
個人事業主であっても事業は営めますが、法人化することで、節税につながったり、社会的な信用度が増したりして事業に有利になるのも事実です。また、事業の内容や取引先の意向によっては、法人化しないと事業を続けづらくなることもあります。
このように、法人化することで明らかなメリットがある場合や、必要に迫られた場合は個人事業主から切り替えを進めましょう。本記事では、個人事業主から法人へ切り替える具体的なタイミングやメリット・デメリットについて解説します。
目次
個人事業主と法人の違い

まず、個人事業主と法人の違いについて理解しましょう。
個人事業主とは、法人を設立したり、特定の組織に所属したりすることなく、個人として事業を営む自然人のことです。一方、法人とは法律により自然人とは別に権利義務を認められた存在のことで、具体的には以下のものが該当します。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
- 社団法人
- 財団法人
- NPO法人 など
その他の点でも、以下の表のようにさまざまな違いがあります。
個人事業主 | 法人 | |
手続き | 開業届青色申告を希望する人は「青色申告承認申請書」も提出(税務署) | 法人登記会社設立に必要な書類や会社印の用意が必要(法務局)設立届青色申告を希望する人は「青色申告承認申請書」も提出(税務署) |
手続きにかかる費用 | 0円 | 株式会社約18万円~合同会社約6万円~ |
事業の廃止 | 届出を出す | 解散登記・公告などが必要(費用がかかる) |
税金 | 所得税、個人住民税、消費税、個人事業税など | 法人税、法人住民税、法人事業税、消費税など |
税務申告 | 所得税の申告のみ | 法人税、法人住民税、法人事業税など |
社会的信用 | 法人に比べて低い | 高い |
社会保険 | 国民健康保険、国民年金など | 健康保険、厚生年金保険など |
赤字の繰越 | 3年(青色申告の場合) | 最長10年(青色申告の場合) |
より詳しい話は、以下の記事を参考にしてください。
詳しい記事はこちら▼
個人事業主が法人化する適切なタイミング

個人事業主が法人化する適切なタイミングはケースバイケースですが、具体例として考えられるものを4つ紹介します。
- 事業所得が800万円を超過したとき
- 事業を拡大したいとき
- 資金調達が必要なとき
- 取引先から求められたとき
事業所得が800万円を超過したとき
事業所得が800万円を超過したときは、個人事業主から法人化を図るタイミングのひとつ。支払うべき法人税が、所得税より安くなる可能性があるためです。
前提として、所得税および法人税の税率は以下のようになっています。
【個人事業主の所得税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
【法人税の税率】※資本金1億円以下の普通法人を想定
課税される所得金額 | 税率 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円越の部分 | 23.20% |
仮に、事業所得(課税所得)が800万円ちょうどだった場合、所得税と法人税は以下のようになります。
所得税 | 800万円×23%-63万6,000円 =120万4,000円 |
法人税 | 800万円×15% =120万円 |
なお、これはあくまでひとつの試算例です。法人化すべきかは法人化した際の報酬額や利用できる所得控除、事業以外の所得の有無など、さまざまな条件に左右されます。実際に法人化すべきかどうかは個々の事例により異なるので、事業所得が700万円を超えた頃から税理士に相談を始めておきましょう。
事業を拡大したいとき
事業の拡大を考えている場合も、法人化を検討すべきタイミングといえます。
たとえば、事業の拡大にあたって、社員・アルバイトの採用を行う場合、法人化して社会保険に加入することで、人材を確保しやすくなるのも事実です。特に「老後、受け取れる年金を増やしたいから社会保険に加入している職場で働きたい」と考えている優秀な人材を確保したい場合、法人化することは必須になります。
また、詳しくは後述しますが、税制上の優遇や対外的な信用度のアップなど、事業の拡大にプラスになるメリットを法人化により享受することが可能です。
資金調達が必要なとき
資金調達が必要になるときも、法人化を検討すべきタイミングといえます。法人化すれば、株式の発行などにより資金調達が可能です。
また、銀行などの金融機関によっては、法人にしか融資を行わない方針を取っていることがあります。補助金・助成金のなかにも、法人であることが応募条件とされているものがあるので、個人事業主でいるよりは、資金調達の手段が広がるでしょう。
取引先から求められたとき
