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そもそも起業とは何なのか
起業とは、読んで字のごとく「新たに事業を起こす」ことです。一般的には、会社を設立したり、個人事業主が事業を始めたりすることも起業と呼びます。
なお、混同しやすい用語に、「開業」があります。これは、新しく事業やビジネスを始めることを指し、起業とほとんど同義です。
ただ「開業」の言葉は、個人が事業を始めるときに使用するのが一般的です。飲食店が店舗を構える際や、ネットショップを立ち上げる際などに用いられます。
起業にはどのような種類があるのかを詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
起業するにはどうすれば良い?主な手順・やり方・流れ
ここからは、起業のやり方や手順を以下の段階に分けて解説していきます。
- 目的を明確にする
- 事業内容を考える
- 事業形態を決める
- 事業計画を策定する
- 必要に応じて資金調達を行う
- 実際に事業を始める
起業にいたるまでの作業は複雑ですが、要点を押さえておけばスムーズに進められます。また、入念な起業準備は、事業開始後の成功率をも左右するため、ポイントを抑え着実に取り組みましょう。
1: 目的を明確にする
まずは、「なぜ起業するのか?」「どのような価値を提供し、今後どうなりたいのか?」など、目的を明確にします。こうした目的は、事業内容や今後の展開を検討するうえでの基盤となります。
より明確な目的を定めていれば、仮に選択を迫られたとしても、ゴールを見失わず適切な判断をくだせるでしょう。なお、起業して事業を行うとなると、あなたの判断には大きな責任が伴います。
そのため常に適切な判断を下せるよう、自分自身と向き合い、起業の目的を明確にしましょう。
2: 事業内容を決める
次に、事業内容を考えます。現在は、さまざまなサービスや商品が存在している一方、それらにはほぼ必ず不足している要素、すなわち課題とニーズが隠れています。
まずはそういった取り入る隙(起業アイデア)を見つけて、自身が参入する分野や既存サービスとアイデアをどのように組み合わせるかを検討してみてください。ただし、ここで注意してほしいのは、「自分が思いつくなら他人も同じ」ということです。
独自の戦略や工夫もなしに飛び込んでは、競合との競争にさらされます。そのため、自分の経験やスキルなど強みを意識し「他人とはまったく異なるアプローチ」を模索していきましょう。
3:事業形態を決める
次に、自分が思い描くビジネスや目標にあった事業形態を選択します。代表的な事業形態は、以下の5つです。
- 個人事業主
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- NPO法人
ここでは、各形態のメリット・デメリットを紹介します。
個人事業主
個人事業主とは、法人を設立せずに事業を継続的に行う人のことです。管轄の税務署へ、開業届を提出するだけで事業を始められます。
また、現在はインターネット上で申請が行える電子サービスも提供されているため、時間がなくてもスピーディーに開業できます。
ただし、株式会社や合同会社に比べ、社会的信用度が低い点に注意が必要です。とくに起業直後は実績が少なく、物件を借りる際や銀行融資を受ける際に審査落ちするリスクがあります。
なお、利益が一定金額を超えると、法人よりも税制面で不利になります。そのため、個人事業主はあくまでも最初に身を置くポジション、あるいは小規模運営に適した形態と認識しておきましょう。
株式会社
株式会社とは、株式の発行で資金を集め、そのお金で事業を行っていく会社のことです。株式は、出資者に対して発行する証券です。
この株式の発行によって資金調達ができるのは、株式会社ならではの特徴です。また、ほかの事業形態に比べて知名度があることなどから、一般的には融資審査を通過しやすいと言われています。
ただし、設立費用が約20万円と高額です。また、事業年度ごとに決算公告を行う必要があるなど、厳格なルールが定められている点に注意が必要です。
そのため、決算公告などの財務をこなせる方・社会的信用度の高い事業形態で起業したい方に適しています。
合同会社
合同会社とは、2006年に新しく設けられた事業形態です。「出資者と会社の経営者」が原則であり、出資したすべての社員が会社の決定権を持ちます。
合同会社の魅力は、株式会社に比べ、設立費用・ランニングコストが安い点です。株式会社の設立費用が約20万円なのに対し、合同会社は約6万円です。
支出を抑えつつ起業したい方におすすめです。ただし、比較的新しい事業形態であるため、認知度が低い点に注意が必要です。
一般社団法人
