バーチャルオフィスで許認可は取得できる?要件や具体的職種、対策方法を解説

[投稿日]2024年12月02日 / [最終更新日]2025年01月14日

バーチャルオフィスで許認可は取得できる?要件や具体的職種、対策方法を解説

バーチャルオフィスで許認可は取得できますか?

バーチャルオフィスでは、事業用の住所をレンタルできるだけで実際の執務スペースは利用できないため、一部の許認可を取得できません。特に、事業所に関する要件が定められている場合、開業が認められない傾向にあります。

事業において実際の執務空間が不要な場合、多くのメリットを有するバーチャルオフィスの活用がおすすめです。しかし、一部の業種では許認可を取得できないケースがあります。許認可が必要な業種で開業する方は、取得できない例や対策方法を必ず確認しましょう。

本記事では、バーチャルオフィスで許認可を取得できない業種や対策方法などを解説します。

バーチャルオフィスとシェアオフィス、レンタルオフィスの違いはこちら

バーチャルオフィスで許認可は取得できる?

バーチャルオフィスで許認可は取得できる?

バーチャルオフィスでは、事業用の住所をレンタルできるだけで実際の執務スペースは利用できないため、一部の許認可を取得できません。特に、事業所に関する要件が定められている場合、開業が認められない傾向にあります。

たとえば、労働派遣事業を開業する場合、以下の要件を満たした事業所が必要です。

  • 事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上
  • 使用目的が事務所である
  • 事務所の独立性が保たれている
  • 個人的秘密情報を保持し得る構造である
  • 事業の運営に好ましくない場所(風俗営業が密集するなど)ではない

上記の要件を満たすためには、レンタルオフィスや賃貸事務所の契約が求められます。許認可が必要な事業を営む場合、事前に要件を確認することが大切です。

参考:許可基準
参考:よく聞かれるご質問集 – 東京労働局 | 東京労働局

そもそも許認可とは?

許認可とは、特定の事業を開始するために必要な許可・認可を指します。申請先は、都道府県や市区町村、警察署を含む各種行政機関です。具体的な手続きは許認可の種類によって異なります。また、許認可は大きく以下の5つに分類されます。

許認可の種類手続きの内容
届出行政機関に事業内容を通知したら事業の開始が可能(審査や承認は不要)
登録行政機関に申請書を提出し、所定の名簿に登録されたら事業の開始が可能
認可行政機関に申請書を提出し、審査・承認を経て、認可を取得したら事業の開始が可能
許可法令で定められた要件を満たし、行政機関から許可を取得したら事業の開始が可能
免許特定の資格を所有し、法令で定められた要件を満たしたうえで、行政機関から免許を取得したら事業の開始が可能

法令で定められた許認可を取得せずに事業を開始すると、行政指導や罰則の対象となるので注意しましょう。

バーチャルオフィスで許認可を取得できない業種の例

バーチャルオフィスで許認可を取得できない業種の例

バーチャルオフィスでは、事業所の要件が定められている許認可を取得できない傾向にあります。知らずに開業準備を進めてしまうと、許認可を取得できない、もしくは行政指導の対象となるかもしれません。

ここでは、バーチャルオフィスでは許認可を取得できない代表的な業種を紹介します。

古物商

古物商とは、古物(中古品や新古品)の売買・交換などを行う業種です。具体的な事業例をいくつか紹介します。

  • 中古品を仕入れて有料販売を行う
  • 中古品販売を代理で担い、手数料を受け取る
  • 中古品を物と交換して仕入れる

古物商を営むには、都道府県公安委員会から古物商許可の取得が必要です。許可を取得するためには、以下の要件を満たした事業所が求められます。

  • 一定期間の使用権原がある
  • 独立して管理できる設備構造である

したがって、実際の執務空間をレンタルできないバーチャルオフィスでは、古物商を開業できません。ただし、開業届に提出する住所や、本社の住所としてバーチャルオフィスを利用することは可能です。詳しくは「バーチャルオフィスは古物商の営業所として使用できる?」で解説しています。

一部の士業

以下のような一部の士業は、許認可の要件として実際のオフィススペースが必要とされているため、バーチャルオフィスでの開業ができません。

  • 税理士
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 弁護士

ただし、令和4年には税理士制度が見直され、事業所の要件が緩和されました。いまだバーチャルオフィスでの開業は認められていませんが、今後の動向によっては要件が変化する可能性があるでしょう。

一方で、以下のようにバーチャルオフィスでの開業が認められている士業はあります。バーチャルオフィスで開業したい士業は、必ず要件を確認することが大切です。

  • 公認会計士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 中小企業診断士 など

ただし、詳細な取り扱いは各都道府県で異なる可能性があります。お住いの地域の規定を確認のうえ、バーチャルオフィスの利用を検討しましょう。

公認会計士・税理士のバーチャルオフィスでの開業についてはこちら▼

不動産業

以下のような不動産業(宅建業)は、バーチャルオフィスでの開業ができません。

  • 不動産の売買
  • 不動産賃貸の代理・媒介 など

宅地建物取引業法の定めにより、継続的に業務を遂行できる事務所を設置しなければならないためです。また、事務所に関する以下の要件が定められています。

  • 標識の掲示
  • 報酬額の掲示
  • 帳簿の備え付け
  • 従業者名簿の備え付け
  • 成年者である専任の宅地建物取引士(宅建士)の設置

つまり実体のある事業所が必須な不動産業は、バーチャルオフィスだと許認可を取得できません。

参考:宅地建物取引業法

人材派遣業

人材派遣業とは、雇用した労働者を派遣先での労働に従事させ、派遣先企業から対価を受け取る業種を指します。人材派遣業の許可を取得するためには、以下の要件を満たした事業所が必要です。