金融機関に限らず、大手企業などは、法人としか取引をしないという方針を取っているケースが少なくありません。法人は登記簿謄本を確認すれば、事業を営んでいる実態があるかを確認できることから、信用力が担保されるためです。
このような法人としか取引をしない方針を取っている企業からの受注があった場合は、法人化をせざるを得ない場合があります。仮に、個人事業主のまま事業を続けるつもりで、法人化するつもりがなかったとしても、必要に迫られて法人化することはあるかもしれません。
法人化するなら、本店所在地として使っても問題がない自宅以外の住所を確保しておくのが重要です。営む事業の内容にもよりますが、可能なら料金が安く済むバーチャルオフィスを使って、上手に経費を削減しましょう。
個人事業主から法人化するメリット

個人事業主から法人化するメリットとして、以下の6つが挙げられるので詳しく説明します。
- 節税になる
- 赤字(欠損金)を10年間繰り越せる
- 任意で決算月を決められる
- 信用度が増す
- 無限責任から有限責任になる
- 事業を継承できる
①節税になる
個人事業主から法人化することで、税制上のメリットを享受できます。
代表的な例として挙げられるのが、役員報酬の経費計上です。つまり、法人代表者(社長)に役員報酬を支払った場合、その報酬は経費として計上でき、結果として事業所得が減ります。さらに役員報酬は、会社員など一般的な労働者が受け取る給与と同様、法的には給与として扱われます。そのため、役員報酬を受け取った法人代表者自身も給与所得控除を受けられ、二重の意味で節税が可能です。
給与所得控除とは
給与所得控除とは、所得税の計算にあたり、1年間で請け負った給与などの収入額から差し引ける一定の金額のことです。収入金額により、以下のように決まっています。
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円から180万円まで | 収入金額×40%-10万円 |
180万0,001円から360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万0,001円から660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万0,001円から850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万0,001円以上 | 195万円(上限) |
たとえば、個人事業主として事業所得を1,000万円得ていた場合と、法人代表者として法人から同額の役員報酬を受け取っていた場合の税金を比較してみましょう。
個人事業主 | 1,000万円×33%-153万6,000円 =176万4,000円※税率はこちらを参考 |
法人代表者 | (1,000万円-195万円)×23%-63万6,000円 =121万5,500円 |
退職金の扱い
個人事業主では経費にできない退職金も、法人成りをすれば損金に含められ、節税につながります。ただし、あくまで「適正額であること」が条件です。功績倍率と勤続年数に基づいて計算するなど、確かな根拠で金額を決めないといけません。
無制限に受け取りたい額を損金に含めてしまうと、税務調査の際に追及される恐れがあるので注意しましょう。
②赤字(欠損金)を10年間繰り越せる
赤字(欠損金)を10年間繰り越せることも、法人化により得られるメリットです。個人事業主であっても赤字は繰り越せるものの、赤字が生じた翌年から3年間に限定されています。
赤字が小さければ3年間でも相殺できるかもしれませんが、大きければ大きいほど難しくなります。繰り越せる期間が長いほうが、赤字を相殺できる確率が高まるでしょう。
③任意で決算月を決められる
法人であれば、個人事業主とは違って決算月を任意で決められます。
個人事業主の場合、事業年度は毎年1月1日から12月31日(暦年)と決まっており、自分の都合で決算月は決められません。しかし、法人であれば事業の繁忙期を外すなど、自社の都合で決算月を決められるので、余裕を持って対応が進められるでしょう。
④信用度が増す
法人化すると、個人事業主の場合に比べて信用度が増すというメリットがあります。
個人事業主の場合、店舗の所在地などを登記する義務はありません。第三者が事業の実態を確認することが難しく、信用度は低いといえます。対して法人の場合、登記が義務付けられていることで、第三者でも会社の所在地、資本金、役員などの重要事項を確認することが可能です。
また前述したように、企業によっては法人としか取引をしないという方針を取っていることがあります。ある程度の信用力を担保するという意味でこのような扱いにしていることが考えられるので、意向を伝えられたらできるだけ従いましょう。
⑤無限責任から有限責任になる