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」をもとに設立された非営利法人のことです。株式会社や合同会社のように、利益の配分を主目的とせず、社会貢献等の団体が掲げる目的の達成を目指します。
そのため、公共事業との親和性が高く、国や自治体と連携して公益活動へ取り組むケースもあります。ただし、非営利が原則のため、利益が出ても寄付者や法人の会員へ分配ができない点に注意が必要です。
もちろん、従業員への給与支払いは可能ですが、株主配当のような利益分配はできません。
NPO法人
NPO法人は「特定非営利活動法人」とも呼ばれ、非営利法人に分類されます。一般社団法人よりも公益を重視する事業形態であり、活動内容や役員報酬などにさまざまな制限が設けられています。
また、活動の健全性を示すために、貸借対照表や役員名簿の公開が必要です。事業年度ごとに管轄庁へ提出する書類もあるため、事務作業の負担が大きい点がデメリットです。
ただ、活動の健全性が保証されていることで、社会的信用度につながります。一般社団法人よりも国や自治体との連携を取りやすく、活動の目的を達成しやすいでしょう。
4: 事業計画を策定する
事業形態が決まったら、今後の活動内容・方針をまとめた「事業計画書」を作成します。事業計画書は、資金調達先に事業の詳細を伝えるための書類です。
事業の概要を含め、以下の内容を記載します。
- 企業の概要
- 事業の概要
- 事業のコンセプト・ヒストリー
- プロダクトの詳細
- 販売・マーケティング戦略
- 人員計画
- 財務計画
たとえば、「初年度の売上見込みは〇〇個」ではなく、「◯◯のデータから初年度の売上見込みは◯◯個になる見込み」のほうが説得力があります。また、緻密に練られた事業計画からは、経営者の熱意が伝わります。
出資者側の心理としても、「熱量の高い人へ出資したい」と考えるケースが多いため、細かな部分も突き詰めた事業計画書を作成しましょう。
5: 必要に応じて資金調達を行う
起業をする場合、初期投資や人件費、事業所の賃貸料など、多くの費用がかかります。自己資金で賄えない場合は、融資や出資などで外部から調達しましょう。
たとえば、日本政策金融公庫や信用金庫などは、代表的な資金調達先です。事業計画書を作成してから担当員と面談を行い、審査員によるチェックを経て借入可否が決まる流れです。
一方、融資における利息の返済を避けたい場合は、経済産業省・中小企業庁・厚生労働省等の公的機関が募集している補助金・助成金制度を検討してみましょう。制度によっては予算や上限件数が定められている可能性もありますが、返済義務は発生せず、数千万円規模の資金が手に入る可能性もあります。
起業時の資金調達方法について更に詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
6: 実際に事業を始める
ここまでの手順を終えたら、事業を始めるために法的手続きを進めていきましょう。参考までに、法人として活動するには、以下5つの登録が必要となります。
- 公証人役場にて定款の認証
- 法務局で設立登記
- 税務署で法人設立届出書を提出
- 年金事務所で健康保険・厚生年金保険加入の手続き
- 税務署で給与支払事務所等の開設の届出
個人事業主は、開業届の提出のみで起業できます。
起業するなら個人事業主と法人のどちらを選択すべき?
起業する際、個人事業主か法人かで迷いがちです。その際は以下のポイントを考慮し、自身が行おうとしている事業がどちらにマッチしているかを検討しましょう。
個人事業主 | 法人 | |
社会的信用度 | 低い | 高い |
税金 | 所得税(5〜45%) | 法人税(15〜23.2%) |
経費の範囲 | 狭い | 広い |
開業・登記費用 | 0円 | 株式会社20万円 合同会社6万円 |
事業の維持費 | 0円 | 法人税7万円 社会保険料 |
資金調達先 | 少ない | 多い |
赤字繰越期間 | 3年 | 10年 |
初年度からまとまった売上が見込める場合は、法人で起業するのが一般的です。社会的信用度が高いだけでなく、個人事業主よりも税率を低く抑えられる可能性が高いからです。一方、小規模事業者やフリーランスとしての起業をお考えの方は個人事業主を検討しましょう。
起業にかかる費用
次は起業にかかる費用を確認していきましょう。事前に想定しておくことで余計なコストを抑えることにも繋がるため、現在検討している方はぜひ参考にしてください。
起業にかかる費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
起業前 :6~20万円
起業前にかかる費用は、法人の設立費用である6〜20万円です。株式会社を設立する場合は、主に以下の費用がかかります。
費用項目 | 費用 |
定款の認証手数料 | 3万円:資本金額100万円未満 4万円:資本金額100〜300万円未満 5万円:そのほか |
