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自宅での会社設立が危険な理由を教えてください。
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自宅での会社設立が危険な理由は、以下の9つが挙げられます。
①住宅ローン審査に通らない
②住宅ローン減税が受けられない
③経費の按分が難しい
④物件の管理規約に違反する恐れ
⑤周囲の住民とのトラブルにつながる
⑥事業によっては許認可が下りない
⑦個人情報の保護体制に不安が残る
⑧社会的信用が得られにくい
⑨自身や家族に危害が及ぶおそれがある
これから会社を設立して起業しようと考えている場合、どこの住所を使って登記するかが問題になります。事務所を借りられるならそこを使えば構いません。しかし、難しい場合は別の場所を使わざるを得ないでしょう。
そこで候補に挙がるのが自宅の住所ですが、一定のメリットはあるものの、デメリットも大きいので避けたほうが無難です。この記事では、自宅での会社設立が危険な理由と、代わりにバーチャルオフィスを使うべき理由について解説します。
バーチャルオフィスとシェアオフィス・レンタルオフィスとの違いはこちら
バーチャルオフィスの誤解について詳しくはこちら
目次
法律上は自宅の住所で会社設立が可能
法律上は、自宅の住所を会社の設立登記に使っても何ら問題はありません。また、以下に掲げる一定のメリットはあります。
メリット1.費用や時間が節約できる
費用や時間が節約できるのは、大きなメリットです。仮に事務所を借り、そこの住所を使って設立登記をしようとすると、相当な時間がかかります。
まず、個人として事務所を借りて、その後設立登記をしなくてはいけないためです。具体的な時間は物件によっても異なりますが、数日で完了することはまずありえないでしょう。また、借りる以上は相応の家賃や敷金などの諸経費がかかります。
しかし、自宅であればそのような費用や時間は一切必要ありません。
メリット2.家賃や光熱費の一部を経費にできる
登記とは直接の関連はありませんが、自宅をそのまま店舗・事務所として使う場合、家賃や光熱費の一部を経費にできる可能性があります。経費にできる部分が大きければその分所得が減るため、結果として節税することが可能です。
自宅での会社設立が危険な理由9選
前述した通り、法律上は自宅の住所で会社を設立する=設立登記を行うことは可能であるうえに、一定のメリットもあります。しかし、それをはるかに上回るデメリットがあるのも事実のため、積極的にはおすすめできません。自宅での会社設立が危険な理由として、以下の9つについて解説します。
- 住宅ローン審査に通らない
- 住宅ローン減税が受けられない
- 経費の按分が難しい
- 物件の管理規約に違反する恐れ
- 周囲の住民とのトラブルにつながる
- 事業によっては許認可が下りない
- 個人情報の保護体制に不安が残る
- 社会的信用が得られにくい
- 自身や家族に危害が及ぶおそれがある
①住宅ローン審査に通らない
自宅での会社設立を視野に入れて家を購入する場合、住宅ローン審査に通らない可能性があるため注意が必要です。あくまでも住宅ローンは「自身が居住するための家を建てる(買う)ためのローン」であり、事業の用に供する部分=事務所や店舗にスペースは対象となりません。
参考:住宅ローンの種類(銀行ローンの特徴と借入要件) ― 新たに住宅ローンを借入れる ― 住宅購入資金 ~ローンの選び方、そのポイントとは?|知るぽると
自宅の一部を事務所・店舗にすることを想定した場合、事務所・店舗部分は別途事業用のローンを申請する必要が出てきます。事業資金の借入になるため、審査もより厳しくなることから、残念な結果に終わる可能性もゼロではありません。
また、事業用融資は金融機関にとっても回収リスクが高くなります。そのため、仮に審査に通過できたとしても、住宅ローンに比べ金利が高くなる点にも注意しなくてはいけません。
なお、将来的に自宅の一部を事業に使うことを伝えずに住宅ローンを組んだ場合、将来的に金融機関とトラブルが起きる可能性があります。住宅ローンの相談のタイミングから金融機関に伝えておくのが望ましいでしょう。
②住宅ローン減税が受けられない
自宅を事務所兼住宅にする場合、住宅ローン控除の扱いにも注意が必要です。
そもそも、自宅として使っている部分の割合(居住用割合)が50%未満と判定された場合、住宅ローン控除自体が受けられません。また、50%を超えていたとしても、ほとんど事業用に使っていない場合(居住用割合90%以上)と比べると、控除が受けられる額は低くなります。
住宅ローンは本来「自分が住む家を買うために使うもの」である以上、関連する優遇策である住宅ローン控除も同じ立場にあるためです。
参考:住宅:住宅ローン減税 – 国土交通省
③経費の按分が難しい
