
自宅をオフィスとして起業する場合、「法人口座は自宅住所とバーチャルオフィスの住所のどちらで開設すべき?」と悩む方は多いのではないでしょうか。自宅とバーチャルオフィスでは、それぞれ法人口座の開設におけるメリット・デメリットがあります。特徴を把握し、どちらで法人口座を開設すべきかを判断しましょう。
本記事では、法人口座を開設する住所地について、自宅とバーチャルオフィスを比較しながらメリット・デメリットを解説します。
目次
【前提】法人口座は本店所在地の最寄りの支店で開設する必要がある
法人口座の開設は、基本的に法人登記をした本店所在地の住所で申し込みを行う必要があります。また、法人口座は、本店所在地を管轄している最寄りの支店で開設することが一般的です。
たとえば、自宅住所が「神奈川県横浜市」、バーチャルオフィスの住所が「東京都渋谷区」とした場合、自宅で業務を行うとしても、法人口座は東京都渋谷区を管轄している支店で開設してくださいと銀行に指示されることが一般的です。
【比較表】法人口座は自宅とバーチャルオフィスどちらで開設すべき?
法人口座を開設する際、自宅とバーチャルオフィスでは、それぞれメリット・デメリットがあります。
主なメリット・デメリットは、以下の通りです。それぞれ後述する見出しで詳しく解説します。
住所 | メリット | デメリット |
---|---|---|
バーチャルオフィス | ・ブランドがある支店で法人口座を開設できる ・自宅近くにない銀行で法人口座を開設できる ・融資が活発なエリアで法人口座を開設できる | ・バーチャルオフィスの最寄りの支店で口座を開設する必要がある ・審査が厳しい可能性がある ・銀行からの郵送物受け取りに問題が生じる可能性がある |
自宅 | ・バーチャルオフィスNGの銀行で法人口座を開設できる ・自宅の最寄りの支店で法人口座を開設できるため利便性が高い ・コストを削減できる ・銀行からの郵便物が直接受け取れる | ・ブランドのない支店名になってしまう可能性がある ・近くに支店がない可能性がある ・地方の支店だと融資が積極的でない可能性がある ・自宅住所での法人登記自体にデメリットがある ・引越しをしたときに情報の変更を行う必要がある |
バーチャルオフィスで法人口座を開設するメリット・デメリット
バーチャルオフィスで法人口座を開設するメリット・デメリットは、以下の通りです。以下では各項目を詳しく解説します。
- メリット①ブランドがある支店で法人口座を開設できる
- メリット②自宅近くにない銀行で法人口座を開設できる
- メリット③融資が活発なエリアで法人口座を開設できる
- デメリット①バーチャルオフィスの最寄りの支店で口座を開設する必要がある
- デメリット②審査が厳しい可能性がある
- デメリット③銀行からの郵送物受け取りに問題が生じる可能性がある
メリット①ブランドがある支店で法人口座を開設できる
バーチャルオフィスであれば、ブランド力が高い支店で法人口座を開設できる可能性が広がります。基本的にバーチャルオフィスはブランド力のある住所にあることが多く、たとえば東京都渋谷区のバーチャルオフィスを契約すれば、「○○銀行渋谷支店」のような形で東京の中心部の支店で法人口座を開設可能です。一種のブランディング効果が生じ、企業の信用力を裏付ける要因になるでしょう。
一方で、自宅住所の場合、自宅の最寄りの支店で法人口座を開設することになります。しかし、自宅が地方や住宅街にある支店だと、渋谷などの一等地の支店と比べて同じ銀行でもブランディングとしてのイメージが優れない可能性があります。
メリット②自宅近くにない銀行で法人口座を開設できる
バーチャルオフィスを活用すると、自宅の近くにない銀行でも法人口座を開設できます。大手銀行はもちろん、地方銀行でも東京の中心地に支店を出しているケースが多くあります。たとえば、千葉銀行や横浜銀行はそれぞれ東京に支店を持っていますが、千葉銀行は神奈川県に支店を持っておらず、横浜銀行も千葉県に支店を持っていません。