収入印紙代 | 4万円 ※電子定款は無料 |
登録免許税 | いずれか高いほうが適用 ・資本金額×0.7% ・15万円 |
謄本発行手数料 | 2,000円 |
合計 | 18万2千円〜 |
なお、個人事業主の開業では、手数料や登録料等がかからないため無料です。
起業後:事業によってバラバラ
起業後にかかる費用は、事業内容によって大きく異なります。たとえば、小売店の場合は商品の仕入れや販売する店舗などが必要ですが、自宅で起業するフリーランスのエンジニアは、パソコンやそのほか関連機器のみで事業を開始できます。
起業後の費用を計算する際は、費用項目を細かく設定し、具体的な金額を算出していくことが大切です。参考として、起業後に発生する一般的な費用項目を以下にまとめました。
項目 | 費用相場 |
事業所の賃貸費 | 20万円程度 |
在庫のストックコスト | 事業内容により数万円~数十万円 |
筆記具や複合機、固定電話等の事務用品 | 筆記具:数千円程度 |
複合機や固定電話等 | 購入費数十万円 |
リース料金 | 月額数万円 |
人件費 | 継続雇用:時給、月給の設定により変動 |
アウトソーシング | 発注案件毎に発生 |
広告関連費用 | 数万円~数十万円程度 |
ホームページ作成 | 外注20~30万円 |
事業内容によっても異なりますが、「事業所の賃貸費」はシェアオフィスやレンタルオフィス、バーチャルオフィスの利用によって大きく削減できます。通常、都心部でオフィス用の物件を借りる場合、30㎡で20万円程度の賃料がかかります。
しかし、シェアオフィスやレンタルオフィスなら、月額3〜10万円程度です。バーチャルオフィスであれば、月額5,000円程度で事業用の住所が手に入れられます。これらのサービスには、プリンターや会議室のプロジェクターなど、事業に必要な設備が整っているため、起業後のコストを大きく抑えられます。
上記のように、項目ごとに見ていくと費用を削減できるケースは多々あります。起業直後は売上が安定しづらく資金繰りが厳しくなる傾向があるため、削減できそうな費用はできるだけ抑えるよう工夫しましょう。
また、ホームページを自作できない場合には、Web奉行などのサービスを利用して最適な会社を探してみてください。
事業経験なしでも始めやすい!おすすめの起業アイデア
ここでは、事業経験がない方でも取り組みやすい起業のアイデアを紹介します。
起業のアイデア出しの方法をさらに詳しく知りたいとお考えの方は、以下の記事もご参考ください。
フランチャイズを利用する
1つ目のアイデアは、フランチャイズの加盟店として起業する方法です。
フランチャイズとは、本部から販売ノウハウや商標、経営支援を受ける代わりに、ロイヤリティを支払う仕組みのことです。主に、全国展開するコンビニやレストランで採用されています。
フランチャイズでの起業は、すでに成功している事業の知見・ノウハウを即座に手に入れられる点がメリットです。これまでに事業経験がない方でも、安心して取り組めるのではないでしょうか。
また、高いブランド力を活用できるため、基本的には認知・集客の壁に直面することなく事業を行えます。ただ、フランチャイズ本部との契約で、多くの制限が設けられる点には注意が必要です。
M&Aを活用する
2つ目のアイデアは、M&Aにて既存の事業を継承する方法です。M&Aとは、企業の買収・合併のことです。
M&Aでは、実績や業績が安定している会社・事業を買収できる可能性があります。ゼロから起業してビジネスを軌道に乗せるよりも、売上を作る難易度が低いため、事業経験がない方でも取り組みやすいでしょう。
なお近年は、後継者問題の解決方法として、M&Aによる事業譲渡が盛んに行われています。なかには、優れた経営資源を抱える好条件なものも多いため、自身が描くビジネスプランに近い企業を探してみてはいかがでしょうか。
起業の失敗リスクを避ける方法
ここでは、起業の失敗リスクを避けるための方法を解説します。
- 会社員の立場で副業として始める
- 経費をかけずにスモールスタートする
- 補助金や助成金を活用する
- 知見のある人に相談する
- トレンドや業界動向を確認する
起業に成功し大きな利益をあげることは困難ですが、失敗を回避することは容易です。ぜひ上記のポイントを取り入れ、可能な限りリスクを避けましょう。
「起業で失敗してしまう理由について知りたい」とお考えの方は、以下の記事も参考にしてみてください。
会社員の立場で副業として始める
現在、会社などの組織へ勤めている方は、副業として起業するのがおすすめです。なぜかというと、万が一起業に失敗しても、本業の収入で生活を維持できるためです。
事業が軌道に乗るまでは売上が安定せず、場合によっては赤字が続く恐れもあります。赤字によって用意していた資金がじわじわと減っていくのは、想像以上に精神的な負担となります。