  • 事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上
  • 使用目的が事務所である
  • 事務所の独立性が保たれている
  • 個人的秘密情報を保持し得る構造である
  • 事業の運営に好ましくない場所(風俗営業が密集するなど)ではない

事業で使用できるスペースがないバーチャルオフィスでは、許可を取得できません。

参考:許可基準
参考:よく聞かれるご質問集 – 東京労働局 | 東京労働局

有料職業紹介事業

有料職業紹介事業とは、求職者に求人を紹介し、仲介手数料を得る業種を指します。有料職業紹介事業の許可を取得するためには、以下のいずれかを満たした事業所が必要です。

  • おおむね20㎡以上の事業所
  • 個室の設置やパーテーションなどでの区分により、プライバシーを保護した対応ができる事業所

オフィスの実体のないバーチャルオフィスでは、許可の要件を満たせません。(2023年4月21日厚生労働省に確認済み)

参考:有料職業紹介事業 許可要件(概要)

金融商品取引業

バーチャルオフィスでは、金融商品取引業の許認可を取得できません。金融商品取引業とは、文字通り金融商品を取り扱う業種です。具体例をいくつか紹介します。

  • 証券会社
  • 外国為替証拠金取引業者
  • ファンド運営会社
  • 投資信託委託会社
  • 投資顧問会社

金融商品取引業を営むには、金融庁での登録審査手続きが必要です。登録審査手続きでは、登記事項証明書の提出を求められます。しかし、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」には、バーチャルオフィスでの開業を認めない旨の記載があります。

主たる営業所又は事務所及び適格機関投資家等特例業務等を行う営業所又は事務所が、いわゆるバーチャルオフィスとなっていないか(届け出られた営業所等が、例えば短期間の契約によるレンタルオフィスである場合など、当該営業所等以外の場所で適格機関投資家等特例業務等を行っていることが想定される場合には、ヒアリングや関係資料の徴求などにより、実態把握に努めるものとする。)。

引用元:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

訪問介護業

バーチャルオフィスでは、訪問介護業の許可を取得できません。訪問介護業の許可を取得するためには、介護保険法に基づき、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 法人であること
  • 人員基準を満たしていること
  • 設備・運営基準に従い適正な運営ができること

また設備基準では、事業所に以下の設備を備えることが義務付けられています。

  • 指定の備品を備えた事務室
  • プライバシーに配慮された受付・相談スペース
  • 手指洗浄設備

また、事務室には個人情報などが記載された書類を保管する書庫(鍵付き)が必要です。バーチャルオフィスでは上記の設備要件を満たせないことが多く、訪問介護業は開業できません。

参考:指定訪問介護事業者 指定申請の手引き(PDF)

旅行業

観光業を営む場合、観光庁または都道府県から登録を受ける必要がありますが、バーチャルオフィスでは開業が認められません。旅行業とは、以下のような事業を営む業種を指します。

  • 企画旅行の実施
  • 手配旅行
  • 旅行相談 など

旅行業法では、以下の3つの書面を営業所に提示・据え置きしなければならないと定められています。下記書類を提示・据え置きできないバーチャルオフィスでは、旅行業の開業は不可能です。

  • 標識の提示
  • 旅行業務取扱料金表の提示
  • 旅行業約款の据え置き

参考:旅行業法│e-Gov 法令検索

探偵業

探偵業とは、他人の依頼を受けて聞き込みや尾行、張り込みなどを行い、調査結果を依頼者に報告する業種です。探偵業を開業するためには、所轄警察署経由で都道府県公安委員会に届出を行う必要があります。しかし、探偵業者は、以下の書類を事業所に提示・備え付けしなければなりません。

  • 標識の提示
  • 従業員名簿の備え付け

つまり、探偵業において実体のある営業所は必須です。オフィスを利用できないバーチャルオフィスでは開業できません。

参考:探偵業について|警察庁Webサイト

建設業

建設業とは、施工管理や設計、技術開発など幅広い業務を行う業種です。建設業の開業では、建設業法に基づき、都道府県もしくは国土交通省から許可を取得する必要があります。

しかし、見積もりや入札、請負契約締結などの営業は各営業所で行うことが前提とされています。また、営業所ごとに専任技術者の設置が必要です。つまり、実体のある事業所を用意できないバーチャルオフィスでは、建設業は開業できません。