このような状況において、東京のバーチャルオフィスと契約し、所在地を東京にすることによって、2行の銀行で法人口座を開設することができるようになります。そのため、自社に適した銀行を選択することが可能です。
また、将来的に取引銀行を増やしやすく、以下のようなメリットを得られます。
- 金利や返済条件を比較できる
- 資金調達に失敗するリスクを抑制できる
一方で、都心から離れた自宅住所の場合、選択肢が限られてしまう可能性があります。先述したように、千葉県に住んでいる人が横浜銀行の法人口座を開設することは一般的ではありませんし、神奈川県に住んでいる人が千葉銀行の法人口座を開設することは一般的ではありません。銀行選びで選択肢が狭まることになって妥協が必要となる恐れがあり、将来的にも取引銀行を増やしにくいでしょう。
メリット③融資が活発なエリアで法人口座を開設できる
バーチャルオフィスであれば、融資が活発なエリアで法人口座を開設することが可能です。たとえば都心エリアなどの経済活動が盛んなエリアの金融機関は、融資が活発で、ノウハウが蓄積されているケースも多いと考えられます。
融資が活発でノウハウも蓄積されていれば、資金調達に関する相談がしやすく、スムーズに融資を受けられる可能性が高まります。将来的に事業規模の拡大や多角化を目指す際の安心材料になるでしょう。
デメリット①バーチャルオフィスの最寄りの支店で口座を開設する必要がある
バーチャルオフィスで法人口座を開設するデメリットのひとつとして、バーチャルオフィスの最寄りの支店で法人口座を開設しなければならない点が挙げられます。バーチャルオフィスが自宅から離れている場合、支店に足を運ぶことが手間になってしまうでしょう。
しかし、場所にかかわらずオンラインで利用できるネット銀行であれば、特段デメリットにはなりません。また、現在は店舗を有する銀行でもインターネット経由での申し込みが多く、インターネットバンキングサービスも充実している傾向があります。そのため、地理的な影響によるデメリットは従来よりも小さいといえるでしょう。
デメリット②審査が厳しい可能性がある
バーチャルオフィスでの法人口座の開設は、自宅住所と比較して審査が厳しい可能性があります。バーチャルオフィスは、物理的なオフィスをレンタルせずに住所を利用できるという特性上、マネー・ローンダリングや詐欺などに悪用された事例がありました。その結果、法人口座の悪用を防止したい銀行は、厳しい審査を実施するようになりました。地方銀行や信用金庫の場合、バーチャルオフィスというだけで法人口座を開設できないケースもあります。
ただし、バーチャルオフィスだからといって一切審査に通らないわけではありません。実際に、弊社バーチャルオフィス1では、法人口座の開設実績が多数存在します。各銀行の傾向を把握したうえで、適切に事前準備を行うことが重要です。
バーチャルオフィスでの法人口座の審査が厳しい理由について詳しくはこちら▼
また、起業当初は、まず取引先から振込を行ってもらえる法人口座があるだけで十分です。「とにかく法人口座があればよい」ということであれば、ネット銀行で法人口座を開設すれば問題ありません。ほとんどのネット銀行は、バーチャルオフィスを利用していること自体が開設NGの条件になることはありません。まずはネット銀行で法人口座の開設にチャレンジしてみましょう。
デメリット③銀行からの郵送物受け取りに問題が生じる可能性がある
バーチャルオフィスで法人口座を開設すると、銀行からの郵便物を受け取る際にタイムラグが発生します。銀行からの郵便物はバーチャルオフィス宛てに発送され、バーチャルオフィスから自宅に転送されるためです。転送の頻度は、各バーチャルオフィスによって異なります。
また、受け取りにサインが必要な郵便物の場合、以下のような問題が生じるケースがあります。
- 代理サイン料として別途料金を請求される
- 不在票の処理に料金を請求される
ただし、銀行からの郵便物は頻繁に届くわけではありません。通知や手続きがインターネットで完結するケースも多く、大きなデメリットにはならないでしょう。