法人であっても、自宅を事務所として使っている場合は、家賃や水道代・光熱費などの一部を経費として扱うことが可能です。この場合の割合は、自宅内で事業用に使っているスペースの面積や自宅で仕事した平均時間などから決めるのが一般的です。
しかし、確かな根拠に基づいて計算した割合でないと、税務調査が入った際に説明できず、修正申告を求められることも考えられます。実際の割合は税理士にも相談しながら決めるのが望ましいですが、判断が難しい部分もあるので注意が必要です。
④物件の管理規約に違反する恐れ
自宅がマンションなどの集合住宅の場合に注意したいのが、管理規約との兼ね合いです。マンションによっては、管理規約に店舗・事務所としての使用を禁止する旨が盛り込まれているケースがあります。「専ら住宅として使用する」「事務所利用不可」といった文言があった場合は、自宅兼事務所(店舗)としては使えません。
何らかの形で店舗・事務所として利用していたことが発覚した場合、専有部分の使用禁止を命じられたり、マンション側から訴訟を起こされたりすることもあります。つまり、本来自宅として使うつもりで購入・賃貸したマンションが使えなくなり、引っ越しをせざるを得ない事態にも発展するため注意が必要です。
ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は、マンションであっても事務所・店舗として利用できます。
- 管理規約において、居住部分の使用用途に事務所などが含まれている
- 住居契約ではなく、事務所契約を締結している
- 管理規約で事務所利用が禁止されているが、管理組合と交渉して許可をもらった
参考:標準管理規約採用の住宅専用マンションで、居室の一部を居住以外の用途で使用することは、絶対にできないのか | 公益財団法人不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)
⑤周囲の住民とのトラブルにつながる
マンションを店舗・事務所として使えたとしても注意が必要です。使い方次第では周囲の住民とのトラブルにつながる可能性もあります。
打ち合わせに来た来訪者を不審者と勘違いし、通報する住民がいたとしても不思議ではありません。また、人の往来があるとそれだけで騒がしくなることもあり得ます。不快感を覚え管理会社に苦情を申し立てる住民もいるかもしれません。
トラブルを起こさないようにするためには、打ち合わせは外部のコワーキングスペースやカフェで行うなど相応の配慮も求められるでしょう。
⑥事業によっては許認可が下りない
営む業種によっては、自宅での開業が許認可の都合上できない(難しい)ケースもあります。
たとえば、不動産会社(宅建業)を営む場合、自宅で開業することは可能ですが、以下の3つの条件を満たさないといけません。
- 玄関から事務所まで、居住空間を通らずに行ける
- 玄関から居住空間まで、事務所を通らずに行ける
- 居住空間とは、遮蔽性のある壁や、固定式パーテーション(180cm以上)等で区切られている
自宅がこの条件に当てはまらない場合、リフォームをする必要があります。
また、人材派遣会社(労働者派遣事業)を営む場合、事務所として使う場所は以下の条件を満たさないといけません。
- 事業で使用し得る面積が20㎡以上である
- 使用目的が事務所である
- 事業所の独立性が保たれている
- 個人的秘密を保持し得る構造である
- 風俗営業が密集する等事業の運営に好ましくない場所にない
参考:労働者派遣事業の許可の取り方、要件|宇治社会保険労務士事務所
一般的な住宅では満たすのがかなり難しい条件かもしれません。
このように、許認可の条件に「事務所の広さや仕様」が盛り込まれている場合、自宅での開業は考えないほうが無難です。
⑦個人情報の保護体制に不安が残る
個人情報を多く扱う事業を行う場合、自宅を事務所にするのは保護体制という意味で大きな不安が残ります。自身は気を付けていたとしても、家族が勝手に執務スペースに入り、個人情報を持ち出してしまう可能性があるからです。
鍵のかかるキャビネットやシュレッダーを用意したり、家族に不用意に立ち入らないよう理解を求めたりなどの配慮が必要です。それでも限界があるのは事実なので、個人情報を多く扱う事業を行う場合は、独立した事務所を借りるに越したことはありません。
⑧社会的信用が得られにくい
自宅の住所を使って会社の設立登記をするデメリットとして、社会的信用が得られにくいことが指摘できます。
本来はまったく違う理由があったとしても、自宅の住所を使ったことに対し「事務所を借りるだけの信用もお金もなかった」とネガティブな見方をする人もいるかもしれません。自宅の住所が使われていることを理由に新規取引を見送ったり、融資不可と判断されたりすることだってあるでしょう。社会的信用を得るという意味では、事務所を借りるほうが効果は大きいです。
⑨自身や家族に危害が及ぶおそれがある
自宅の住所を使って会社の設立登記をする最大のリスクが、自身や家族に危害が及ぶ恐れがあることです。