個人事業主が法人化することで、無限責任から有限責任になり、賠償範囲を狭くできます(合名会社、合資会社を除く)。仮に、業績が悪化した場合、個人事業主であれば仕入先への支払いや金融機関からの融資の返済、滞納した税金の支払いなどをすべて自らの責任で行わないといけません。
対して法人であれば、責任はあくまで出資額に限定されます(個人保障が付与された借入は除く)。個人事業主と比べると、賠償範囲は小さくなる点がメリットです。
⑥事業を継承できる
将来、自分の家族に事業を継承させることを考えているなら、法人成りをしておくのが望ましいでしょう。
前提として、個人事業主の場合、事業主が体調を崩したり、亡くなってしまったりすると、廃業せざるを得ません。家族が同じ事業を続けていくことは可能ですが、その場合は一度廃業したうえで、改めて開業届を出す必要があります。さらに許認可が必要な事業であった場合、改めて認可を受けなければなりません。
対して法人なら、法人代表者が引退したり、亡くなってしまったりした場合でも、代表者を交代させることで事業を続けることが可能です。
個人事業主から法人化するデメリット

個人事業主から法人化するメリットは大きいですが、デメリットもあります。具体的なデメリットとして、以下の5点について解説します。
- 法人設立時に費用がかかる
- 赤字でも税金の支払いがある
- 社会保険への加入が必須になる
- 事務手続きなどが増える
- 役員報酬(給与)が毎月同額になる
①法人設立時に費用がかかる
個人事業主とは違い、法人を設立するためには費用がかかります。以下のように、かかる費用は法人の種類によって異なりますが、基本的に無料では済みません。
株式会社 | 合同会社 | 一般社団法人 | 一般財団法人 | NPO法人 | |
合計費用(目安) | 約25万円+資本金 | 約10万円+資本金 | 約11万円 | 最低311万円 | 不要 |
資本金等 | 1円以上 | 1円以上 | 不要 | 300万円以上 | 不要 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 | 6万円 | 6万円 | 不要 |
定款認証手数料 | 約5万円 | 不要 | 約5万円 | 約5万円 | 不要 |
定款の印紙代 | 4万円(電子定款なら不要) | 4万円(電子定款なら不要) | 不要 | 不要 | 不要 |
謄本手数料1ページ×250円 | 約2,000円 | 約2,000円 | 約2,000円 | 約2,000円 | 不要 |
その他費用 | 約1万円 | 約1万円 | 約1万円 | 約1万円 | 約1万円 |
法人設立時の費用について詳しくはこちら▼
②赤字でも税金の支払いがある
法人の場合、個人事業主とは違い、たとえ赤字になったとしても法人住民税を支払わなくてはいけません。
金額は事業所のある自治体によって異なりますが、参考までに、東京都の場合だと7万円(資本金1,000万円以下かつ従業員50名以下)かかります。具体的にいくらかかるのかは、税理士もしくは事業所のある自治体に確認しておきましょう。
③社会保険への加入が必須になる
法人化したら、社会保険(健康保険、厚生年金保険など)への加入が義務付けられ、保険料の半額を法人が負担する必要があります。
保険料を負担するための資金を確保する必要があるうえ、手続きが増える点がデメリットです。
④事務手続きなどが増える
法人化すると、個人事業主のときよりも作成すべき書類が増えるうえに、手続きも複雑です。会社設立後に税務署に提出する書類だけをとっても、以下のように多くの書類を作成・提出しなくてはいけない可能性があります。
提出書類 | 提出期限 | |
必須 | 法人設立届出書 | 設立日から2ヶ月以内 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 給与の支払いを行う事務所等の開設日から1ヶ月以内 | |
必要に応じて | 消費税の新設法人に該当する旨の届出書※資本金1,000万円以上など、新規に設立する法人が課税事業者に該当する場合 | 速やかに |
任意 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 定めはない |
適格請求書発行事業者の登録申請書 | 登録希望日の15日前まで(登録希望日が設立日の場合、設立初年度の末日まで) | |
消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで | |
青色申告の承認申請書 | 設立日から3ヶ月を経過した日、または第1期の事業年度終了日のうち、いずれか早い日の前日 | |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 設立第1期の確定申告期限まで | |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 設立第1期の確定申告期限まで |
