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バーチャルオフィスの住所は住民票に使えますか?
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バーチャルオフィスの住所は住民票に登録できません。
バーチャルオフィスは、ビジネスで利用する住所をレンタルできるサービスです。住民票は、生活拠点がある住所を登録することが求められているため、バーチャルオフィスの住所では登録が認められません。
バーチャルオフィスの利用を検討する方のなかには、事業用だけでなく住民票の住所として使えるかどうかを知りたい方がいるかもしれません。しかし、バーチャルオフィスの住所を住民票に登録することは認められていません。
本記事では、バーチャルオフィスの住所が住民票に登録できない理由と背景についてわかりやすく解説します。
バーチャルオフィスの住所は住民票に登録できない

バーチャルオフィスの住所は、事業用として使用することはできても、生活の拠点とする住所に利用することはできません。したがって、住民票に登録することはできません。
バーチャルオフィスは事業用として使える住所
バーチャルオフィスとは、ビジネスで利用する住所をレンタルできるサービスです。具体的には、下記のような場面で活用できます。
- 法人登記する際の本店所在地
- 個人事業の開業届の住所
- ネットショップ開設時の所在地
リアルなオフィスを持たず、ビジネス用の住所のみを借りることで、事業者は賃貸費を削減したり、個人情報を守ったりできるメリットが得られます。
住民票の住所にバーチャルオフィスが使えない理由

バーチャルオフィスの目的は生活拠点の提供ではなく、事業拠点となる住所を提供することです。そもそも住民票では、生活拠点がある住所を登録することが求められており、バーチャルオフィスの住所では登録が認められません。
<生活拠点かどうかの判断基準>
生活拠点があるかどうかを判断するのは難しいですが、判断の目安として国税庁では「日本の居住者かどうかの判定(住所または居所の有無)」を示しています。
| 所得税法において、居住者とは、日本国内に「住所」があるかまたは現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいますから、日本の居住者に該当するかどうかは、国内に住所または居所があるかどうかという判定が必要となります。 「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかについては、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになっています。 また、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないものの、その人が現実に居住している場所」とされています。 |
引用元:No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)|国税庁
つまり、実際に寝泊まりをする、そこで食事をするなど暮らしている実態があるかが判断基準となります。少なくとも、バーチャルオフィスのサービスは「そこで暮らすこと」を予定しているものではありません。あくまで事業上の対外的なやり取りに使うことを目的にしているに過ぎないためです。
実際に住民基本台帳法の規定には、その旨が明示されていることに加え、どのバーチャルオフィスの利用規約にも、「バーチャルオフィスの利用は国内法に準拠する」といった内容が記載されていることが一般的です。
国内法で定義される住所とは、住民基本台帳法で定義されている住所と判断できます。つまり法律によって、バーチャルオフィスは住民票に利用できないということです。
バーチャルオフィス事業者は法律に倣って事業を運営している
住民票に利用する利用者の登録を避けるためにも、各バーチャルオフィスはさまざまな対策をしています。
たとえばバーチャルオフィス1では、個人で契約する利用者には「個人の住民票」、「本人確認書類」、「住所地が確認できる顔写真付きの身分証明書」、法人で契約する場合は「代表者個人の本人確認書類」、「住所地が確認できる顔写真付きの身分証明書の提出」が必須です。
生活上の拠点が別にあることを確認してから契約を結び、契約後も住所変更があった場合は速やかに変更するよう利用規約で定めています。
他のバーチャルオフィスサービスも、バーチャルオフィス1と同様の対策を行っています。このように、バーチャルオフィス事業は住民票登録を行うための住所提供サービスではないことが明らかだといえるでしょう。
【参考】レンタルオフィスであれば住民票を置く余地はある
バーチャルオフィスの住所を使って住民票を置くのはほぼ不可能ですが、レンタルオフィスであれば住民票を置く余地はあるかもしれません。
前述したように「生活拠点がある住所」であれば、住民票を登録できる可能性があります。そのため、レンタルオフィスであっても、以下の2点を満たせば住民票を置くことができるかもしれません。
- 生活している実態がある(ベッドやテーブル、キッチンがある)
- 賃貸借許可で住民票を置くことが許可されている
ただし、実際にレンタルオフィスの住所で住民票の登録ができるかは、各自治体の判断によって異なります。自治体によってはできない可能性があるので、希望する場合は事前に確認しましょう。
現住所以外に住民票をおく行為は違法の可能性がある