会社の登記情報は誰でも見られます。つまり、自宅の住所を使って登記をした場合、本来は知られたくない人にまでその情報が知られるかもしれません。
自身や家族にストーキング目的で接触してきている不審者がいた場合、登記情報が悪用される可能性があります。ターゲットの後をつけるために、Googleストリートビュー(道路沿いの風景を写真で提供するインターネットサービス)を使い、自宅の所在地近辺の風景を確認し、待ち伏せや尾行に及ぶこともあるでしょう。
空き巣や暴行、最悪の場合は殺人など、重大な事件の引き金になることもあるので注意するに越したことはありません。
事務所を借りるのが無理ならバーチャルオフィスを使おう
事務所を借りるだけの費用がないなら、バーチャルオフィスの利用も選択肢に入れましょう。
実際のところ、バーチャルオフィスが向かない業種もあります。許認可が必要だったり、個人情報を扱う業種だったりする場合は適していません。また、エステ・ネイルサロンや飲食店、学習塾など顧客が来訪し、商品・サービスの提供を行う業種も厳しいでしょう。
しかし、Webデザイナーやプログラマーなど、1人で作業を進めることが大半の業種であれば、バーチャルオフィスでも何ら問題ありません。設立登記にはバーチャルオフィスの住所を使い、実際の作業は自宅で行えば問題ありません。また、打ち合わせは自宅以外の場所で行えば、セキュリティや周囲への配慮という意味でもつつがなく進められるでしょう。
ここで、事務所の代わりにバーチャルオフィスを使って会社を設立するメリットを検証してみましょう。
費用は安く抑えられる
バーチャルオフィスの大きな強みは、費用を安く抑えられることです。仮に、東京都心でオフィスを借りる場合、毎月の賃料の相場は1坪あたり3万円程度となります。10坪程度のオフィスでも30万円はかかるはずです。また、以下の費用もかかります。
敷金(家賃半年分として計算) | 180万円 |
前家賃(1ヶ月分) | 30万円 |
仲介手数料(家賃1ヶ月分として計算) | 30万円 |
保証委託料(家賃1ヶ月分として計算)30万円 | 30万円 |
合計270万円にもなるうえに、火災保険料など諸費用も払わないといけません。かなりまとまったお金を用意できないと借りるのは難しいでしょう。
しかし、バーチャルオフィス1であれば、月額880円および郵送費用のみで利用できます。仮に、1年分の使用料を前払いしたとしても、1万0,560円(+郵送費用)にとどまるので、かかる費用は各段の差です。
必要に応じて貸し会議室も利用できる
バーチャルオフィスには、会員向けのサービスとして貸し会議室を用意しているところもあります。
対面での打ち合わせが必要な場合は、あらかじめ予約しておくことで、貸し会議室を打ち合わせスペースとして使うことが可能です。
自宅兼事務所に招かなくてもよいため、家族の負担も軽減できるうえに、プライバシーの保護にもつながります。
プライバシーの保護にも有効
バーチャルオフィスを使うことで、プライバシーの保護にも役立ちます。会社としての設立登記や郵便物の受け取りに使う住所をバーチャルオフィスのものにしておけば、自宅の住所を公開する必要はありません。
悪意を持った第三者に知られる可能性も極めて低くなるため、自身や家族のプライバシーも守られます。
利用開始までがスピーディ
利用開始までがスピーディなのも、バーチャルオフィスの魅力です。事務所として物件を借りる場合、内覧を行い、その後審査や引き渡しを受けなくてはいけません。そのままでは事務所として使えないなら、机やパソコン、複合機などの備品を運び入れる必要も出てきます。どんなに早くても2週間~1ヶ月はかかるでしょう。
しかしバーチャルオフィスであれば、申し込みをし、審査に通ればすぐに使い始められます。早ければ数日、多少時間がかかったとしても2週間程度あれば問題ないはずです。
まとめ
自宅の住所を会社の設立登記に使うことには、一定のメリットがあります。しかし、デメリットのほうがはるかに大きいので、自宅でないといけない特殊な事情がある場合以外は止めておきましょう。「事務所を借りたいけど、費用面で折り合いがつかない」場合は、バーチャルオフィスから始めてみるのもひとつの手段です。
ただし、バーチャルオフィスによっても提供しているサービスはまちまちです。重要なのは「自分が望むサービスを過不足なく提供してくれているか」なので、十分な下調べをしてから選びましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
税理士 伴 洋太郎
BANZAI税理士事務所 代表
税理士/1級ファイナンシャルプランニング技能士
大学卒業後、一般企業や税理士事務所での勤務を経て税理士試験に合格し、2018年にBANZAI税理士事務所を開業。個人事業主や中小法人、給与所得者や相続人を対象とした業務の経験が豊富で、スモールビジネスの立ち上げや個人事業の法人化に数多く携わっている。
BANZAI税理士事務所:https://ban-tax.com/