また、弊社バーチャルオフィス1では、スポット転送や高速転送オプションを提供しています。代理サインが必要な場合であっても追加料金はかかりません。郵便物の受け取りが不安な方でも安心です。
自宅で法人口座を開設するメリット・デメリット
自宅での法人口座の開設には、以下のメリット・デメリットがあります。以下では、各要素を詳しく解説します。
- メリット①バーチャルオフィスNGの銀行で法人口座を開設できる
- メリット②自宅の最寄りの支店で法人口座を開設できるため利便性が高い
- メリット③コストを削減できる
- メリット④銀行からの郵便物が直接受け取れる
- デメリット①ブランドのない支店名になってしまう可能性がある
- デメリット②近くに支店がない可能性がある
- デメリット③地方の支店だと融資が積極的でない可能性がある
- デメリット④自宅住所での法人登記自体にデメリットがある
- デメリット⑤引越しをしたときに情報の変更を行う必要がある
メリット①バーチャルオフィスNGの銀行で法人口座を開設できる
自宅住所であれば、バーチャルオフィスを拒む銀行でも、法人口座を開設できる可能性があります。特に、地方銀行や信用金庫の場合、バーチャルオフィスでは法人口座を開設できないケースがあるので、自宅住所の大きなメリットといえるでしょう。
また、自宅が本店所在地であれば、バーチャルオフィスと比較して事業の実態が明確となります。それゆえに、バーチャルオフィスでの法人口座の開設よりも、提出書類が少なくなる傾向があります。
メリット②自宅の最寄りの支店で法人口座を開設できるため利便性が高い
自宅住所で法人登記を行えば、自宅の最寄りの支店で法人口座を開設できます。頻繁に銀行まで足を運ぶ場合、手間や交通費を削減できるでしょう。ただし、ネット銀行やインターネットバンキングを活用する場合は、大きなメリットにならないかもしれません。
また、自宅の近くに自分に合った銀行があるとは限らず、融資に積極的ではない可能性もあります。自宅での法人登記自体にもデメリットがあるので、総合的な視点で自宅住所での口座開設を選択すべきかを判断しましょう。
メリット③コストを削減できる
自宅住所を本店所在地として法人口座を開設すると、バーチャルオフィスのコストを削減できます。バーチャルオフィスの料金は、月額数百円〜数千円が相場です。事業規模が小さい事業者の場合、経済的な負担を軽減できるでしょう。
ただし、バーチャルオフィスを活用するメリットは、法人口座の開設以外にも数多く存在します。コスト削減が目的の場合、メリットを総合的に考慮したうえで自宅住所を選択すべきかを判断しましょう。
バーチャルオフィスのメリットについて詳しくはこちら▼
メリット④銀行からの郵便物が直接受け取れる
自宅住所で法人口座を開設すれば、銀行からの郵便物を直接受け取れます。郵便物を直接受け取る主なメリットは、以下の通りです。
- タイムラグが発生しない
- 転送費用を削減できる
- 転送時の紛失や情報漏洩を防止できる
ただし、銀行からの郵便物は決して頻繁に届くわけではありません。現在は通知や手続きがインターネット上で完結するケースも多く、大きなメリットにならない可能性があります。
デメリット①ブランドのない支店名になってしまう可能性がある
自宅住所で法人口座を開設すると、地方などのブランド力が低い支店名になる可能性があります。自宅の住所によっては東京以外の支店になることがあり、顧客や取引先からのイメージが変わるかもしれません。
ブランド力のある支店で法人口座を開設すれば、一種のブランディング効果が発生します。そのため、バーチャルオフィスでの法人口座開設と比較すると、企業のイメージアップにつながる可能性は低いといえるでしょう。
デメリット②近くに支店がない可能性がある
自宅住所で法人口座を開設する場合、必ずしも近くに支店があるとは限りません。人口が少ない地域や郊外は、銀行の支店数が少ない傾向があります。また、現在は各銀行で支店を減らしている傾向にあり、結果として以下のリスクが生じるため注意が必要です。
- 自宅から遠い支店で法人口座を開設せざるを得ない
- 事業に最適な銀行で口座を開設できない