会計ソフトやアウトソーシング会社、クラウドソーシングを使ったり、税理士に相談したりして負担を減らしましょう。ただし、アウトソーシング会社、クラウドソーシング、税理士を使う場合は、相応の費用がかかります。
⑤役員報酬(給与)が毎月同額になる
法人成りをした場合、役員報酬(給与)が毎月同額になることもデメリットです。前提として、個人事業主であれば、ある程度は稼いだお金を自由に使えます。
しかし法人を設立したら、法人のお金と個人のお金を明確に区別しなくてはいけません。役員報酬として給与を法人から法人代表者に支払う形になり、この役員報酬が個人の収入になります。
そして、役員報酬を経費(損金)に算入するには、決算日の翌日から3ヶ月以内に毎月同額になるよう金額を決めないといけません(定期同額給与)。仮に「今期は業績が良さそうだから、少し増やそう」などと役員報酬の金額を変更すると、損金として計上できなくなるので注意しましょう。
個人事業主から法人化する手順

個々の事例によって細かい部分は異なりますが、個人事業主から法人化する一般的な手順は以下の通りです。
- 法人を設立する
- 個人事業の廃業手続きを行う
- 事業に関わる資産や負債を引き継ぐ
- 各契約の名義変更を行う
①法人を設立する
個人事業主から法人成りをするなら、最初に法人を設立しなくてはいけません。具体的には以下の手続きが必要ですが、どのような法人を設立するかによっても異なる部分があるので、事前に確認しましょう。
- 定款の認証・作成
- 資本金の払い込み
- 設立登記申請
②個人事業の廃業手続きを行う
法人を設立したら、個人事業の廃業手続きを行うために、以下の書類を管轄の税務署に提出しましょう。
- 廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告をしていた場合)
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(従業員を雇っていた場合)
- 事業廃止届出書(消費税の課税事業者であった場合)
- 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(インボイス登録していた場合)
③事業に関わる資産や負債を引き継ぐ
設立した法人への事業に関する資産・負債の引き継ぎも行わなくてはいけません。引き継ぎをする方法として、以下の売買、現物出資、賃貸借の3つが挙げられます。資産の種類や状況によって使うべき方法は異なるので、税理士や弁護士などの専門家と相談しながら進めましょう。
方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
売買 | 個人と法人の間で売買契約書を取り交わし、個人事業での財産を法人に売却する | ・手続きが比較的簡単 | ・買い取るだけの資金が法人にないと難しい・不動産を買い取る場合、不動産取得税・登録免許税を支払う必要がある |
現物出資 | 個人事業で使用していた財産を出資し、法人を設立する | ・資本金を大きくしやすい | ・手続きが面倒なうえに、時価を正確に算定しづらい |
賃貸借 | 個人と法人の間で賃貸借契約を結び、個人事業での財産を法人に貸し付ける | ・不動産取得税や登録免許税はかからない | ・法人から個人として賃貸料を受け取ることになるため、確定申告が引き続き必要 |
④各契約の名義変更を行う
法人成りをしたら、個人名義で使っていた事業上の契約や資産を、法人名義に変更しなくてはいけません。具体例として以下のものが考えられます。
- 預金通帳
- 事務所などの賃貸借契約
- 業務用車両
- 水道光熱費
- 携帯電話やインターネット回線などの通信費
- 借入金
- 官公庁への届出書類
また、厳密には名義変更ではありませんが、取引先や顧客にも法人を設立したことを知らせる挨拶状やメールを出しましょう。
個人事業主が法人化するときの注意点

個人事業主が法人化する場合、順番を踏みつつ、必要な手続きを済まさないとトラブルのもとになります。具体的に注意すべき点として、以下の3点について解説します。
- 最後の確定申告を忘れずに行う
- 廃業後の事業税の支払いを考える
- 法人から個人事業主に戻るのは難しい
最後の確定申告を忘れずに行う
個人事業を廃業したとしても、最後の事業年度の確定申告を忘れてはいけません。ただし、最後の事業年度が赤字だった場合、基本的に確定申告は不要です。確定申告が必要かどうかを把握するために、所得の計算は忘れずに行いましょう。
また、通常の確定申告と同様、翌年の2月16日から3月15日(当日が休みの場合は休み明けの平日)の間に手続きを行う必要があります。
廃業後の事業税の支払いを考える