参考:建設産業・不動産業:許可の要件 – 国土交通省

クリーニング業

クリーニング業とは、溶剤や洗剤を用いて、衣類や皮革製品などを原型のまま洗濯する事業です。クリーニング業を営むためには、都道府県に対して届出を提出する必要があります。

届出には、クリーニング所の構造設備などの記載が必要であり、原則として洗濯機と脱水機をそれぞれ一台以上備えなければなりません。つまり、営業所を用意できないバーチャルオフィスでは、クリーニング業の開業は不可能です。

なお、クリーニング所を開設しない無店舗取次店であっても、届出時に構造設備の概要の提出が必要です。通常のクリーニング業と同様、バーチャルオフィスでの開業は難しい点に注意しましょう。

参考:クリーニング業法│e-Gov 法令検索
参考:クリーニング所 東京都保健医療局

自動車解体業

自動車解体業とは、使用済みの自動車の解体を行う業種です。自動車解体業を営むためには、事業所を所轄する都道府県から許可を得る必要があります。

許可基準には、施設基準と能力基準、人的基準が定められています。施設基準のうち解体作業場に関する主な要件は以下の通りです。

  • 使用済自動車から廃油および廃液を回収できる装置を有する
  • 床面を鉄筋コンクリートで築造する、または鉄筋コンクリートと同等以上の効果を有する措置が講じられている
  • 油水分離装置および接続している排水溝が設けられている
  • 屋根、覆いその他床面に雨水等がかからないようにするための設備を有する

解体作業場が必要になる自動車解体業は、実際のスペースをレンタルできないバーチャルオフィスでの開業は困難です。

参考:使用済自動車の再資源化等に関する法律施行規則│e-Gov 法令検索

貨物利用運送事業

貨物利用運送事業とは、依頼主へ運送業者を手配し、荷物を目的地まで送り届ける業種です。開業の際は、管轄の運輸支局または運輸局に許可の申請を行う必要があります。しかし、第一種と第二種とも、使用権原のある営業所・店舗を有していることが許可の要件とされています。

つまり、実際の営業所を用意できないバーチャルオフィスでは、貨物利用運送事業を開業できません。

廃棄物処理業

廃棄物処理業とは、廃棄物を収集・運搬・処分する事業です。廃棄物処理業を開業するためには、管轄の市町村もしくは都道府県から許可を得る必要があります。

許可基準は、施設に係る基準と申請者の能力に係る基準が定められています。施設に関する基準は、「取り扱う廃棄物の性状に応じた適正な処理のできる施設を有すること」です。つまり、実体のある事業所を用意できないバーチャルオフィスでは、廃棄物処理業の開業はできません。

参考:廃棄物処理業の許可制度について

風俗営業

キャバレーやスナック、麻雀店を含む風俗営業の開業時は、管轄の警察署への許可申請が必要です。しかし、申請時は「営業所の平面図および営業所周囲の略図」の提出が必要となるため、バーチャルオフィスでの開業はできません。

また、バーチャルオフィス自体が風俗営業での利用を認めていないケースがあります。他の利用者のブランドや評判に影響を及ぼす可能性があるためです。なお、バーチャルオフィス1ではアダルトやギャンブル、ネットワークビジネスなどでの利用は認めておりません。

バーチャルオフィスで許認可を取得できない場合の対処法

バーチャルオフィスで許認可を取得できない場合の対処法

事業所の要件が理由となり、バーチャルオフィスで許認可を取得できない場合は、レンタルオフィスの活用を検討しましょう。

レンタルオフィスとは、占有できるオフィスをレンタルできるサービスです。レンタルオフィスなら、事業所の要件が定められている許認可を取得できる可能性があります。バーチャルオフィス事業者のなかには、レンタルオフィス事業を提供しているケースがあるので、確認してみましょう。

また、許認可の要件は緩和される例があるため、必ず最新の情報を確認することが大切です。たとえば、有料職業紹介事業は従来20㎡以上の個室が必須でしたが、現在は広さの要件を満たすか、個室スペースを設置するかのいずれかをクリアしていれば、許可を取得できます。比較的面積が狭いレンタルオフィスでも許認可を取得できる可能性があるでしょう。

当社バーチャルオフィス1(東京渋谷店)では、個室のレンタルオフィスを提供しています。事業所の要件がある許認可を取得したい方は、ぜひご検討ください。詳しくは「渋谷店のレンタルオフィス(個室プラン)」で紹介しています。

まとめ

バーチャルオフィスにはさまざまなメリットがありますが、一部許認可を取得できないケースがあります。特に事業所の要件が定められている許認可は取得できない可能性が高いので、注意しましょう。

許認可が必要な事業で開業する場合は、必ず事前に要件を確認することが大切です。許認可を取得せずに開業してしまうと、行政指導や罰則の対象となります。

事業所の要件が求められる許認可を取得する際は、レンタルオフィスの活用が有力な選択肢です。バーチャルオフィス1東京渋谷店では、オプションとしてレンタルオフィス(個室プラン)を提供しておりますので、ぜひご検討ください。

この記事の投稿者

バーチャルオフィス1編集部

東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1

月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。

https://virtualoffice1.jp/

この記事の監修者

株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑

株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役

2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。

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