締役 印:法務局へ提出している印鑑

上記には、移転前・移転先の本店所在地が混在するため、間違えがないよう注意が必要です。また、代表取締役の印鑑には、法務局へ提出している印鑑を押印しなければなりません。

各記載項目を埋めた後には不備がないかを確認し、万全の状態で書類を提出してください。

管轄外移転の場合

管轄外移転の場合、移転前の法務局と移転先の法務局用の2部の本店移転登記申請書が必要です。まずは、移転前の法務局用の本店移転登記申請書の書き方を見ていきましょう。

本店移転登記申請書 管轄外移転の場合

移転前の法務局用の本店移転登記申請書では、以下の記載項目に注意が必要です。

  • 本店:「移転前」の本店所在地
  • 登記すべき事項:「移転先」住所に本店移転
  • 代表取締役 印:「移転前」の法務局に提出している印鑑

移転前の法務局用の本店移転登記申請書では、「〇〇へ本店を移転します」という趣旨を伝える必要があります。したがって、本店移転登記申請書の本店や代表取締役の印鑑には移転前の情報を、登記すべき事項には移転先の情報を記載します。

次に、移転後の法務局用の本店移転登記申請書です。具体的な書き方は以下の通りです。

本店移転登記申請書 管轄外移転の場合

こちらは、移転後の法務局に「〇〇から本店を移転します」という趣旨を伝えるのが目的です。そのため、登記すべき事項以外には、移転先の本店所在地を記入します。

万が一記載項目に誤りがあると、最悪の場合受理されない恐れがあります。移転前の法務局用と記載項目が混在しないよう、注意しながら申請書を作成してください。

本店移転登記をする際の注意点

本店移転登記の注意点

ここでは、本店移転登記をする際の注意点を紹介します。具体的には、以下3点に注意が必要です。

  • 移転日を起点に、2週間以内に本店移転登記を申請する
  • 移転先住所を管轄する法務局を調べる
  • 移転先住所での登記済み称号を確認する

移転日を起点に、2週間以内に本店移転登記を申請する

本店移転登記は、移転日を基準に2週間以内に申請する必要があります。もし期限を過ぎた場合でも登記申請自体は可能ですが、会社法違反となり、過料(罰金)の対象になることがあります。

会社法第976条には、違反があった場合に「代表者又は支配人に百万円以下の過料に処する。」との記載があります。仮に、長期間放置すると、金融機関や取引先からの信用低下につながる恐れがあるため、速やかに対応することが重要です。

移転先住所を管轄する法務局を調べる

本店移転登記を申請する際は、移転先の住所を管轄する法務局を事前に調べることが重要です。これは、管轄内移転と管轄外移転によって必要書類や記載内容が異なるためです。

特に近隣の市区町村へ本店移転する場合、管轄内移転だと思っていても、実は別の法務局の管轄地域だったというケースがあります。管轄を誤ると、登記申請が受理されないこともあるため、移転先の住所がどの法務局の管轄に属するのかを、法務局の公式サイトで確認しておきましょう。

参考:管轄のご案内|法務局

移転先住所での登記済み称号を確認する

本店移転登記を行う際には、移転先住所ですでに同じ商号(会社名)が登記されていないか事前に確認しましょう。これは、会社法で「同一商号・同一本店の禁止」が定められているためです。

具体的には、同じ住所にすでに登記されている会社と完全に一致する商号を使用することが禁止されています。仮に同じ商号で本店移転をしようとすると、登記申請が却下されます。

基本的に同一商号・同一本店の禁止は、同じビルであっても部屋番号が異なれば適用されません。しかし仮に登記できても、同じビル内に同じ商号の会社があると、郵便物の誤送や来訪者の混乱につながる恐れがあります。

そのため、本店移転を計画する際には、法務局の商業登記簿で事前に検索を行い、移転先住所での商号の重複がないかを確認することが重要です。

本店移転登記後に必要な手続き

本店移転登記が完了した後も、各行政機関や取引先で住所変更の手続きが必要な場合があります。一般的に、本店移転後に必要な手続きは以下の通りです。

提出先必要書類
税務署・異動届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
日本年金機構・適用事業所名称所在地変更届
労働基準監督署・労働保険名称所在地等変更届
ハローワーク・雇用保険事業主事業所各種変更届
都道府県税事務所・異動届出書
市町村役場・異動届
銀行・クレジットカード会社・金融機関の指定する変更届
・登記事項証明書
・代表者の本人確認書類など
インターネット・電話回線など・各事業者の指定する変更届

特に行政機関での手続きでは、期限が設けられているケースがあります。また、各種必要書類の要件や提出先が、管轄する機関によって異なるため、細かく確認しておくことが重要です。

信用力を高めるなら本店移転を機にバーチャルオフィスの利用を検討しよう

一等地の住所取得ならバーチャルオフィスがおすすめ

本店移転を機に事業の信用力を高めるなら、バーチャルオフィスの利用がおすすめです。バーチャルオフィスを活用すれば、一等地の住所を低コストで利用できるためです。

バーチャルオフィスは主に、都市部のビジネスエリアに拠点を持つケースが多いため、そこで事業用の住所を借りることで信用力を高めやすくなります。たとえば、東京の渋谷区・新宿区などは、誰もが一度は耳にしたことのある住所です。

本店所在地にバーチャルオフィスの住所を利用することで、金融機関や取引先の信用を得やすくなる可能性があります。事業を有利に進めるためにも、本店移転を機にバーチャルオフィスの利用を検討してみるのがおすすめです。

まとめ

本記事では、本店移転登記の概要を紹介しました。本店移転登記は、本店所在地を変更した際に、法務局へ登記申請を行う手続きのことです。

登記手続きには2週間の期限が設けられているため、本店所在地を移転した場合には速やかに手続きをする必要があります。本店の移転をお考えの方は、ぜひ本記事で紹介した必要書類や本店移転申請書の書き方を参考に、手続きをしてみてください。

この記事の投稿者

バーチャルオフィス1編集部

東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1

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この記事の監修者

株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑

株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役

2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。

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