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バーチャルオフィスの住所は特定商取引法(特商法)に基づく表記として使えますか?
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バーチャルオフィスの住所は特定商取引法に基づく表記に使用できます。法的に利用が認められているので、安心してご利用ください。
インターネットを使った事業をはじめようと考えたとき、Webページ内で「住所を開示しなければならない」ことがネックになって足踏みしている方は、多いのではないでしょうか。インターネットビジネスなどの通信販売については特定商取引法によって住所の開示が義務づけられていますが、その住所にはバーチャルオフィスの住所を利用することが可能です。
当ページでは、特定商取引法に基づく表記にバーチャルオフィス住所を使用できる理由や使用時の注意点を解説していきます。
目次
バーチャルオフィスの住所は特定商取引法に基づく表記に使用可能!
Web上でショップやサービスを立ち上げて事業を開始する際、特定商取引法に基づく表記により住所の記載が必須です。
しかし在宅で仕事をしている方にとっては、「自宅住所を公開するのは防犯上、不安」「家族もいるから顧客や営業が訪問してくると困る」といった問題が発生するでしょう。
そんな時に最適なのが、バーチャルオフィスの住所を特定商取引法に基づく表記に使用することです。
特定商取引法に基づく表記の住所欄にバーチャルオフィスの住所を利用する行為は、消費者庁によって認められているため、自宅住所の公開に懸念がある方はバーチャルオフィスの住所利用を検討してみてください。
そもそも特定商取引法(特商法)とは?
特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とした法律です。
事業者と消費者間のトラブルを避けるために、事業者が守るべきルールと消費者を守るためのルールが定められています。
事業者が守るべきルール
特定商取引法では、消費者へ適正な情報提供、適正な販売行為を行えるよう、下記の規制を設けています。
- 氏名等の情報を明らかにすること
- 不当な勧誘行為の禁止
- 虚偽・誇大な広告の禁止
- 契約を締結する際は、重要事項を記載した書面を交わすこと
特定商取引法に違反すると、業務改善の指示や業務停止命令を受けたり、業務禁止命令の行政処分対象となったり、場合によっては罰則の対象にもなりえます。
利益を獲得したいからといって不当な行為をしたり、面倒くさいからといって情報共有や手続きを煩雑にしたりする行為は必ずやめましょう。
消費者を守るためのルール
たとえば学習塾やエステサロンなど長期的なサービスの契約を検討していた際、「断りづらくて契約してしまった」「考え直した結果、やっぱり契約を取りやめたい」と思った経験はありませんか。
上記の場合、契約後であっても一定期間内であれば無条件で契約解除(クーリング・オフ)が認められています。
また消費者が中途解約を申し出た場合に、事業者から法外な損害賠償請求を受けないよう事業者が請求できる損害賠償額に上限を設定しています。
特定商取引法があることによって、悪徳業者による強引な営業・契約にも対抗できるので、消費者は安心して消費行動ができるようになります。
これから事業を担おうとする方々も、生活するうえで消費者側に立つことは往々にしてあるでしょう。
だからこそ、法律を守ることはもちろん、常に消費者の目線に立って情報の共有、コミュニケーションを取れるよう心がけることが大切です。
特定商取引法に基づく表記として記載を求められる内容
特定商取引法ではWebサイト経由や郵便・電話経由などの通信手段による販売・サービス提供(いわゆる「通信販売」)を行う際に、トラブルを避けるために明記すべき事項を提示しています。
たとえばECサイトで買い物をする場合、商品の価格・送料、商品提供者などの情報はすべて、インターネット上から取得することになります。内容が不明確で「送料がいくらなのかわからない」「どこの事業者から届くのかわからない」など、情報を取得できないと消費者は安心して購入できません。
購入したとしても、Web上では消費者と直接顔を見合わせ、言葉を交わせるわけではないので、後々「別途料金がかかるなんて知らなかった!」など、トラブルも起きかねません。
事業者と消費者が互いに信頼し合って取引ができるように、特定商取引法に基づく表記は存在しているといえるでしょう。
1.販売価格またはサービス価格
※税込/税抜のいずれなのかも明記
※送料やラッピング費など消費者が負担する金額も明記
2.代金の支払時期と支払い方法
※電子マネーなど可能な支払い方法は明記
3.商品の引渡時期またはサービスの提供時期
※商品が消費者のもとに届く時期またはサービスが提供される時期のこと
4.申込期間
※申込期間の定めがある場合のみ、期間および内容を明記
5.契約申込の撤回・解除に関する事項
※返品特約がある場合は含めて明記
6.事業者の氏名または名称、住所、電話番号
※「住所」にバーチャルオフィスの住所を利用してOK
7.事業者が法人であって、かつWeb上で広告をする場合には、代表者または責任者の氏名
8.事業者が外国法人等であって、国内に事務所等がある場合には、その所在場所および電話番号
9.販売価格、送料等以外に消費者が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
10.商品の種類・品質に関して欠陥等があった際の事業者の責任に関する特約があるときは、その内容
※「商品に欠陥がある場合を除いて返品には応じません」など
11.ソフトウェアに関する取引である場合には、ソフトウェアの動作環境
12.2回以上、継続して契約を結ぶ必要がある場合には、その旨および販売条件の内容
13.特別な販売条件がある場合は内容を明記
※商品の販売数量に制限がある等
14.請求によりカタログ等を別途送付する際、有料の場合は金額を明記
15.電子メールによる商業広告を送る場合は、事業者の電子メールアドレス
※出典:特定商取引法ガイド「通信販売に対する規制 【行政規制】 1.広告の表示(法第11条)」
バーチャルオフィスの住所利用が認められている理由
バーチャルオフィスの住所利用に関して、消費者庁では以下の見解が明示されています。