上記の通り、自宅近くに支店がない場合、すぐに銀行へ足を運べるというメリットを活かしきれません。自宅から離れた銀行で口座を開設するのであれば、バーチャルオフィスでブランド力の高い銀行を選んだほうが総合的に得となる可能性があるでしょう。
デメリット③地方の支店だと融資が積極的でない可能性がある
ビジネスが活発でない地方の支店の場合、融資に積極的でない可能性があります。初期資金を要する場合や事業規模の拡大、多角化を視野に入れている場合、資金調達が円滑に進まないかもしれません。
資金調達を行う事業プランの場合、融資の実績が多く、ノウハウが蓄積されている都心の支店のほうが有利になる可能性があるでしょう。
デメリット④自宅住所での法人登記自体にデメリットがある
自宅住所で法人登記を行うと、法人口座の開設以外にも、以下のようなデメリットが生じます。
- 自宅物件がビジネスでの利用を認めていない可能性がある
- プライバシーのリスクが生じる
- 事業の信頼性が低下するリスクが生じる
自宅の物件がビジネスでの利用を認めていない場合、オーナーとのトラブルにつながる可能性があるでしょう。
また、自宅で法人登記を行うと、以下のような理由でプライバシーのリスクが生じます。
- 業種によっては特定商取引法に基づき自宅住所を公開する必要がある(ECサイト運営など)
- 取引先や顧客との郵便物のやり取りで自宅住所が伝わる可能性がある
- 契約書の作成や公的機関への届出時に自宅住所を記載する必要がある
さらに、自宅住所での法人登記は、顧客や取引先が法人の住所を調べた際に、一軒家やアパート・マンションが表示されることから、不信感を与えたり、信用が損なわれたりするリスクが生じます。自宅で法人登記をするデメリットが大きいことは、頭に入れておきましょう。
自宅での会社設立が危険な理由について詳しくはこちら▼
デメリット⑤引越しをしたときに情報の変更を行う必要がある
法人口座は本店所在地の住所で開設されるため、引越しによって本店所在地が変更された場合、銀行で住所変更の手続きが必要です。住所変更の際は登記事項証明書や本人確認書類などの提出が求められ、口座を保有しているすべての銀行で個別に手続きを行います。
法人口座の住所変更の手続きを怠ると、以下のようなリスクが発生するため注意が必要です。
- 銀行取引が制限される
- 銀行からの信頼が低下する
- 重要な郵便物を受領できない
- 旧住所の新しい居住者に情報が漏洩する
さらに、本店所在地の変更に伴い、法人口座の住所変更以外にも以下のような手続きをしなければなりません。多くの手間やコストがかかり、事業運営に支障をきたす可能性があります。
- 取引先や顧客への通知
- 公的機関への届出
- 郵便物の転送手続き
- 名刺・パンフレットの再印刷
一方で、バーチャルオフィスであれば、自宅を引越しても法人の本店所在地は変更されません。上記のような煩雑な手続きは不要で、そのまま利用し続けることが可能です。
まとめ
法人口座の開設をバーチャルオフィスと自宅で比較した場合、それぞれメリット・デメリットがあります。銀行のブランド力や審査の厳しさ、郵便物の取り扱いなど、さまざまな違いを考慮して、どちらが適しているかを判断しましょう。
また、法人口座の開設以外に着目すると、自宅住所での法人登記にはさまざまなデメリットがあります。総合的に考えると、低コストで信頼性のある住所を利用できるバーチャルオフィスがおすすめです。
弊社バーチャルオフィス1では、東京都渋谷区、広島市中区の住所を月額880円+郵送費用(税込)で利用できます。ご利用者さまを対象に、法人口座開設の相談も承っているので、ぜひご検討ください。
バーチャルオフィスでの法人口座の開設のポイントなどについて詳しくはこちら▼
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
東商 社長ネット 株式会社バーチャルオフィス1 牧野 傑
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