そもそも住民票の住所とは、生活の本拠地を明らかにするものです。実際には住んでいない住所で住民票の登録をする行為は、虚偽の住民登録をしたと見做され違法となる可能性が高くなります。
住民基本台帳法では、下記のように明示されています。
| <第三条の3>住民は、常に、住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず、虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。 <第五十二条>第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。 ※参考:e-GOV法令検索「住民基本台帳法」 |
つまり第三条の3では、住民は虚偽の届け出によって住民基本台帳の正確性を阻害する行為をしてはならないと明示されていることがわかりました。そして第五十二条では、虚偽の届け出をした場合は、5万円以下の罰金となる旨が記載されています。
引っ越しをした際にも、転入手続きや転居手続きは住所を移してから14日以内に行うルールがあり、正確な住所を届け出をすることは法律観点でも重要視されています。「面倒だから」という理由で正確な住所地の申請を怠る行為は控えましょう。
【参考】住民票の異動手続きを忘れると起きること
万が一、引っ越しなどの理由で住所が変わった場合、住民票の異動手続きを忘れると何が起きるのかを理解しておきましょう。考えられるトラブルとして、以下が挙げられます。
- 住民票の写しや印鑑証明など役所が発行する書類を入手できない
- 国民健康保険、介護保険の資格を失う
- 「居所未登録者」となるため国民年金保険料が未納となる
- 住民票が消除されるためいずれ選挙人名簿から抹消され、選挙権が行使できなくなる
万が一、住民票の異動手続きを忘れていた場合は、すぐに現在の住所地の市区町村役場に出向き、手続きをしてください。
【参考】多拠点生活や海外赴任・留学をする際の住民票の扱い
多拠点生活や海外赴任・留学をする際の住民票の扱いについても理解しておきましょう。
まず、いわゆるアドレスホッパーなど多拠点生活をしている人の場合、日本国内の特定の場所に住民票を置く必要があります。とはいえ、次の拠点に移るたびに住民票を移動させるのは手間がかかり、現実的ではありません。そのため、対処法としては以下の2つが考えられます。
- 実家に住民票を置く
- シェアハウスなどに住民票を置く
実家やシェアハウスにご自身の住む場所を確保していれば、虚偽の届け出に当たることなく、住民票の登録が可能です。
ただし、海外赴任・留学をする場合は、その赴任・留学の期間がどのぐらいに及ぶかによって扱いが異なります。日本の所得税法では、以下の条件を満たす人を「居住者」、満たさない人を「非居住者」として区分しています。
- 国内に「住所」を有する
- 現在まで引き続き1年以上「居所」を有する
海外赴任・留学で1年以上日本を離れることが明らかな場合は「非居住者」として扱われ、生活の拠点を海外に置くとみなされることから、国外転出届を提出しなくてはいけません。そして、国外転出届に記入された移動年月日(日本を出国する日)の時点で、住民票が住民基本台帳から削除されます(住民票の除票)。
つまり、海外赴任・留学の期間が1年以上に及ぶようであれば、日本国内に住民票を残すことはできません。一方、1年以内であれば、日本国内の実家や家族・親族の家の住所に住民票を残すことができる可能性があります。
しかし、実際に日本に住民票を残していけるかは、日本国内での生活実態などを勘案し、総合的に判断されます。税理士に相談するか、税務署で確認してから判断するようにしましょう。
『バーチャルオフィス1』は事業用の住所を貸し出すサービス
当社が運営している『バーチャルオフィス1』は、事業者用住所の貸し出しを行っているサービスです。開業・起業する際の所在地をどうしようか悩んでいる方に対し、月額880円+郵送費用(税込)で住所のレンタルを行っています。
しかし、どのような理由であっても、誰でも住所を使える状態になってしまうと、第三者の手によって当社の住所を利用して犯罪などに悪用されてしまうリスクが生まれます。
そうしたトラブルを排除し、利用者さまに安心してご利用いただくためにも、当社では利用規約で「住民票への登録はできない」ことを明記、かつ契約には「本人確認と審査」を設けて運営をしております。
法人登記に住所を使うことは可能
バーチャルオフィスで借りられる住所を住民票の住所として使うことはできませんが、法人登記上の本店所在地として利用することはできます。実際に利用できるかはサービスによって異なりますが、利用を許可しているバーチャルオフィス運営会社がほとんどです。
参考として、住民票上の「住所」と法人登記の「本店所在地」の比較表をまとめました。理解を深めるための参考にしてください。
| 住民票上の「住所」 | 法人登記の「本店所在地」 | |
| どのような法律に基づいているか | ・住民基本台帳法 ・地方自治法・民法 | ・商業登記法 ・会社法 |
| 法的要件 | 「生活の本拠」かつ物理的な居住実体がある | 特段定めはない(ただし、同一商号・同一本店の禁止に配慮が必要) |
| 基本的な性質 | 行政サービスを受けるための基礎になる(選挙権、公的保険など) | 会社の法的な中心地を示すものであり、納税地を決める際の根拠となる |
| バーチャルオフィスの住所を使えるか | 不可 | 可能 |
なお、バーチャルオフィスの選び方については以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
バーチャルオフィスは事業用に貸し出す住所であり、住民票に登録するための住所として利用することはできません。「長期的な出張や海外滞在が多い」「仕事が忙しくてほとんど自宅に帰らず、家賃がもったいない」などの理由がある場合は、実家やシェアオフィスでの住民票の登録を検討しましょう。
バーチャルオフィス1では、事業者用住所の貸し出しサービスを提供しています。法律に則り、利用規約では「住民票への登録はできない」ことを明記、かつ契約には「本人確認と審査」を設けて運営をしておりますので、事業用の住所をお探しの方はぜひご検討ください。
この記事の投稿者
バーチャルオフィス1編集部
東京都渋谷区道玄坂、千代田区神田神保町、広島市中区大手町にあるバーチャルオフィス1です。
月額880円で法人登記・週1回の郵便転送・郵便物の来館引取ができる起業家やフリーランスのためのバーチャルオフィスを提供しています。
翌年以降の基本料金が最大無料になる割引制度もございます。
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この記事の監修者
弁護士 北村 尚弘
2013年登録 東京弁護士会所属
東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。一般企業法務、人事労務、紛争処理(訴訟・保全・執行)、M&A・事業承継、宇宙ビジネスなど多角的な分野に取り組んでいる。