そのため、まずは副業として起業して地盤を固めておくほうが安心です。事業が軌道に乗ったのちに独立すれば、スケールしやすくなります。勤め先の就業規則を確認しつつ、副業にチャレンジしていきましょう。
経費をかけずにスモールスタートする
起業となると、「あれも・これも」と大きく始めがちですが、失敗のリスクを回避するにはスモールスタートが大切です。ビジネスの規模が大きければ、事業が失敗した際の損失も比例して大きくなるためです。
一方、大きな事業資産を持たず、かつ月々のランニングコストを最小限に抑える努力をしていれば、仮に失敗したときでも手仕舞いと再起を素早く行えます。なお、起業後のランニングコストを抑える方法としておすすめなのが、バーチャルオフィスです。
バーチャルオフィスとは、実際の物件ではなく、事業用の住所のみを借りられるサービスです。弊社が提供する「バーチャルオフィス1」では、東京都渋谷区の住所を月額880円~で提供しています。
自宅での起業をお考えの方や事務所の賃料を抑えたい方は、ぜひご検討ください。
補助金や助成金を活用する
起業後の資金調達では、補助金や助成金を活用するのが効果的です。金融機関の融資とは異なり、基本的に返済が不要なためです。補助金・助成金の概要を以下にまとめました。
補助金 | 助成金 | |
管轄 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
制度の内容 | 起業支援や地域復興など | 労働環境・職場環境の整備など |
給付額 | 数十〜数千万円 | 数万〜数百万円 |
受給条件 | ・要件の遵守 ・厳格な審査を通過 | 要件の遵守 |
助成金は条件を満たせば支給されるため、事業実績が少ない起業直後でも受給しやすい傾向があります。一方、補助金を受給するには、審査を通過しなければならない点に注意が必要です。
また、応募件数が採択件数を超える場合は、事業計画の優位性や将来性などの観点からふるいにかけられます。そのため、申請書類を作成する際は、記載項目を埋めるのはもちろん、事業の優位性を示せるようアピールしましょう。
知見のある人に相談する
起業の失敗リスクを根本から回避するには、知見者に助言を仰ぐのが効果的です。たとえば、同業種の経営者であれば、起業後につまずきやすい点やその業種ならではのリスクなどを把握しています。
こうした知見者の助言を取り入れて対策を講じれば、失敗を回避できる可能性が高まります。なお、経営者とのつながりがない場合は、以下の相談窓口へ問い合わせるのがおすすめです。
- 商工会議所
- 中小企業支援センター
- 日本政策金融公庫
- コンサルティング会社
とくに商工会議所は、地元地域の企業支援を主目的とする団体のため、経営相談や専門家の派遣など支援体制が充実している傾向があります。また、加入者同士の横のつながりも構築しやすいため、人脈を築きたい方にも適しています。
トレンドや業界動向を確認する
市場のニーズやトレンドは日々絶え間なく変化しているため、トレンドや業界の動向を随時確認することが大切です。万が一、外部環境の移り変わりに対応できなければ、消費者や取引先から見放される恐れがあります。
そのため、市場競争を勝ち抜き、事業を存続させるためにも、業界の市場トレンドや動向を確認しましょう。
まとめ
本記事では、起業するにはどのようにすれば良いのか、具体的な手順や方法を解説しました。主な流れは、以下のとおりです。
- 目的を明確にする
- 事業内容を考える
- 事業形態を決める
- 事業計画を策定する
- 必要に応じて資金調達を行う
- 実際に事業を始める
起業と聞くとハードルが高いようにも感じますが、上記の工程を着実にこなせば誰でも事業を立ち上げられます。ただ、当然リスクも伴うため、入念な準備を心がけましょう。
自身が思い描くビジョンを実現させるためにも、1歩ずつ着実にステップを踏んでいってください。
参考
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館受取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
この記事の監修者
株式会社バーチャルオフィス1代表取締役 牧野 傑
株式会社バーチャルオフィス1 代表取締役
2022年2月に株式会社バーチャルオフィス1の代表取締役に就任。東京(渋谷)、広島にて個人事業主(フリーランス)、法人向けにビジネス用の住所を提供するバーチャルオフィスを運営している。自ら起業した経験も踏まえ、「月額880円+郵送費用」といったわかりやすさを追求したワンプランで、利用者目線に立ったバーチャルオフィスを目指している。
東商 社長ネット 株式会社バーチャルオフィス1 牧野 傑
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