個人事業主から法人化する際は、廃業後の事業税の支払いについて考える必要があります。個人事業を続けるのであれば事業税は経費にできますが、廃業後だと確定申告後に通知が来る事業税を経費にできないためです。
なお、廃業した年の所得税の確定申告に関しては、以下の式で求めた事業税の課税見込額を経費として計上できる特例があります。
事業税の課税見込額=(A±B)×R÷(1+R) ※各項目の詳細は以下の通りとする A:事業税の課税見込額を控除する前の当該年分の当該事業に係る所得の金額 B:事業税の課税標準の計算上Aの金額に加算し又は減算する金額 R:事業税の税率 |
わかりやすくするために、以下の条件に基づいた具体的な計算例を紹介します。
【条件】 ・事業所得の所得金額600万円(課税見込額算入前) ・青色事業専従者給与100万円(必要経費に算入済) ・青色申告特別控除額 65万円 ・飲食店業(第1種事業)を営んでいたことから、適用される税率は5%とする ・欠損金の繰越控除等や事業用資産の譲渡損失はない ・事業を営んだ月数は12ヶ月であり、事業主控除は290万円とする (600万円+100万円-100万円+65万円-290万円)× 0.05(5%)÷1.05(=1+5%)=178,571円 |
法人から個人事業主に戻るのは難しい
法人化してうまくいかなかったからといって、個人事業主に戻るのは難しいのも事実です。法人から個人事業主に戻ることを「個人成り」といいますが、一般的には以下の流れで進めます。
- 会社を解散・清算もしくは休眠させる
- 個人事業の開始手続きをする
会社を解散・清算する場合、解散の登記と清算人の選任の登記をしなくてはいけません。ただし、残余財産を確定させる必要があるため、これらの登記を行っても、実際に会社を解散させるまでには時間がかかります。
会社を解散させられたら、税務署に開業届を出して個人事業主として事業を再開するのが一般的な流れです。
ただし法人を解散し、個人で活動するとなると、顧客が不信感を抱いてもおかしくありません。「わざわざ個人事業主に戻るのは何か理由があるのか」と思われ、取引の継続を断られる可能性もあります。
自身や家族の都合上、法人として活動を続けていくのが難しいなど、相応の理由がない限りは、法人であり続けることを前提に考えましょう。また、法人成りをするときは、個人事業に戻す必要がないよう、事前に計画を入念に立ててから法人化することが大切です。
バーチャルオフィスで法人を設立する場合の詳しい手順はこちら▼
法人化を考えている個人事業主はバーチャルオフィスがおすすめ
法人化すべきかは個々の事例によって異なりますが、したほうが良いと判断されるなら準備を進めましょう。ただしその場合、本店所在地として使って問題がない住所を準備することが重要になります。自宅を使うこともできますが、信用力という意味では不足があるうえに、不特定多数に知られる可能性があることから、あまりおすすめできません。
しかし、賃貸オフィスを借りるとなると地域によってはかなり高額な初期費用が必要になるもの。費用を節約しつつ、事業に使える信用力の高い住所が必要なら、バーチャルオフィスを検討しましょう。
バーチャルオフィス1は、東京(渋谷)と広島(広島市中区)の2ヶ所の住所がお使いいただけます。料金プランは月額880円(税込)+郵送費用と非常にシンプルなうえに、月4回の郵便物転送サービスなどビジネスに必要な機能を一通りご利用いただくことが可能です。
バーチャルオフィスによっては個人事業主から法人に切り替えることで、プラン料金が変わるケースがあります。その点バーチャルオフィス1は、法人化しても価格は月額880円(税込)+郵送費用のままです。個人事業主からバーチャルオフィスを契約する場合は、法人化を見越した価格で比較しましょう。
まとめ
個人事業主から法人成りすることで、信用力が増し、新しい顧客の獲得や、資金調達に役立ちます。しかし、法人成りは決して費用が安くありません。また、安易に個人事業主に戻るのも難しい点を踏まえると、慎重に考えたいところです。
現実的な問題として、事業所得が800万円を超過したときは、法人成りをしたほうが税金は安くなる可能性があります。そのほか、事業を拡大したいときや資金調達が必要なとき、取引先から求められたときは、前向きに法人化を検討してみましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
税理士 伴 洋太郎
BANZAI税理士事務所 代表
税理士/1級ファイナンシャルプランニング技能士
大学卒業後、一般企業や税理士事務所での勤務を経て税理士試験に合格し、2018年にBANZAI税理士事務所を開業。個人事業主や中小法人、給与所得者や相続人を対象とした業務の経験が豊富で、スモールビジネスの立ち上げや個人事業の法人化に数多く携わっている。
BANZAI税理士事務所:https://ban-tax.com/