「住所」については、法人及び個人事業者の別を問わず、現に 活動している住所(法人にあっては、通常は登記簿上の住所と同じと思われる。)を正確 に表示する必要がある。いわゆるレンタルオフィス等であっても、現に活動している住所 といえる限り、法の要請を満たすと考えられる。
つまりバーチャルオフィスであっても、現に活動している住所といえる限りは利用が認められているのです。
「現に活動している住所」とは、主に郵便物の受け取りや連絡手段が確保できているかどうかによって判断されます。
そのためバーチャルオフィスを選ぶ際は、郵便物を受け取ってくれたり、転送してくれたりするサービスが備わっているバーチャルオフィスを選ぶようにしましょう。
たとえばバーチャルオフィス1では郵便物到着状況の通知、月4回の郵便転送、スポット転送、郵便物の店舗受取、24時間受取可能ポストなどを備えています。バーチャルオフィスでありながら、郵便物に関するサービスが豊富です。
郵便を受け取れるかつ連絡が取れる状況であれば、バーチャルオフィスの利用は認められるので、安心して活用してください。
特定商取引法に基づく表記にバーチャルオフィス住所を使用する時の注意点
バーチャルオフィスの利用は認められていますが、ルールを守って運用する必要があります。
特定商取引法に基づく表記にバーチャルオフィス住所を使用する時の注意点を3つピックアップしたので、必ず頭の片隅に置いておくようにしましょう。
事業者の連絡先を記載する際に補足を入れること
バーチャルオフィスの住所を特定商取引法に基づく表記に活用する際は、下記のように注釈で補足を入れるようにしましょう。
<記載例>
事業者の所在地
〒xxx-xxxx
東京都渋谷区xxx-xx-xx
事業者の連絡先
xxx@xxxx.jp
※電話番号はご請求時に遅滞なく開示します。
事業者の連絡先を記載する場合には、上記のような補足事項を記載しましょう。ちなみに、なかには「事業者の連絡先」に自身の電話番号やメールアドレスではなく、バーチャルオフィスの電話番号を記載したい方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合は、以下の内容を満たすことで、法の要請を満たすものとされます。
- バーチャルオフィスの住所および電話番号を連絡先として表示することについて、バーチャルオフィス運営事業者、個人事業主間で合意されている
- バーチャルオフィス運営事業者が、個人事業主の現住所および電話番号を把握している
- バーチャルオフィス運営事業者と個人事業主の間で確実に連絡が取れる状態である
バーチャルオフィスの住所・電話番号を連絡先として利用できるかについて、事前に確認しておきましょう。
連絡が取れる状態であること
上記にもある通り、バーチャルオフィスを利用する際は、バーチャルオフィス運営事業者と個人事業主の間で確実に連絡が取れる状態であることが重要です。
なぜなら消費者庁が見解を示した「現に活動している住所といえる限りバーチャルオフィスの利用を認める」という状態に合致するためには、連絡が取れることが条件だからです。
(略)〜〜当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者と の間で確実に連絡が取れる状態となっていること
ただし、個人事業者、プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のい ずれかが不誠実であり、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、法の表示義務を果たしたことにはならない。
「メールを見ていなかった」「返すのが面倒で後回しにしていた」といった遅滞行為はできるだけ避け、消費者や取引先などに対して真摯な対応を心がけましょう。
開示請求には速やかに応じること
プライバシーを守るためにバーチャルオフィスを利用したとしても、開示請求を受けた際には実際に活動している住所を速やかに開示しなければなりません。
実際に開示請求を求めてくる人はそう多くはありませんが、プライバシー保護観点でみればバーチャルオフィスの住所を利用するのはメリットだといえます。
万が一、開示請求を受けたときは、住所を開示しなければならないことを頭の片隅に置いておくようにしましょう。
返品先の住所を検討しておくこと
バーチャルオフィスの住所は事業拠点を貸し出すサービスであるため、返品先の住所として利用できないケースが多々あります。または返品対応が可能な場合でも、別途郵送費用が発生するため、コストの跳ね返りを受けてしまう可能性もあるでしょう。
「返品がないよう運用するから大丈夫!」と思っていても、発注者や購入者の都合で商品が受け取られず、戻ってきてしまう事態が発生することも考えられます。そのため返品があった際に、商品を受け取る住所をどこに設定するか検討しておく必要があるのです。
住所表示を画像で求めるバーチャルオフィスに注意すること
たとえばAmazonや楽天で販売を行う際、特定商取引法に基づく表記はテキストでしか入力することができません。
しかしバーチャルオフィスのなかには、住所表示をテキストではなく画像で行うよう規約をおいているバーチャルオフィスもあります。
せっかく事業を開始しようと思っても、画像表示を求めるバーチャルオフィスだった場合、特定商取引法に基づく表記に住所を表示できず、事業をスタートさせられません。バーチャルオフィスの契約自体、無駄になってしまうでしょう。
契約前には必ずテキストで住所の表示が可能なバーチャルオフィスかどうか確認するようにしてくださいね。
まとめ
自身のプライベートを守りながらも、消費者と信頼関係を結んで事業を運営するにはバーチャルオフィスの利用が有益でしょう。
特定商取引法によって、事業者の住所の開示が義務づけられていますが、消費者庁の見解によって公にバーチャルオフィスの住所を利用する手法は認められています。
ルールを守って、バーチャルオフィスを活用した安心・安全な事業運営をスタートさせましょう。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
弁護士 北村 尚弘
2013年登録 東京弁護士会所属
東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。一般企業法務、人事労務、紛争処理(訴訟・保全・執行)、M&A・事業承継、宇宙ビジネスなど多角的な分野に取り組んでいる。